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一番近くに
彼の思い
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「いつまでもそばにいる、家族のような存在が欲しかった。
人を助けたいと思いながら、助けたいと願った人の半分ほどが俺の前で亡くなった。それでも人を助けるために、頑張ったんだ。
でも、ある日から白い悪魔の噂が立ち始めてね。その話に出てくる悪魔が自分だと知った時、何も信用できなくなった。そのままの姿で外に出た時、散々な目にあった。
それで、唯一無二の、絶対に信じられる存在が欲しかった。
だからあの日、助けたテオが一緒にいたいと言ってくれた時、すごく嬉しかった。もしかしたらこの子と、家族になれるかもしれないって。
一緒にいてみてテオは本当に優しくて素直で、表情に出にくいけれど感情豊かで、だから俺はテオのことが大好きになった。
テオという絶対信じられる存在に、いつも救われていたんだ。
…でも、最近それだけじゃなくなった。」
そこで、彼はまた言葉を切って長い沈黙が部屋を包んだ。
アシュリーの言葉を聞いて、すとんと彼が自分といてくれた理由が腑に落ちた。
彼も、寂しかったのだ。出会った頃感じたあの笑顔の裏に覗く寂しさは、やはり彼の心の大部分を捉えていたのだろう。
でも、その反面全く理解できないこともあった。最近それだけじゃなくなった、と彼は言った。
好きな人ができたのだろうか?なら何故僕といたい?ぐるぐる考えてみても何も変わらないのに、どうしても考えずにはいられない。
でもやっと、彼が色々な気持ちを僕に話してくれようとしている。ずっと聞けなかったことを聞かせてくれようとすることが嬉しい。
アシュリーは、何か言おうとして口を開き、諦めたようにまた閉じるのを繰り返していた。そして結局、
「ごめん、やっぱりなんでもないよ。」
と寂しそうに微笑んだ。僕を抱きしめる手は震えていた。
前なら何も聞きなかった。それは、知らないことがアシュリーのためだと思ったからだ。そして、この関係に終止符を打ちたくない、壊したくないという思いが今でもある。
でも、こんなに彼が望むなら、きっとすぐに出て行けと言われることはないだろう。
それなら。
「なんでもないはひどい。やっと言ってくれると思ったのに。」
自分の口からいきなり出た言葉に、自分でも驚愕した。アシュリーも目を泳がせており、明らかに動揺しているのがわかる。それでももう言ってしまったものは仕方ないので、構わず続ける。
「僕はノアに初めてアシュリーの仕事のこと聞いたとき、すごく尊敬した。そして、他人からの根拠のない噂にアシュリーが悩まされてるって聞いてすごく悲しかった。
でも、一番腹が立ったのは、何もできなかった僕自身に対してだ。
アシュリーが嫌がるなら聞かなくていいと思ってた。でも、知らなかったら悩みを聞いて心を支えることさえできない。それに全部知っていてアシュリーを支えているノアにも嫉妬した。本当は、僕が支えたかったのに。
今日だってやっとちゃんと話し合えると思ったのに。アシュリーが信頼できる存在って言ってくれて嬉しかった。
僕はもう何も知らないでただお世話になる無能な人になりたくない。だから教えて欲しい。」
アシュリーの前でこんなに饒舌になったのは初めてかもしれない。いや、彼の前に限らず人生初か。
アシュリーの驚いた顔が面白い。開いた口が塞がらないとはこういうことなのか、とにかくとてもびっくりしているのがわかった。しかし段々とその表情は深刻なものに戻っていく。
「テオのこと、好きになったんだ。」
重たく開かれた口からは、そんな言葉が出てきて、むしろ今まで好きでもないのにこんなによくしてくれたのか?と疑問に思った。
「…?
