巣づくり品評会

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7、品評会ー姫野の巣

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『さぁ、初々しい剣城君の巣の後は、我が校の姫、姫野君の巣をご紹介しましょう!』

日々、SNSで注目を集める姫野の巣。
観覧席の生徒たちも期待を込めて画面を見つめた。

パッと切り替わり、巣の画像が表示される。

それは、色鮮やかな世界だった。

扉からベッドに向かって色とりどりの衣類が点々と落ちていた。
よく見ると落ちている衣類は、線を描くようにベッドの上まで続いていて、茎のように見える。
ベッドの上には、衣類の花が咲いていた。
カラフルな衣類が花びらのように重ねられていて、一輪の花になっている。

『おぉーっと!これは気合い入ってますね』
『写真を撮り慣れている姫野くんらしい巣ですね。まるで記念写真のようです』

その巣自体が、いや、部屋全体が1つの作品のようになっている。
会場から感嘆の声が上がる。

「一人だけ違う競技してねぇか」
思わず長内がツッコミを入れる。
「フォトコンテストじゃないですよね?」と喜録も思わずぼやいた。

次の写真も同じ巣の写真だが、そこには先ほどまではいなかった姫野の姿があった。
巣の中で横向きになって眠っているように見える。

会場内は黄色い悲鳴に包まれた。

姫野はファンたちの反応にご満悦で腕を組んだ。
突然、ガタンと大きな音を立てて、王子谷が立ち上がる。
「あ、いや。・・・すまない」
何かあるのか、と王子谷を見るが、結局何も言わずに着席する。

次の写真では、巣に寝そべったままカメラに向かって手を伸ばす姫野の姿が。

ガァン
何かにぶつかったような音がしてそちらを見ると、王子谷が机に膝をぶつけたらしく、悶えていた。

『カメラマンまで用意するなんて、本格的ですね!会場内も歓声が止みません』

さらに次の写真が映し出される。
姫野はカメラを上目遣いで見て、パジャマの胸元をはだけさせていた。

「ハッ・・・・・!!」
何かを叫びかけた王子谷が、慌てて口を塞いでいた。
「なぁ、司会者さーん。そろそろ終わりにしてくんないと、王子谷が心臓発作起こしそうなんだけど~?」
赤くなったり青くなったりと忙しい王子谷を見て、長内が口を挟む。

『さすがは姫。王子様も悩殺する画像だったようです』

その言葉に姫野は頬を緩ませた。

「姫・・・美しすぎるっ・・・!!」
「物販は?いくら?いくら出したら買えるの!?」
「あのパジャマってオークションされないかな?」

姫野のファンたちが取り乱し拝み始める。

まだまだ写真はあったようだが、公開できそうなのがここまでだと言うことで、後の画像は姫野のファンサイトで期間限定で公開されると告知された。

「姫野ファンイベントになってんじゃねぇか」
長内のぼやきは、姫野のファンの歓声にかき消された。
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