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ep1
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パンッ、と皮膚を打つ音が響き渡る。ここはパートナーのいないDomとSubが、互いを慰め合うクラブだ。
王のように堂々とソファに君臨した:一葉(かずは)の足元には、全裸の青年が1人、四つん這いになり尻を向けていた。
「立派なモノのついた男が、だらしなく尻を向けて叩かれて善がるなんて、聞いて呆れるよ。ねえ、どんな気分なの?ほら、7回目。」
「ぁっ…、ぁんっ…///」
一葉の持つバラ鞭が男の皮膚を掠めるたび、青年は甘やかな嬌声を漏らす。
苦痛を伴わない程よい痛みと、被虐心を満たす冷たい言葉。一葉はそのバランスが絶妙で、一瞬でSubを虜にする。
彼はその美しい容姿に反して、いつのまにか「夜の帝王」と呼ばれていた。
やがて約束通り10回の鞭打ちを終わると、優しく赤くなった部分を撫でていく。腫れた部分への柔らかな刺激に、再び青年は嬌声を漏らした。
「よくやったね、次ができたら褒美をあげよう。
:present(見せろ)。」
:crawl(四つん這い)の状態からの:present(見せろ)は、後孔を露わにしろ、という意味である。
すなわち、打ち付けられて赤くなった尻肉を、自ら掴み、割り開かなくてはならない。
敢えて自分を痛めつける、という行為には多少なりとも恐怖を覚えるもの。
それに普段自分でも見ることのない不浄の孔を晒せと言うのだから、恐怖に羞恥の混じった、究極の仕置になるのである。
しかし、心を預けたSubが、Domの:コマンド(命令)に逆らうことなどは滅多になく、
そもそも一般的にみて、この行為はセーフワードを言うほどのものでもない。
青年の自らの尻たぶに伸ばされた両手が、ためらいがちにその部分へ触れた。
「うぅっ……、ぁっ… 」
がばりとその肉を左右に割開いた瞬間、声とともに青年が生理的な涙をこぼす。
華奢な身体はかたかたと震え、小さな性器もまた、硬度を保ったまま秘孔の下で震えていて。
「もういいよ、:Good boy(いい子だね).」
青年はもういい、と言われた途端にくたりと床に倒れ込んだ。小さな体躯を抱きしめて、一葉は彼の性器に触れる。
「ほら、ご褒美をあげる。気持ちよくなろうね?」
一葉は優しい声をかけながら、嬉しそうにふにゃりと微笑んだ彼の頭を撫でていく。もちろん、もう片方の手では彼の弱い部分を的確に攻めている。
「ぁっ…//ぁぁんっ…///もっ…、イくっ…!!」
次第に青年の身体に力が入り、はち切れんばかりの雄の先端がとろりと蜜を零していく。
「イっていいよ。」
一葉を見ながらじっと許しを待つように耐えている彼に、一葉は優しくそう声かけた。
「あぁーーーっ///!!」
びくん、と身体をふるわせて、青年のそれが白濁をまき散らす。
再び彼の身体から力が抜けて。
「上手にイケたね。」
腕の中に抱きながらよしよしと撫でてやると、青年はニャアとでもいうような甘ったるい声を漏らした。
くりくりの目が一葉の顔をうっとりと見つめる。
「あーあ、罪な子ねぇもう。一葉ちゃん、そろそろ遅いし帰ったら?」
とんとん、と一葉の肩を叩きながらため息をついたのは店のママである。
「俺はまだイケますけどー?」
一葉がにやりと振り返ると、肩までの金髪がさらりと揺れた。ハーフ特有の美しく中性的な顔立ちに、SubだけでなくDomも、周り全員が釘付けになる。
「だめだめ一葉ちゃんがいるとSubのお客様みーんな一葉ちゃんに持ってかれちゃうんだから。」
ママが心底呆れたようにため息をついたところで、一葉はやれやれと立ち上がった。名残惜しそうに先ほど調教を施した青年がじっと一葉を覗く。
「楽しかったよ、またね。」
彼に別れを告げると、一葉はハンガーにかかったコートを羽織った。次は僕ね、と駆け寄ってくるかわいいSubたちにはウインクを。
会計を済ませると、爽やかに立ち去った。
「なあー、一葉ちゃんー、一回でいいから俺に調教させてくれないー?いくらでも積むからかぁー。Switchなんでしょ?」
