旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗

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転生石原莞爾

第7話 満州飛行機の大繁盛

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臨時装甲列車の終着駅は満州大工業地帯だった。



 満州は中華民国の豊かな鉱物資源と人的資源を糧に急速な工業化に突き進んでいる。表向きは中華民国が一層発展することを目指して日本の資本を注入した。同時に世界恐慌から完全に脱する一大公共事業という看板が掲げられる。実際はソ連と欧米に対抗する軍備強化の土台作りなんだ。



「石原閣下のおかげで大繁盛も大繁盛です。我々は独自開発を最小限に抑える代わり、中島、三菱、川崎、愛知など主要企業の製品を生産し、特に重爆撃機は月間5機から10機まで伸ばしています」



「君たちには悪いが、まだまだ、月間どころか年間も足りない。欧州情勢は待ってくれない」



「よく存じております。満州飛行機は航空機だけでなく、船のガソリンとディーゼルのエンジン、機銃の改良まで何でもござれです。重爆撃機の生産数はラインの追加で対応しましょう」



「日本の大地は狭すぎるから満州の豊かな大地に拠点を移す。日本と満州ひいては中華民国と人と物と金を回すことで欧米諸国に対抗できるんだ。最終的に東亜細亜一帯で完結したい」



「石原閣下の慧眼に勝るものはありません」



 おべっかはおいて置こう。



 満州飛行機は文字通りの満州に設けられた航空機メーカーである。主に日本の中島や三菱、川崎、愛知など主要メーカーの製品をライセンス生産した。軍備増強に日本の大地は狭すぎる。広大な中華民国の満州に巨大な工場を設けた。日本で研究して満州に試験と生産を行う分担を敷いている。



 満州飛行機と社名を「飛行機」と称する割に手掛ける物は手広かった。エンジンは航空機だけでなく陸海軍の船舶用も開発と生産を担う。最近はドイツ製を基に水雷艇や高速艇のガソリンとディーゼルのエンジンを製造した。他にも航空機用ガソリンエンジンをデチューンした戦車用エンジンや従来の統制エンジンの改良などと多岐に渡る。



 今更ながら、石原莞爾ら満州派の肝煎りであった。



「ソ連の動きが怪しい。新鋭機は間に合いそうか」



「九九式襲撃機と九九式軽爆撃機のことですね。どうぞ、ご覧になってください。百聞は一見に如かず」



「近接航空支援は大陸だけの戦術に限らない」



 満州飛行機のお偉いさんに連れられる道中に長大な滑走路や巨大な研究棟と倉庫を眺める。日本にも巨大施設があると言うが規模が桁違いだ。関東軍の善良な独断専行から10年も経過していないにもかかわらず、ここまで成長したことに自身の行いが間違っていなかったと自信を抱き、黄金仮面を付けれど内心はニコニコだろう。



 陸軍と海軍に引き渡す前に一時保管する倉庫へ通された。いかにも重厚な扉が開かれた先に双発機と単発機が出撃を今か今かと待っている。数年前までは複葉機が当たり前だった。あっという間に単葉機が主流に置き換わる。空気抵抗を意識した流麗なデザインは芸術と言え、エンジンは始動すれば、さぞ、けたたましい轟音を響かせた。



「石原閣下から見て右側の単発機が九九式襲撃機です。三菱さんが開発した単発・単葉・低翼・複座・固定脚となりました」



「戦闘機隊が制空権を確保している中で敵地上部隊を低空から侵入して撃滅する。そのために速度性能を捨てた」



「おっしゃる通り、固定脚が一番の証拠ですが、重装甲と重武装もあります」



「戦場で必要な兵器は高性能ではない。いくら雑に使っても壊れず、手入れが楽であり、緊急を要する時も直ちに動く物だ。これが分からん素人が多くてな」



 陸軍は対ソを念頭に置いて独自に襲撃機と軽爆撃機という機体を設定する。主に敵地上部隊や飛行場など敵拠点を低空侵入から撃滅した。いわゆる、近接航空支援という戦術に則る。近接航空支援が大陸における戦闘に限定されるなんて声は荒唐無稽と無視に値した。島嶼部の戦闘でもゲリラ的な襲撃に応用できる上に敵軍の後方の輸送を脅かす。



