跪くのはあなただけ

沈丁花

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ep10

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蘭は愛染家の警護人の中で一番の若手である。

華奢な身体とくりくりの目の可愛い顔に反し馬鹿力で、主人の前での控えめな態度に反し実際にはちょっと考えられないくらい頭が弱い。

「かずはさーん、だいじょーぶですかー?おーい、聞こえますー?車まで担ぎますよそれまで吐かないでくださいねー?」

ほら、こんな風に耳元で大声で騒ぐところとか。

傘をさしながらひょいっと軽々一葉の身体を担ぎ上げて、蘭は後部座席に一葉を乗せた。

「はい、これどーぞ。」

蘭に差し出されたエチケット袋を広げ、迷うことなく嘔吐する。

紅司もすぐに戻ってくることはないからと、この時一葉は完全に油断をしていた。

…身体が熱い。雨に濡れて熱を出したのか、それとも抑制剤で抑えられるのをいいことに全くプレイを行なっていなかったせいか。

まあ、自分なんてどうでもいい。

彼の仕事を助けられたのなら、それでいい。

紅司と過ごし始めて1ヶ月、一葉の中で、紅司に対する考えは少し変わった。

もちろんSubとして心を預けたりはしたくない。でも…。

人として、尊敬する。

社会で成功してしてほしい。

幸せになってほしい。

…支えたい。

だって彼の努力も人柄も、嫌という程目の当たりにしてきた。

だから、彼の足枷にならなければ、自分はそれでいいのだと。

「あれ、一葉さん、もしかしてSub?」

吐き気が少し治ってきた頃、ふと、一葉の身体を介抱していた蘭がいきなり声音を変えた。驚いて彼の目を見て、一葉はぴたりと固まる。

…蘭の目からは、強烈なglareが放たれていて。

本来の一葉のDom性の強さがあれば、蘭のglareに屈することなどない。

しかし、今の一葉は極度の欲求不満プレイ不足に陥っている。抑制剤も吐き出してしまっては意味がない。

「やっぱり正解?僕最近忙しくてできなくてー、

ちょうどいいや、今回だけ相手してよ、一葉さん。」

闇に吸い込むような大きな漆黒の瞳を見て、彼の瞳はこんなに黒かっただろうかと疑問に思った。

「やめr「stay動かないで. 」

狭い車内、逃げようと思っても、commandで止められれば体は自由を奪われた。
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