一番近くに。

沈丁花

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ss2「サンタさんの正体は」

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ソファーに移動すると、しなやかな指が一つ一つシャツのボタンを外していく。その美しい仕草をただ、惹きつけられてぼぅーっと眺めてしまう。どこまでも綺麗だ。

心臓はばくばくと煩いのに、脳はとろけるようにふわふわしている。どれだけ熱くなるのかと、ただただ疑問に思う。これ以上熱くなったら、きっとどうにかなってしまう…

全ての服を取り去られると、何も身に纏っていない姿を舐め回すように観察された。そこでテオはやっとあることに気がつく。

なぜ気づかなかったのか、気づいてからは本当に疑問だった。

慌てて近くに置いてある畳まれたジャケットに右手を伸ばす。そして自分の身体を隠そうと左手を動かす。

その手はどちらも目的に到達することなくあっけなく縫いとめられた。彼の顔を見ると、その目は愛おしさと支配欲に染まっていて。

明るいリビングのソファーの上、無防備にさらされた自分の身体は、いつもの何倍も鮮明に映っているはずだ。つまり、汚い過去を晒す傷跡が、はっきりと見える状態になっている。

「やだっ!!」

見ないで。隠させて。と泣きそうになりながら目で訴える。それは汚いものだから。

「どうして?綺麗なのに。」

縫い止める手は優しいのに、絶対に外れない。アシュリーは昔彼が丁寧に縫ってくれたであろう幾つもの過去の虐待痕に、一つずつ柔らかなキスを落としていった。

汚いのに、やめてと思うのに、それでもこんなに大切にされたら、綺麗なものに思えてきてしまう。

ああ、美しいなと、彼が動くたびになびく金色の長い前髪を見て思った。何から何まで、本当に。心も、身体も、この人は全て。

やがて後ろの蕾に彼の指が入ってくる。どこから出したのか、そこを柔らかくするための潤滑剤が彼の指にはべったりとついていた。

いつもそう。この人は丁寧に丁寧に、絶対に壊れないように優しく、頭を撫でながら慎重にほぐしてくれる。

「ぁっ… 」

入り口が十分にほぐれれば、すぐに彼の指はテオの一番いいところを正確に刺激する。

久しぶりに味合う大きな刺激についていけず、思わず唇を噛み締めると、少し血の味がした。それを確認すると、すかさず彼の指が歯の間に入ってくる。

「だめだよ。ただでさえテオの負担が大きいんだから、噛むなら俺の指にして。」

そんなこと言われて、アシュリーの指を噛めるわけがないじゃないか、とテオは思う。結果、その快感は声にして逃すしかなく、だらしない声を何度もなんども発し続けた。

やがて彼の指が抜かれ、唇に熱いキスが注がれる。目を合わせるとともに、互いのピアスがかちっ、と小さな音を立てた。

それを合図に、膝が大きく割り開かれる。

挿れるよ、と目で訴えられ瞬きで応じると、彼の昂りが入ってくる。

「ぅっ…やぁっ… 」

熱い吐息はどちらのものかわからないほど交わっていたが、その中に混じる甘い声は明らかにテオのものだった。

アシュリーはそこさえも美しい形をしていて、入ればぴったりとテオの感じるところをする。

周りが明るいから、いやらしく音を立てる結合部がはっきりと見える。

普段その用途では使わない場所なのに、その光景を見ているとどう見ても彼を受け入れるためにあるとしか思えなかった。

ああ、繋がっている。一番深いところまで、彼と。彼は額に汗を光らせ、優しく規則正しい律動を繰り返す。

「っ…出すねっ… 」

アシュリーが達するのはいつもより少し早かった。もちろん、テオは入れられた瞬間にとうに達しているので問題はない。

するっと抜ける瞬間さえも快感で、思わず二度目の絶頂を迎えた。

それを見て愛おしそうに微笑んだ彼は、テオの頭を優しく撫でると、もう一度その、魔法の言葉を囁いた。

「かわいい。」






「やだ、行きたくない… 」

玄関で見送ってくれるアシュリーに、テオはぎゅっとすがりついた。

やっぱり甘い時間は過ぎ去ると一瞬に思えてくる。いつもより遅いとはいえ昨日の行為で身体はまだだるい。優しくしてくれたのに、久しぶりだからだろうか。

「俺もいつも可愛いのにいつにも増してかわいい今日のテオを誰かに見せたくない、休もう?」

冗談で甘えただけなのに意外とあっさり受け入れられてしまう。さらに恋人バカな形容詞付きだ。

「じゃあいつにも増して色気たっぷりで美しいアシュリーも休んでくれる?」

再び冗談を重ねてみる。もちろん彼がそうすると言っても休ませる気はない。命を預かる仕事だから。

「…そんなことないし今日はノアもロイもいないから…」

今度は真面目に返された。

「冗談だよ、行ってきます。」

キスをして手を振って玄関を出る。

何か引っかかるなと思っていたら、革靴の靴紐が切れていた。会社に行ったらもらおうと、とりあえず引っかからないように応急措置だけ施す。

…何だろう、縁起悪いな。

その後も会社に行くまでに、カラスの群れに出会う、黒猫が横切る、石につまずいて転ぶなど、普段一つでも起こったら不吉だと思うサインがいくつも続いた。

…本当に休めばよかったかな?

そんなことを思いながら、重い足取りで会社の門をくぐった。
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