旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗

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転生石原莞爾

第27話 満州型海防戦艦

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日本海軍は通商護衛専門とする海上護衛艦隊を組織した。日本が東亜連邦の各国と連絡するには海運が占め、石油や石炭、ゴムなど各種資源を運ぶ時に潜水艦から雷撃を受けては堪らず、東亜連邦と欧米諸国と世界終末戦争が勃発する前に通商護衛の戦力を整備しなければならない。



 海上護衛艦隊は主に特設巡洋艦と量産型駆逐艦、海防艦、駆潜艇など比較的に軽量級の構成だった。通商護衛の敵は潜水艦が基本なので本格的な戦艦と巡洋艦を配備する必要はない。練習艦と称した老齢艦を配備して充足を満たすことは例外と存在した。その中でも極めて特異な軍艦は例外中の例外と君臨する。



 その名も満州型海防戦艦だ。



「東亜連邦の経済圏にインドシナが加わったことで通商の重要性が高まっている。同時に満州型海防戦艦の責任も強まった。我々は日本と中国、インドシナの三点を結んでいる。たとえ、輸送船のお守りでも東亜連邦を支えていた。各員は自覚をもって護衛任務に臨むことに期待している」



「本艦の30cm砲4門は飾りなのが惜しい限りです。主砲班は対潜砲弾でも良いから撃たせてくれと言っています」



「対潜砲弾と言っても単なる時限信管の榴弾に過ぎん。アメリカとイギリスと戦争が始まれば砲撃戦は必ずや勃発する。それまで腕を鈍らせては困るがな」



「副砲も同様です」



「とにかく、今は不測の事態に備える。英海軍や米海軍が臨検を図ったり、仏海軍の残党が商船を砲撃したり、あまりの挑発行為には東亜連邦が正義の鉄槌を下して構わない。このような通達が届いた」



 満州型海防戦艦は大連造船所で建造される。



 誰もが海防戦艦という名称に首を傾げた。海防戦艦は自国近海の防衛に特化した種別である。主に海軍小国で運用された。日本海軍も日露戦争時に鹵獲したロシア帝国海軍の戦艦を便宜的に海防艦としたことがある。しかし、世界一の海軍強国となった現在は一隻も保有していなかった。満州型海防戦艦は中華民国海軍が保有して中国人が乗り込むが、日本海軍から出向した少数の将校と士官も確認でき、中華民国海軍が自立するまで指導役と乗船する。彼女は中華民国と日本を基本に台湾や北部仏印など東亜連邦の海運の守護者と君臨した。



 満州型の排水量は約12,000tと重巡洋艦に準ずる。艦型は特異で一目見れば忘れられない。中華民国では記念切手が製造される程の人気を集めた。主砲の前部集中配置の採用により艦後部がフラットの平坦が占める。これは海防戦艦に対潜能力を付与した結果だが、特異な見た目と裏腹に非常に合理的な汎用性を秘めていた。



「30cm砲の出番があるんですか! 日本の友から授けられた宝刀を飾るだけでは勿体ない!」



「砲術長を鍛えた日本人は随分と変わり者らしい」



「10cmの高角砲もあります! 砲弾の期限は刻一刻と迫っていますぞ!」



「わかった、わかった。欧米と縁を切った以上は強硬姿勢を見せつける。臨検は英海軍の意趣返しと行こう。敵商船を見つけたらすぐに砲撃を許可するが一発も当ててはいけない」



「沈めてしまっても」



「孟春砲術長の相手は疲れる。誰か話し相手を変わってやれ」



 満州型は姉妹に多少の差異こそあれど基本は共通する。



 30cm連装砲2基4門を前部集中配置の主砲に据えた。元々は日本海軍の巡洋戦艦向けに開発された物らしい。巡洋戦艦計画中止に伴い流用を受け取った。艦型にそぐわない重武装を施されている。日本海軍は小さな船体に重武装を究めていた。重巡洋艦と駆逐艦に規格外の重武装を施して軍艦の歴史に楔を打ち込んだことは記憶に新しい。もっとも、戦艦と言うには数世代前の武装も東亜の海を防衛するに足りた。



