朝日に捧ぐセレナーデ 〜天使なSubの育て方〜

沈丁花

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第二部

※お互いが願うこと※①(東弥side)

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「東弥さん、おかえりなさい!」

靴を脱いで家の中に入ると、ふわふわの部屋着を纏った静留が花のような笑みを浮かべながら嬉しそうに抱きついてきた。

しなやかな黒髪から香る自分と同じシャンプーの香りに胸が締め付けられるほどの愛しさを覚える。

「ただいま。」

東弥はそのまま彼の身体を持ち上げると、桜色の唇にキスを落としながらソファーに向かい、座ると彼を向かい合わせに膝の上に乗せた。

オニキスの瞳が驚いたように大きく見開かれる。

しかししばらくすると彼は頬を赤らめながら俯き、躊躇いがちに唇を開いた。

「…きょうは、…きんようび、だから…。」

途切れ途切れに紡がれた高い声はわずかに震えている。

彼の小さな頭を撫でながら、東弥はぎゅっと目を細めた。

「うん。覚えているよ。身体は大丈夫?」

尋ねると、静留は顔を真っ赤にして頷く。

膝の上で恥じらう姿が可愛らしい。

静留の中に初めて指を挿れた次の日の夜、これ以上静留にあれこれ考えさせることはいけないと思った東弥は静留ととある約束をした。

次にするのは金曜日の夜にしようと。そして、1月に迎える静留の20の誕生日に初めて身体をつなげようと。

だから今日、東弥はまた少し静留の身体を開く。

「そういえば、今日はピアノは?」

ふと疑問に思い尋ねれば、静留が“ぅー”、とうめきを漏らしながら訴えるようにじっと東弥の瞳を仰いだ。

「…あの、ね、…ゆうがたまでは、できてたの…。でも、…よるのことをかんがえたら、どきどき、して…それでっ…んっ…。」

懸命に紡ぐ姿を見て食事も風呂も考えずに押し倒してしまいそうになり、とっさに彼の唇を塞ぐ。

瞳を潤ませ真剣に訴える表情がこんなにも可愛らしく官能的なものだなんて知らなかった。

「…ごめん、静留が可愛すぎてつい…。先にお風呂に入ろうね。」

「!?…う、うん…。」

全く、本当に可愛らしくて困ってしまう。

そのあと静留をお姫様抱っこで浴室まで連れて行き、リボンを結び、東弥もシャワーを済ませてから今度は食事をして。

その間ずっと、静留は行為を意識してしまっているのかどこか落ち着かないように見えた。

「静留、そろそろ俺の部屋に行こうか。」

ソファーの上、そうささやいただけで彼の耳が真っ赤に染まり、愛しさに自然と口元が綻ぶ。

「う、うん。」

彼の目の前に手を差し出せば、しっとりとした白い手の平が、東弥の手を取り柔らかに握った。







ベッドの上に静留の身体をそっと横たえるとたおやかな黒髪がシーツの波に広がる。

その中でじっと東弥を覗く彼は、入浴を済ませたせいもあってひどく色っぽい。

さらに今は部屋着ではなく東弥のシャツとカーディガンを纏っているため、ぶかぶかの裾からは白い腿が、広く開いた襟元からは桃色の突起が覗いている。

「静留、すごくかわいい。俺とするってわかっていたからこんな格好をしているの?」

耳元でささやいてから額に口付けを落とせば、静留は頬を紅潮させてピタリと固まった。

もちろん彼が東弥の服を着た理由など部屋着が洗濯中だからに決まっている。それ以外にあり得ない。

「…あの、ね…、…東弥さんの、においだから、…おきにいりなの…。」

しかし次の瞬間不意打ちでそんなことを言われ、東弥は言葉を失った。

見た目だけで十二分に魅力的なのに無意識にここまで男を煽るなんて、いささか無防備が過ぎるのではないかと思う。

「脱がせるよ。」

頭を撫でながら下着を取り去り、次いでカーディガンとシャツの前を開く。

露わにされたなにも纏わない華奢な身体は滑らかで美しく、東弥はたまらずその白い腹部に唇を押し当てた。

「ぁっ…。」

色を帯びたあえかな声とともにぴくりと静留の身体が跳ねる。

同時に、彼の中心が緩く芯を帯びて行くのがわかった。

慌てて局部を隠そうとした彼の両手を覆いかぶさるようにしてシーツに縫い止め、大きな瞳に向け優しいglareを放つ。

「大丈夫、綺麗だよ。隠さないで。」

言い聞かせながらしばらくそうしていると、やがて彼の身体からくたりと力が抜けた。

表情に怯えがないことも確認し、東弥はほっと小さく息をつく。

claimの時にはglareなしでできなくてはいけないが、今はまだこれでいい。glareも使いながらゆっくり、慣れて行くことができれば。

「いい子。」

頭を撫でれば彼は驚くほど無邪気に笑う。

いつだってそうだ。

どんな時も東弥にされる行為を素直に喜ぶその姿は愛しくて、今にも自分の熱を受け入れてほしいという衝動に駆られる。

しかしそれと同時にどうしようもない庇護欲にも駆られてしまうから、結局それを行動に移すことはない。

一段照明を落とし、彼の足を大きく開く。

「ゆっくり触るから、痛かったら必ず言ってね。もっと優しくするから。」

温めたローションを指に纏わせてから不安げな彼の手をもう片方の手で握ると、彼は東弥の手を両手で包み込み、祈るようにぎゅっと握った。
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