 九九式襲撃機は三菱が開発して満州飛行機がライセンス生産した。三菱の生産ラインを少しでも空けることで効率化を図る。本機は敵地上部隊を低空から襲撃する運用法を鑑みて速度性能は切り捨てた。重武装と重装甲に比重を置いて豊富な爆弾と機関砲に加えて充実した防弾を備える。堅実で頑丈な固定脚を採用したことは不整地での離着陸を想定した。エンジンは低馬力だが信頼性の高いハ26-Ⅱの『瑞星』を採用するが、機首に一定の余裕を設けて瑞星の後継たる『金星』への換装を予定するなど、全体的に仕様を柔軟に変更できるよう敢えてスペースが設けられる。



 戦場で必要な兵器は「とにかく高性能」という声は荒唐無稽なんだ。いかに兵士が蛮用しても壊れることなく、簡単に手入れができて、緊急時に直ぐ動かせるの三拍子が揃った物が傑作に等しい。



「主翼に13.2mm機銃4門と後部座席に7.7mm旋回機銃1門を備えます」



「爆弾はどれだけ積めるのか」



「主翼内部に爆弾倉を備えて60kg爆弾6発を基本としますが、必要に応じて、主翼下部に100kg爆弾を4発に変更でき…」



「輸送船攻撃には十分か」



 本機は固定武装に主翼13.2mm機関砲4門と後部7.7mm旋回機銃1門を装備した。敵地上部隊の装甲車やトラックなど軽装甲目標に機銃掃射を行うが、7.7mm機銃では貧弱なため、陸海軍共通の13.2mm機関砲を選んでいる。主翼内部の爆弾倉は60kg陸用爆弾を左右で3発ずつの計6発を収納でき、60kg陸用爆弾が物足りずに打撃力を求める場合は100kg陸用爆弾4発を吊架した。



「拡張の余地はありますので、後継機の開発を進めつつ、順序改良を加えます」



「よろしい。こっちが九九式軽爆撃機か」



「はい。双発機故の重武装と重装甲を纏いますが便宜的に軽爆撃機とします。高速爆撃機と異なる点は…」



「水平爆撃と急降下爆撃を両立・機種に大口径機関砲を集中・低空の安定性を重視」



「やっぱり、かないません」



 九九式軽爆撃機は史実と大きく変わった。どちらかというと重戦闘機の性質を帯びる。水平爆撃と急降下爆撃を両立して、機首に大口径機関砲を集中配置して、低空における性能を重視して、等々の点から襲撃機も兼ねるだろう。主力戦闘機並みの高速性能は九七式高速爆撃機や新式爆撃機に任せた。軽快な運動性能は九七式軽戦闘機に絞って無茶苦茶な要求を削ぎ落す。



 こちらは川崎航空機(旧川崎造船所)が担当した。満州飛行機はライセンス生産と改良を行う。大まかは九九式襲撃機と共通するが双発機ゆえの重武装を確立した。機首に武装を集中させられる強みを存分に活かし、37mm機関砲1門と20mm機関砲2門を装備する。37mm機関砲は歩兵砲を素体にする都合で使い勝手は劣悪だが威力は抜群を極めた。20mm機関砲は13.2mm機関砲を拡大した物である。若干の重量増加と弾道低伸性を引き起こしたが、13.2mm機関砲と使用感は変わらず、海軍の新型艦上戦闘機に採用を予定するぐらいに優秀だった。



「こいつは爆弾倉を無くしている。大重量の徹甲爆弾もいけるかね」



「エンジン次第のところは否めません。やれないこともありません」



「反跳爆撃を試したい」



 本機は爆弾倉を持たないために機体外部に100kg爆弾か60kgを多数備える。簡易的なレールを追加してロケット弾も運用できた。陸用爆弾かロケット弾の面制圧から大口径機関砲を叩きつける。敵戦車と敵車両を片っ端から撃破することを想定した。これに万能戦闘機思想も注入されたことで重戦闘機から偵察機まで様々な運用に充当できよう。



「中島の栄は良いんですが、思い切って、三菱の火星に変えても」



「かなりの大冒険だが面白い試みだ。満州飛行機はしがらみなく何でもできる。私が背後に立った。よしなにしなさい」



「ありがとうございます」



 エンジンは中島の栄で1000馬力級であるが物足りなさを覚えた。新式爆撃機は1500馬力級を目指している。軽爆撃機が1000馬力級に甘んじる理由にならなかった。双発機で余裕がある利点から襲撃機同様にエンジンの換装は必至と共有する。



「せっかく欧米諸国から良い物を中華民国経由で確保している。世界終末戦争の勃発までに大馬力エンジンを間に合わせよ」



「心得ています」



続く
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