 副砲は日本海軍が採用した優秀生の長砲身10cm高角砲を連装と単装を備える。長砲身から撃ち出される高初速の砲弾は小口径特有の速射と相まって非常に強力だ。こちらも防衛には十分な装備である。その他は37mmと20mm、13.2mmの高角機銃に7.7mm重機関銃をハリネズミと有した。対空を重視した格好は不審船への警告射撃用も兼ねる。



「満州型は後方へ爆雷、前方へ迫撃砲を投射できます。敵潜水艦が潜望鏡を上げた時が最期です」



「敵潜水艦を狩りつくした後は兵士に戦車、車両、火砲等々を運搬する。なんと、まぁ、便利な軍艦でしょう」



「日本海軍は世界一と認めざるを得ない。我々は数十年を勉学に費やす必要があった」



「どうりで巨大なクレーンを持っているわけですよ。なんで巨大クレーンを積むんだと思っていましたから」



「本艦は戦艦と海防艦、高速輸送艦の汎用性が強みと認識するように」



 フラットな後部甲板は海防艦の機能が詰め込まれた。海防戦艦と名乗る以上は海防艦を兼ねてもおかしくない。約300個の爆雷を4本の爆雷投下軌条又は4基の爆雷投射機から放った。最新装備のスピガット式対潜迫撃砲を無数に備える。東亜の生命線たる通商護衛に特化すると奇抜な海防戦艦が生まれるわけだ。



 爆雷は従来のドラム缶の旧式から抜本的に形状を見直した新式に切り替わる。爆雷の威力を左右する点は炸薬量よりも沈降速度なのだ。潜水艦も技術の進歩から潜航速度が向上している。深度100mまで潜れるようになると爆雷が追い付かなかった。したがって、炸薬量よりも沈降速度を重視した新型を開発する。



 あいにく、爆雷は自艦の前方以外にしか投下と投射できない弱点を抱えた。敵潜水艦は常に後方にいるとは限らない。前方に待ち構えている場合は無防備を呈した。雷撃を許さない制圧兵器を欲する。そこで、安価な上に数を稼ぎやすく運用も簡単な迫撃砲を選択した。海軍は陸軍が研究中のスピガット式迫撃砲の供与を受ける。対潜能力を見る試験で色々と不足はあれど有用と判断した。対潜迫撃砲は小型と軽量より海防戦艦から駆潜艇まで至る所に設置される。



「次はどこへ行きましょう。イギリスの本国まで向かいたいところですが、香港を取り戻して間もなかった」



「自己完結するな。私も本音を言えば英本国まで突貫したい。その役割はナチス・ドイツに押し付けよう」



「なにやら、イギリスの本国と大規模な空戦を演じているとか」



「ドイツは負けるな。あんな男が指導者とは国民に同情したいが、そうもいかないようだな」



 特異な軍艦であることはご理解いただけたと思うが、最後に本艦は高速輸送艦の性質まで帯びており、護衛艦が輸送艦と一緒に輸送できれば一石二鳥だった。平坦な甲板の下に本来は主砲と副砲の弾薬庫を設ける区画が存在する。ここに重砲と野砲の重火器に食料と水、医薬品を積み上げた。敵潜水艦の出現に備えながら輸送作戦も実施できる。



 満州型海防戦艦の最高速は24ノット~25ノットと巡洋艦にも劣った。輸送艦と考えると十分に高速だろう。鋭意と大量建造中の高速輸送艦と協調することができ、軍艦としては低速と言われても、特段気にすることでなかった。潜水艦は浮上航行でも一部を除いて20ノットに満たない。海中にいる時は鈍足を極めた。一度でも振り切れば再補足は難しい。つまり、巡洋艦と駆逐艦に匹敵する速力は不要と切り捨てた。



 満州型海防戦艦は通商護衛を極めた汎用戦艦と言えよう。



「それにしても、あの香箱輸送艦はどうにかならないのか」



「私は香箱と言いたくない。我々の遅れた造船技術でも容易に建造できた。約3カ月で完成することは絶大な利点である。そう考えれば美しく思えないか?」



「はぁ…」



「今は理解できんだろうが、じきに理解できるはずだ。今は日本海軍の教えを請う時期だが、将来は太平洋に青天白日満地紅旗を翻らせ、星条旗もユニオンジャックも排除する」



「英米よ…眠れる獅子は遂に目覚めたぞ」



「震えて待つが良い」



 満州型海防戦艦は威風堂々と行進した。



続く
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