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ss2「サンタさんの正体は」
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「テオ、話があるんだけど。」
「私もいいかな?」
呼び止められその方を向くと、例の隣の会社の副社長(名前をウィリアム・レイノルズという)とロナルドがにこやかにこちらを見ている。何が会ったのだろう。
「僕の時間は大丈夫ですが… 」
「じゃあディナーに行こう。俺のおごりだ。」
「いやそこは年長の私に払わせてくれないかな?」
妙な寒気を覚えながら、予定もないのにこの二人の誘いを断れるはずもなく、やれやれと二人に手を引かれるままに、身をまかせることにした。
ロウソクの灯りに照らされたぼんやりと明るい店内は、明らかに自分には場違いな大人の雰囲気が漂っていて、テオは物憂げにあたりを見回す。
ほとんど人と会話をしないテオでも名前くらいは耳にしたことのある、有名なレストランだ。
同僚の女性たちが大きな声でなかなか予約が取れないと話していたから、きっととても美味しいのだろうと思っていた。
さっき突然決まったことなのに、どのようにして取り付けたのだろう…
いや、もともと会う約束をしていて一人いきなりキャンセルした人がいたのだろう。それでついでにと。
「テオ、緊張してる?」
隣に座ったロナルドがくすくすと笑う。お酒を断ると、雰囲気だけでもとウェイターに子供用のジュースを頼んでくれる。
向かいにいるウィリアムも彼も、この店の雰囲気によくなじんでいる風に見えた。風格から違いがありすぎる。
「…そりゃ、いきなりこんな場違いなところに連れてこられたら… 」
なんとなく恥ずかしさに目をそらす。どんなに美味しい料理が待っていたとしても、自分がこの環境にいるという事実から逃げたい気持ちは変わらない。
「全く場違いじゃないだろう。私もロナルドもテオのデザインしたものを着て過ごしているのだから。」
ウィリアムさんのフォローはたしかに納得できるものだが、テオの感じている疎外感は服装に対してではなく全てにおいてであった。
「…いえ、その、風格的なもので… 」
「こんな俺でも風格ある?ウィリアムさんはどう思う?」
「お前に風格があるとしたら、テオはもっとずっとこの場にふさわしいよ。」
「ほら、気にすることないって。」
どんなにフォローされても無理だ…と思ったテオは、彼らが全力でフォローしてくれるのを横目に無言で運ばれてくるコースを食べ続けた。
せっかくの料理なのに、全く味がしないのが残念だと思いながら。
味のしない料理を食べ、お腹はいつもの倍膨れている。そんな中運ばれてきたデザートに、テオはまだあるのかとうなだれていた。
ロナルドとウィリアムはワインを片手にゆったりとしていて、まだ余裕を見せている。
2人の会話内容を除けば、和やかな雰囲気だ。しかし、気怠げにフォークを手に取った瞬間、2人が声を揃えて発した言葉に、テオは耳を疑った。
「今なんて言いました…?」
自分の中の最大の地雷を踏まれたような、そんな心地だった。絶対に迷惑をかけないと決意したその人に、まさに今迷惑がかかろうとしている。
話はメインディッシュが運ばれてきたところまでさかのぼる…
「なぜ私の誘いを断るんだい?テオ。ただかわいくて才能に溢れた君と静かなクリスマスを過ごしたいだけなのに。今日よりもっと最高のディナーを用意するよ。」
「いやウィリアムさん、選ぶなら流石に若い俺でしょう?それよりなんで俺をクリスマスに独占する権利を跳ね除ける?これまで男女問わずただの1人にも断られたことはないのに。」
お酒が入っているからか、他2人はだいぶ饒舌だ。ただ、彼らがそういう度テオは、大切な人と過ごす日だからと丁寧に、断りを入れる。
アシュリーは毎年忙しい中クリスマスは絶対にテオと一緒に過ごしてくれる。テオにとってそれは、とてつもなく楽しみな、甘い時間だった。
そしてもう入らないと思いながら、残してはいけないとデザートを食べるためにフォークに手を伸ばす。
