跪くのはあなただけ

沈丁花

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ep11

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look.見ろ一葉さん、目を逸らしちゃだめだよ。」

目を逸らそうとすることすら、無慈悲なcommandにより封じられる。

冗談じゃない。Subとして心を預けることすらもう絶対にしたくないと心から願っていたのに、

「ふざけ「Shush.黙れ

口を塞がれてはもう、あちらが一方的に言わない限りセーフワードの確認さえできない。

「僕、いつもは女の子じゃないと萌えないんだけどー、

一葉さんくらい美人だったらいけるかもなーって思ってたんだー。」

にこにこしながら語る口振りに悪びれる様子は全くなく、明らかに彼の考えが普通ではないことが見て取れる。

しかしこの状況では誰かに助けを求めることなどできなかった。

「何その目ー?言いたいことがあるの?じゃあいいよ。Say.言え

「…こんなのは強姦と一緒だ、蘭。目を覚ませっ…!!」

言っても無駄だったのか、一葉の言葉が蘭の心に響いた様子はない。それどころか。

「それだけ?」

せめてセーフワードを…と再び口を開こうと思った時、ばちんという大きな音とともに一葉の頬に衝撃が走った。

口内に血の味が広がる。


「あーあ、血、出ちゃったね。でも、手加減したんだよ?

…反抗するそぶりを見せたら、もっと痛いからね?当分動けなくしちゃうかも。」

あどけない表情で、恐ろしいことを言う。おそらくもう彼には何を言っても効かない。

彼のことを人として嫌っているわけではないし、ダイナミクスのせいで招いたこの結果をのちに責めるつもりもない。

でも。

殴られたっていい。痛くたっていい。

誰かに心を預けるくらいなら、いっそ痛みに気を失う方がマシだ。

「…っふざけるなっ!…通報されたいのか?」

殴られると思った。今度は本気で。

彼が本気を出せば気絶する可能性さえあるだろうと期待した。むしろ、気絶して仕舞えばいい。意識がない間に行われた行為なら、なかったのも同じだと思えるから。

しかし一向に手も足も飛んで来ず、代わりに目の前の唇がにっこりと弧を描いて。

「一葉さんって面白いね。気絶なんてさせてあげないよ?」

残酷な言葉に、背筋が凍る。

彼の口角がゆっくりと上がり、

Strip脱げ. 」

楽しげな声が、狭い車内に響き渡った。

…どうして。

こんな面倒な性に産まれなければ、ちゃんとDomとして産まれてくれば、あるいはnomalであったならば、世界は自分にもっと優しかったはずなのに。

…いっそもうSubでもよかった。そうはっきりしているならば、もっと違う生き方があったかもしれない。

自らの手が、意思に反して勝手に服を寛げていく。意思がSubとしての本能に逆らえないなんて、馬鹿げた話だ。

意のままに動かない身体を呪いながら、せめて心を預けることはしないと、一葉はその意志を貫くために過去の記憶を思い起こした。
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