店の前で、3人ほどのDom性の男たちが一葉を囲んで来た。そのうちの1人が一葉の手に触れる。
「気安く名前で呼ばないでくれる?それに冗談じゃない。俺は誰にも跪かない。」
一葉は冷たい言葉とともに、パシッと男の手を振り払った。
「そんなこと言ってー、仕事ではいつもぺこぺこ頭下げてるんでしょー?」
揶揄するように言われても別に口答えする必要はない。労力の無駄だ。一葉は黙って立ち去ろうとする。
ちなみに仕事でなくても必要なとき、必要なタイミングであれば一葉は頭を下げるが、それは頭を下げて自分に利益があると踏んだときだ。決して忠誠心からなどではない。
「…たくっ、釣れないなぁ!」
苛立った男が唐突に:glare(殺気)を放った。他2人も同様に一葉にglareを向けてくる。
本来glareを放ってSubを強制的に虐げることはルールに反しているが、苛立った彼らにそれを言っても無駄だろう。
「バカなの?その程度のglare通用しない。」
ため息をついて一葉は3人の男に対しglareを放った。殺気立っていた彼らはすぐにピタリと動けなくなり、わずかに肩を震わせ始めて。
「このくらいで動けなくなるようじゃ俺を調教するなんて無理だよ。じゃあね。」
今度こそ、一葉はその場を颯爽と立ち去る。男たちが追いかけてくることはなかった。
一葉が信用できるのは、自分に心を預けた調教中のSubだけだ。
だから自分は誰にも本当に心を許すことはないし、SwitchだからといってSubとして誰かに心を預けることなどしない。
そもそも一葉のDom性は相当強い。
Dom性にはレベルがあり、そのレベルで階級のようなものが決まる。glareで睨み合いになればDom性の強いものが勝つ、というのも常識だ。
だから今回のようなことはよくあるが、一葉が誰かに屈したことはない。
「てか執事はぺこぺこ頭を下げる仕事じゃないし!」
帰り道は人気が少ない。先はどの出来事で苛立った一葉は、足元の石ころを思いっきり蹴った。
カン、とアスファルトに石が打ち付けられる音がすると思ったのだが、数秒待っても期待通りの音は一向に耳に入らない。
代わりに向こう側でぱしっと乾いた音がした。
音の方を見れば、スーツを見にまとった美しい男のシルエットがあって…
「こんなところでサッカーの練習か?」
低い声とともに、暗がりでもわかる端正な顔立ちの男が微笑を浮かべていた。
「申し訳ありません、お怪我はございませんか?」
一葉は彼にすぐさま駆け寄り、形だけの気遣いを述べた。何年も名家に仕えてきただけあって、身につけた処世術は自分を守る盾になっていると思う。
「ああ、この通りなんともない。」
広げられた男の手から、ごとりと質量を持った石ころが落ちた。大きな手にはかすり傷ひとつ付いていない。
よかったです、では私はこれで…
と、礼儀正しく頭を下げ、一葉は立ち去るつもりだった。
しかし。
その切れ長の瞳を見た瞬間、一葉はなにか今まで感じたことのない感覚に見舞われた。
そしてそれが何かを理解する前に、反射的に帰る場所とは逆方向へと駆け出していて。
嘘だ。そんな、馬鹿な。
認めてしまったら負けだ。今まで自分の中で積み上げてきたものが、崩れてしまう。
彼に認められたい、尽くしたい、褒められたい、調教されたい、そして
…支配されたい…
別に彼がglareを放っていたわけでもないのに、今まで内で身を潜めていた一葉のSub性が、洪水のように湧き出て止まらなくて。
怖い、と思った。
誰かを信用し屈することなど、したところできっと、裏切られるだけなのだから…。
一方その頃。
目が合うなり逃げ出した失礼極まりない一葉の背中を、1人の男が微笑ましげに見つめていた。
「紅司様、彼を連れ戻して参りましょうか?」
後ろで影を潜めていた部下が、ぬっと出てきて紅司に問う。
しかし紅司は静かに首を横に振った。
「いや、いい。どうせすぐ会うことになる。それに… 」
なんでしょうかと紅司の顔を覗き込んだ部下は、ひっ、と声を漏らし、怯えきった。
「彼に触れていいのは、俺だけだ。」
部下の反応を見た紅司は、自分が無意識にglareを放っていたことに気づく。
やはりだめだ。彼のことを考えるとやはり、第2性が暴走してしまう。