「「せめてその人に会うまで納得できない!!」」
刹那、2人が声を揃えてそう言い放ったのだ。
「私もいいかな?」
呼び止められその方を向くと、例の隣の会社の副社長(名前をウィリアム・レイノルズという)とロナルドがにこやかにこちらを見ている。何が会ったのだろう。
「僕の時間は大丈夫ですが… 」
「じゃあディナーに行こう。俺のおごりだ。」
「いやそこは年長の私に払わせてくれないかな?」
妙な寒気を覚えながら、予定もないのにこの二人の誘いを断れるはずもなく、やれやれと二人に手を引かれるままに、身をまかせることにした。
ロウソクの灯りに照らされたぼんやりと明るい店内は、明らかに自分には場違いな大人の雰囲気が漂っていて、テオは物憂げにあたりを見回す。
ほとんど人と会話をしないテオでも名前くらいは耳にしたことのある、有名なレストランだ。
同僚の女性たちが大きな声でなかなか予約が取れないと話していたから、きっととても美味しいのだろうと思っていた。
さっき突然決まったことなのに、どのようにして取り付けたのだろう…
いや、もともと会う約束をしていて一人いきなりキャンセルした人がいたのだろう。それでついでにと。
「テオ、緊張してる?」
隣に座ったロナルドがくすくすと笑う。お酒を断ると、雰囲気だけでもとウェイターに子供用のジュースを頼んでくれる。
向かいにいるウィリアムも彼も、この店の雰囲気によくなじんでいる風に見えた。風格から違いがありすぎる。
「…そりゃ、いきなりこんな場違いなところに連れてこられたら… 」
なんとなく恥ずかしさに目をそらす。どんなに美味しい料理が待っていたとしても、自分がこの環境にいるという事実から逃げたい気持ちは変わらない。
「全く場違いじゃないだろう。私もロナルドもテオのデザインしたものを着て過ごしているのだから。」
ウィリアムさんのフォローはたしかに納得できるものだが、テオの感じている疎外感は服装に対してではなく全てにおいてであった。
「…いえ、その、風格的なもので… 」
「こんな俺でも風格ある?ウィリアムさんはどう思う?」
「お前に風格があるとしたら、テオはもっとずっとこの場にふさわしいよ。」
「ほら、気にすることないって。」
どんなにフォローされても無理だ…と思ったテオは、彼らが全力でフォローしてくれるのを横目に無言で運ばれてくるコースを食べ続けた。
せっかくの料理なのに、全く味がしないのが残念だと思いながら。
味のしない料理を食べ、お腹はいつもの倍膨れている。そんな中運ばれてきたデザートに、テオはまだあるのかとうなだれていた。
ロナルドとウィリアムはワインを片手にゆったりとしていて、まだ余裕を見せている。
2人の会話内容を除けば、和やかな雰囲気だ。しかし、気怠げにフォークを手に取った瞬間、2人が声を揃えて発した言葉に、テオは耳を疑った。
「今なんて言いました…?」
自分の中の最大の地雷を踏まれたような、そんな心地だった。絶対に迷惑をかけないと決意したその人に、まさに今迷惑がかかろうとしている。
話はメインディッシュが運ばれてきたところまでさかのぼる…
「なぜ私の誘いを断るんだい?テオ。ただかわいくて才能に溢れた君と静かなクリスマスを過ごしたいだけなのに。今日よりもっと最高のディナーを用意するよ。」
「いやウィリアムさん、選ぶなら流石に若い俺でしょう?それよりなんで俺をクリスマスに独占する権利を跳ね除ける?これまで男女問わずただの1人にも断られたことはないのに。」
お酒が入っているからか、他2人はだいぶ饒舌だ。ただ、彼らがそういう度テオは、大切な人と過ごす日だからと丁寧に、断りを入れる。
アシュリーは毎年忙しい中クリスマスは絶対にテオと一緒に過ごしてくれる。テオにとってそれは、とてつもなく楽しみな、甘い時間だった。
そしてもう入らないと思いながら、残してはいけないとデザートを食べるためにフォークに手を伸ばす。
「「せめてその人に会うまで納得できない!!」」
刹那、2人が声を揃えてそう言い放ったのだ。
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