僕もアシュリーのこと、好きだけど。」
それになんの問題があるのだろう。
「…その、恋愛的な意味で。」
ああ、と納得した。はっきり言われても嘘のようだが、そんな嘘をこんなに真剣な表情でこの優しい彼が言うわけがない。
もちろん、驚いたけれど、それを嫌だとは思わなかった。むしろアシュリーに好いてもらえたのだから、嬉しくもある。
「テオがノアにキスされたとき嫉妬した。この先、もっと色々なことを他の人として愛を育むんだと思うと、少し寂しい。でも幸せになって欲しいと思ってる。
テオは俺に手袋を作るために自分のプレゼントを毛糸にしたし、あのときアクアマリンを見て俺の瞳と照らし合わせたって言ってくれた。それがすごく嬉しくて、同時にすごくどきどきした。
ピアスをあけた時は、テオが至近距離で真っ赤になるから、可愛くて俺も悶えそうだった。
テオがいない1ヶ月、すごく辛かった。ぽっかり穴が空いたみたいに、仕事以外何にも手につかなくて、食事も楽しくなかった。
だからどんどん食欲が減っていったし、テオのことを考えて夜は全然眠れなかった。目を閉じるとずっと思い浮かんで来るんだ。
俺は人に恋愛感情というものを抱いたことがないけれど、色々考えた結果この感情は恋愛感情というものだと思う。
勝手でごめん。でも、このことは忘れてもらっていいんだ。テオに手を出したりもしない。テオに大切な人ができるまで、一緒にいて欲しい。」
あれ?と思った。アシュリーが言っている気持ちを、僕は知っている気がする。なんだろう…
人を助けたいと思いながら、助けたいと願った人の半分ほどが俺の前で亡くなった。それでも人を助けるために、頑張ったんだ。
でも、ある日から白い悪魔の噂が立ち始めてね。その話に出てくる悪魔が自分だと知った時、何も信用できなくなった。そのままの姿で外に出た時、散々な目にあった。
それで、唯一無二の、絶対に信じられる存在が欲しかった。
だからあの日、助けたテオが一緒にいたいと言ってくれた時、すごく嬉しかった。もしかしたらこの子と、家族になれるかもしれないって。
一緒にいてみてテオは本当に優しくて素直で、表情に出にくいけれど感情豊かで、だから俺はテオのことが大好きになった。
テオという絶対信じられる存在に、いつも救われていたんだ。
…でも、最近それだけじゃなくなった。」
そこで、彼はまた言葉を切って長い沈黙が部屋を包んだ。
アシュリーの言葉を聞いて、すとんと彼が自分といてくれた理由が腑に落ちた。
彼も、寂しかったのだ。出会った頃感じたあの笑顔の裏に覗く寂しさは、やはり彼の心の大部分を捉えていたのだろう。
でも、その反面全く理解できないこともあった。最近それだけじゃなくなった、と彼は言った。
好きな人ができたのだろうか?なら何故僕といたい?ぐるぐる考えてみても何も変わらないのに、どうしても考えずにはいられない。
でもやっと、彼が色々な気持ちを僕に話してくれようとしている。ずっと聞けなかったことを聞かせてくれようとすることが嬉しい。
アシュリーは、何か言おうとして口を開き、諦めたようにまた閉じるのを繰り返していた。そして結局、
「ごめん、やっぱりなんでもないよ。」
と寂しそうに微笑んだ。僕を抱きしめる手は震えていた。
前なら何も聞きなかった。それは、知らないことがアシュリーのためだと思ったからだ。そして、この関係に終止符を打ちたくない、壊したくないという思いが今でもある。
でも、こんなに彼が望むなら、きっとすぐに出て行けと言われることはないだろう。
それなら。
「なんでもないはひどい。やっと言ってくれると思ったのに。」
自分の口からいきなり出た言葉に、自分でも驚愕した。アシュリーも目を泳がせており、明らかに動揺しているのがわかる。それでももう言ってしまったものは仕方ないので、構わず続ける。
「僕はノアに初めてアシュリーの仕事のこと聞いたとき、すごく尊敬した。そして、他人からの根拠のない噂にアシュリーが悩まされてるって聞いてすごく悲しかった。
でも、一番腹が立ったのは、何もできなかった僕自身に対してだ。
アシュリーが嫌がるなら聞かなくていいと思ってた。でも、知らなかったら悩みを聞いて心を支えることさえできない。それに全部知っていてアシュリーを支えているノアにも嫉妬した。本当は、僕が支えたかったのに。
今日だってやっとちゃんと話し合えると思ったのに。アシュリーが信頼できる存在って言ってくれて嬉しかった。
僕はもう何も知らないでただお世話になる無能な人になりたくない。だから教えて欲しい。」
アシュリーの前でこんなに饒舌になったのは初めてかもしれない。いや、彼の前に限らず人生初か。
アシュリーの驚いた顔が面白い。開いた口が塞がらないとはこういうことなのか、とにかくとてもびっくりしているのがわかった。しかし段々とその表情は深刻なものに戻っていく。
「テオのこと、好きになったんだ。」
重たく開かれた口からは、そんな言葉が出てきて、むしろ今まで好きでもないのにこんなによくしてくれたのか?と疑問に思った。
「…?
僕もアシュリーのこと、好きだけど。」
それになんの問題があるのだろう。
「…その、恋愛的な意味で。」
ああ、と納得した。はっきり言われても嘘のようだが、そんな嘘をこんなに真剣な表情でこの優しい彼が言うわけがない。
もちろん、驚いたけれど、それを嫌だとは思わなかった。むしろアシュリーに好いてもらえたのだから、嬉しくもある。
「テオがノアにキスされたとき嫉妬した。この先、もっと色々なことを他の人として愛を育むんだと思うと、少し寂しい。でも幸せになって欲しいと思ってる。
テオは俺に手袋を作るために自分のプレゼントを毛糸にしたし、あのときアクアマリンを見て俺の瞳と照らし合わせたって言ってくれた。それがすごく嬉しくて、同時にすごくどきどきした。
ピアスをあけた時は、テオが至近距離で真っ赤になるから、可愛くて俺も悶えそうだった。
テオがいない1ヶ月、すごく辛かった。ぽっかり穴が空いたみたいに、仕事以外何にも手につかなくて、食事も楽しくなかった。
だからどんどん食欲が減っていったし、テオのことを考えて夜は全然眠れなかった。目を閉じるとずっと思い浮かんで来るんだ。
俺は人に恋愛感情というものを抱いたことがないけれど、色々考えた結果この感情は恋愛感情というものだと思う。
勝手でごめん。でも、このことは忘れてもらっていいんだ。テオに手を出したりもしない。テオに大切な人ができるまで、一緒にいて欲しい。」
あれ?と思った。アシュリーが言っている気持ちを、僕は知っている気がする。なんだろう…
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