…彼を守りたい。彼からの信頼が欲しい。
その一心で紅司は、血反吐を吐くような努力とともに、やっと一歩を踏み出したのだから。
王のように堂々とソファに君臨した:一葉(かずは)の足元には、全裸の青年が1人、四つん這いになり尻を向けていた。
「立派なモノのついた男が、だらしなく尻を向けて叩かれて善がるなんて、聞いて呆れるよ。ねえ、どんな気分なの?ほら、7回目。」
「ぁっ…、ぁんっ…///」
一葉の持つバラ鞭が男の皮膚を掠めるたび、青年は甘やかな嬌声を漏らす。
苦痛を伴わない程よい痛みと、被虐心を満たす冷たい言葉。一葉はそのバランスが絶妙で、一瞬でSubを虜にする。
彼はその美しい容姿に反して、いつのまにか「夜の帝王」と呼ばれていた。
やがて約束通り10回の鞭打ちを終わると、優しく赤くなった部分を撫でていく。腫れた部分への柔らかな刺激に、再び青年は嬌声を漏らした。
「よくやったね、次ができたら褒美をあげよう。
:present(見せろ)。」
:crawl(四つん這い)の状態からの:present(見せろ)は、後孔を露わにしろ、という意味である。
すなわち、打ち付けられて赤くなった尻肉を、自ら掴み、割り開かなくてはならない。
敢えて自分を痛めつける、という行為には多少なりとも恐怖を覚えるもの。
それに普段自分でも見ることのない不浄の孔を晒せと言うのだから、恐怖に羞恥の混じった、究極の仕置になるのである。
しかし、心を預けたSubが、Domの:コマンド(命令)に逆らうことなどは滅多になく、
そもそも一般的にみて、この行為はセーフワードを言うほどのものでもない。
青年の自らの尻たぶに伸ばされた両手が、ためらいがちにその部分へ触れた。
「うぅっ……、ぁっ… 」
がばりとその肉を左右に割開いた瞬間、声とともに青年が生理的な涙をこぼす。
華奢な身体はかたかたと震え、小さな性器もまた、硬度を保ったまま秘孔の下で震えていて。
「もういいよ、:Good boy(いい子だね).」
青年はもういい、と言われた途端にくたりと床に倒れ込んだ。小さな体躯を抱きしめて、一葉は彼の性器に触れる。
「ほら、ご褒美をあげる。気持ちよくなろうね?」
一葉は優しい声をかけながら、嬉しそうにふにゃりと微笑んだ彼の頭を撫でていく。もちろん、もう片方の手では彼の弱い部分を的確に攻めている。
「ぁっ…//ぁぁんっ…///もっ…、イくっ…!!」
次第に青年の身体に力が入り、はち切れんばかりの雄の先端がとろりと蜜を零していく。
「イっていいよ。」
一葉を見ながらじっと許しを待つように耐えている彼に、一葉は優しくそう声かけた。
「あぁーーーっ///!!」
びくん、と身体をふるわせて、青年のそれが白濁をまき散らす。
再び彼の身体から力が抜けて。
「上手にイケたね。」
腕の中に抱きながらよしよしと撫でてやると、青年はニャアとでもいうような甘ったるい声を漏らした。
くりくりの目が一葉の顔をうっとりと見つめる。
「あーあ、罪な子ねぇもう。一葉ちゃん、そろそろ遅いし帰ったら?」
とんとん、と一葉の肩を叩きながらため息をついたのは店のママである。
「俺はまだイケますけどー?」
一葉がにやりと振り返ると、肩までの金髪がさらりと揺れた。ハーフ特有の美しく中性的な顔立ちに、SubだけでなくDomも、周り全員が釘付けになる。
「だめだめ一葉ちゃんがいるとSubのお客様みーんな一葉ちゃんに持ってかれちゃうんだから。」
ママが心底呆れたようにため息をついたところで、一葉はやれやれと立ち上がった。名残惜しそうに先ほど調教を施した青年がじっと一葉を覗く。
「楽しかったよ、またね。」
彼に別れを告げると、一葉はハンガーにかかったコートを羽織った。次は僕ね、と駆け寄ってくるかわいいSubたちにはウインクを。
会計を済ませると、爽やかに立ち去った。
「なあー、一葉ちゃんー、一回でいいから俺に調教させてくれないー?いくらでも積むからかぁー。Switchなんでしょ?」
店の前で、3人ほどのDom性の男たちが一葉を囲んで来た。そのうちの1人が一葉の手に触れる。
「気安く名前で呼ばないでくれる?それに冗談じゃない。俺は誰にも跪かない。」
一葉は冷たい言葉とともに、パシッと男の手を振り払った。
