巣づくり品評会

5、品評会ー長内の巣

『え～会場内が一部お通夜状態になっておりますが、気を取り直して参りましょう！
続いては、3年2組、長内君の巣です』

モニターに映し出された長内の作った巣は、服やタオルなど、布類がベッドに山になっているだけの簡易なものだった。
一見すると、洗濯物を取り込んだ後に見える。
実際、取り込んだ洗濯物を一箇所にまとめて写真を撮っただけなので、その通りなのだが。

『これは、教科書を再現したような模範的な巣ですね～。
こちらはどういったことが読み取れますか？
解説の会永会長。会長？』

食い入るように画像を見ていた会永は、穴井に声をかけられて慌てて解説に戻る。

「おっと、失礼。基本に忠実で素晴らしい巣ですね。
手近なものを使用して作られている所が、衝動性を演出していて想像力を掻き立てられます。円や山というには形が崩れている所を見ると、巣材が足りなかったのでしょうか？是非とも巣材の提供をさせていただきたいものです。
会えないせつなさを埋めるように作られた巣の中で、目元を涙で濡らし眠っている長内くんの姿が目に浮かびます。
こんな巣で出迎えられた番が正気でいられるか心配になりますね」

会永の熱の入った妄想ーーーいや、解説に、長内は背筋を凍らせて膝に置いていた手で拳を握る。
隣で見ていた剣城は、長内が机を飛び越えて殴りにいくんじゃないかとハラハラしていた。

「長内くんの巣は全体的に寒色系で統一されていて色味も美し・・・ハッ！そうか、俺のラッキーカラーが青だから！」
「いや、しらねぇよ」
「なんてことだ、こんな簡単なメッセージを見落としていたなんて」

都合のいい解釈を一刀両断する長内を手で制すると、胸に手を当てて噛み締めるように目を閉じる。

「皆まで言わなくていい。長内くんの気持ちは、ちゃんと届いてるからね☆」

会永のウインクを叩き落とす勢いで、長内は机を叩いた。

「おい！誰かアイツを解説席からつまみ出せ！」

立ち上がり乱闘しようとする長内を、両隣の剣城と王子谷が慌てて押さえ込む。

「無いことばっか並べ立てやがって！ツラ貸せ！！この野郎」
「二人きりになりたいとは・・・みんなが見ている前で、なんて大胆なんだ！」
「～～～～っ！そんなにお望みなら全校生徒の前で叩きのめしてやるよ」

「竹刀持ってこい！！」と叫んでバリケード(机)を蹴り飛ばす長内。
必死に押さえ込む剣城と王子谷。
早々に退避してお茶休憩を取る姫野と喜録。
一部始終を激写する岸屋。
長内の写真データをくれないかと呑気に交渉する会永。
ステージ上はカオス状態だ。

『え～っと、このままだと血の海になりそうなので、次いきまーす！』

穴井は元気よく叫ぶと、次の画像を表示させた。