「そんなこと言ってー、仕事ではいつもぺこぺこ頭下げてるんでしょー?」
揶揄するように言われても別に口答えする必要はない。労力の無駄だ。一葉は黙って立ち去ろうとする。
ちなみに仕事でなくても必要なとき、必要なタイミングであれば一葉は頭を下げるが、それは頭を下げて自分に利益があると踏んだときだ。決して忠誠心からなどではない。
「…たくっ、釣れないなぁ!」
苛立った男が唐突に:glare(殺気)を放った。他2人も同様に一葉にglareを向けてくる。
本来glareを放ってSubを強制的に虐げることはルールに反しているが、苛立った彼らにそれを言っても無駄だろう。
「バカなの?その程度のglare通用しない。」
ため息をついて一葉は3人の男に対しglareを放った。殺気立っていた彼らはすぐにピタリと動けなくなり、わずかに肩を震わせ始めて。
「このくらいで動けなくなるようじゃ俺を調教するなんて無理だよ。じゃあね。」
今度こそ、一葉はその場を颯爽と立ち去る。男たちが追いかけてくることはなかった。
一葉が信用できるのは、自分に心を預けた調教中のSubだけだ。
だから自分は誰にも本当に心を許すことはないし、SwitchだからといってSubとして誰かに心を預けることなどしない。
そもそも一葉のDom性は相当強い。
Dom性にはレベルがあり、そのレベルで階級のようなものが決まる。glareで睨み合いになればDom性の強いものが勝つ、というのも常識だ。
だから今回のようなことはよくあるが、一葉が誰かに屈したことはない。
「てか執事はぺこぺこ頭を下げる仕事じゃないし!」
帰り道は人気が少ない。先はどの出来事で苛立った一葉は、足元の石ころを思いっきり蹴った。
カン、とアスファルトに石が打ち付けられる音がすると思ったのだが、数秒待っても期待通りの音は一向に耳に入らない。
代わりに向こう側でぱしっと乾いた音がした。
音の方を見れば、スーツを見にまとった美しい男のシルエットがあって…
「こんなところでサッカーの練習か?」
低い声とともに、暗がりでもわかる端正な顔立ちの男が微笑を浮かべていた。
「申し訳ありません、お怪我はございませんか?」
一葉は彼にすぐさま駆け寄り、形だけの気遣いを述べた。何年も名家に仕えてきただけあって、身につけた処世術は自分を守る盾になっていると思う。
「ああ、この通りなんともない。」
広げられた男の手から、ごとりと質量を持った石ころが落ちた。大きな手にはかすり傷ひとつ付いていない。
よかったです、では私はこれで…
と、礼儀正しく頭を下げ、一葉は立ち去るつもりだった。
しかし。
その切れ長の瞳を見た瞬間、一葉はなにか今まで感じたことのない感覚に見舞われた。
そしてそれが何かを理解する前に、反射的に帰る場所とは逆方向へと駆け出していて。
嘘だ。そんな、馬鹿な。
認めてしまったら負けだ。今まで自分の中で積み上げてきたものが、崩れてしまう。
彼に認められたい、尽くしたい、褒められたい、調教されたい、そして
…支配されたい…
別に彼がglareを放っていたわけでもないのに、今まで内で身を潜めていた一葉のSub性が、洪水のように湧き出て止まらなくて。
怖い、と思った。
誰かを信用し屈することなど、したところできっと、裏切られるだけなのだから…。
一方その頃。
目が合うなり逃げ出した失礼極まりない一葉の背中を、1人の男が微笑ましげに見つめていた。
「紅司様、彼を連れ戻して参りましょうか?」
後ろで影を潜めていた部下が、ぬっと出てきて紅司に問う。
しかし紅司は静かに首を横に振った。
「いや、いい。どうせすぐ会うことになる。それに… 」
なんでしょうかと紅司の顔を覗き込んだ部下は、ひっ、と声を漏らし、怯えきった。
「彼に触れていいのは、俺だけだ。」
部下の反応を見た紅司は、自分が無意識にglareを放っていたことに気づく。
やはりだめだ。彼のことを考えるとやはり、第2性が暴走してしまう。
…彼を守りたい。彼からの信頼が欲しい。
その一心で紅司は、血反吐を吐くような努力とともに、やっと一歩を踏み出したのだから。
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