元姫だった私、魔法適正値10000オーバーの冒険者〜勘当された姫は、冒険者の夢を叶え旅をする〜

永遠ノ宮

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二章〜冒険者は時に、資金稼ぎとして依頼も受ける〜

三十六話 襲撃

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 ロッドとシュートとの三人で、色々考えてみたはものの、実際地図だけでは地形の把握などが難しく、黒騎士が通りそうなルートを一つとして見つけられなかった。

 今日は断念して、寝床についた私達だったが、もっと危機感を持つべきだったと今になって思うことに。
 遡ること少し前のこと。

「寝るか……」

「そうね。長いこと頭悩ませても、脳が寝ていればひらめきすら出てこないもの」

「リリーさんの言う通り、夜になるに連れて連れて、脳は寝ていきますから。夜に脳が活性化するのは夜行性、人間は昼行性ーー」

「長い長い。これだから頭の良い奴は、一般常識でも長々語ろうとするから嫌いよ」

 私とロッドはベッドに入った。
 ちなみに、シュートは見張り役も兼ねてソファーで座りながら寝ることに。
 剣を抱いて寝る辺り、やはり剣士。

 部屋を用意してもらいながらも、ロッドの話からしていつ黒騎士が来るか分からない状態なので、この部屋に一緒に夜は居ることにした。
 それでベッドが一つしか無いから、私とロッドが共有したらシュートは自然とーー言うわけである。

「……リリーさん、寝ましたか?」

「……寝て、ないわよ」

「寝てましたよね? 涎垂らして寝ていないとかありえないです、寝てましたよね? 秒で寝ましたよね?」

「私は何処かのカラクリ頼りの駄目な十一歳眼鏡野郎と同じであるはずないじゃない。そんな簡単にこの状況で…………」

「いや、寝てるから! 寝てるからああああ!?」

「ハッ! 夢に誘われた!」

「夢じゃなくて、睡魔の甘い手招きに負けたんだろうが」

 まあ、私は常に緊迫感漂うこの状況で、睡魔に襲われ、少しでも沈黙があれば寝ていけるほどに弱っていた。
 もちろん、爆睡しているほどの余裕は無い。しかし、寝れる時に寝て起きたい自分もいて、葛藤しているうちに睡魔に襲われーーを、繰り返している。

 ついには、ロッドに覚醒剤を口に押し込まれ、無理矢理飲まされた。
 覚醒剤は二種類あり、人間を駄目にする麻薬の類と、眠気を飛ばす覚醒作用だけの眠気覚まし薬の類があり、今回飲まされたのは後者だった。

 目が一気に覚めていく。
 さっきまで眠たくて死にそうだったのに、今では寝むたいとは? と、自分に問いただしたくなるほどに睡眠と無縁の距離までかけ離れてしまっている。

 シュートは私の覚醒具合を見て、ロッドにお願いして覚醒剤を一つもらい食す。
 私とシュートが元気になると、ロッドは一人毛布を被り目を閉じて、

「おやすみなさい……私、一週間寝ていないので、ちょっとだけ…………寝かせて……………」

 途切れ途切れにそう言って、眠りについた。
 ロッドが気持ち良さそうに寝ていく様子は、私としては腹立たしいの極みでしかない。

「シュート、このアマのどたまぶち抜いて良いかしら?」

 私が銃を懐から取り出すと、シュートが止める。

「おいおい、せめて小指一本にしろ」

「二人はギャングですか? さっきから恐ろしい……」

「……寝ていいわよ? 安らかに!」

 私が笑うとロッドは、苦笑してまた眠りにつく。

「本当に永遠の眠りにつかせてあげようかしら」

「それもありだな。依頼人がいなくなれば帰れるってか」

「まあ、そんなことしないけどーー」

 ソファーにシュートと座り、私達は二人で地図を開けた。
 そしてよく地図を見ると、ある場所だけ馬での移動が可能でここへ真っ直ぐこれて夜なら暗さに同化できてバレない道があることに気づく。

 街との反対側ーー砂漠地帯からの一本道。
 シュートは気づいていないが、これに気づいてしまった私は嫌な悪寒が走った。
 はっと後ろを振り向いてみると、突如この部屋のドアが吹き飛んだ。

「ーーきゃああああ!!」

「リリー! ……何だこりゃっ!?」

「何が起きたのですか!?」

「起きるの遅い!!」

 吹き飛びそうになった私を、シュートが抱きかかえてくれた。
 ロッドが遅めの反応で起きた。

「敵襲! 敵襲! 敵の襲撃だあ!」

「敵?」

「第三、第五、第七部隊は敵の進行を止めよっ! 第一部隊は防衛範囲を広げろ急ぐのだぞ!!」

「村長、誰が来たの?」

 外に出ると、村長が指示を出して隊を動かしていた。
 声を掛けると、村長は額の汗を拭って、私に背を向けた。

「お逃げください。あれは、黒騎士ですがーーもう、人間ではない。……最凶の亡霊です」

「黒騎士……黒騎士が来たのね!?」

「ですからベリアルを連れてお逃げください! 朝日が昇る頃には、この村は火の海に落ちます」

「……ここまで来て、それはできないわよ」

 私は村長の言うことを無視して、前に出る。
 後ろからシュートとロッドが剣を装備して外に出てきた。
 私の横につくと、二人は剣を抜き、構える。

「ーー村長。村どうこうよりも、俺達は依頼をこなしに来ただけだ。『純愛結晶』ーー古代の秘宝。それを取り返すだけだ!」

「私も村は知りません。『純愛結晶』のみです」

「そうよ、村は私だって正直どうでも良いのよ。ベリアルがここに残るなら守ってあげたいけど。まあ、どうでも良いけど、とりあえず村人の命は守る。で、良いかしら? 面倒だし、村はまた頑張って創って? 私達も一緒になって壊しちゃいそうだから」

「皆さん……申し訳ないっ! 私達も力を尽くします、どうかお願いしますっ!」

 村長にお願いされては、仕方ない。
 
「じゃあ、避難させてきなさい。女子供、まだまだ長い人生を持つ未来の希望をね」

 私がそう言うと、村長は頭を抱え下げてから走って村人の避難へ向かった。
 村人の避難が開始されると、隊員達がどんどん民家のある方へと戻っていく。

「大事になったわね」

「仕方ないです。こうなることは何となく、分かっていましたから。ただ、鬼族ならいざとなれば本能的に素早く逃げられるので、悪いですがここを選ばせてもらいましたし」
 
「なるほどね……ベリアルの見たから分かる分かる。て、ことでーー黒騎士を止めましょうかあ!!」

 ーーヒヒーンッ!!

 馬の鳴き声が聞こえると、同時に爆風が吹く。
 私の結界で二人も一緒に守ったが、半円形の結界に当たって四方に勢いを更につけた爆風は刃物のようになり、木々を切り、吹き飛ばす。

「見つけたぞ……ロッド。愛する者よ」

「黒騎士……グレイル。あなたを、止める!」

「ロッド……やめたほうが良い。私はもう、止められない。私はもう、人をやめたのだ」

 黒騎士をロッドはグレイルと呼んだ。
 多分、こいつがロッドの初恋相手だ。間違いない。
 見た目は、黒騎士とロッドが名付けた通りに真っ黒な騎士で魔王軍にいそうだ。

 鎧、兜、馬、馬鎧、全てが黒い。
 そして二股の槍は先から青黒い炎がメラメラと燃え盛っている。
 そして、馬の目は紫色に発光している。
 嫌な悪寒が走ったのは、多分この男が身に纏う不吉のオーラからだ。
 
 ーーそれは闇の力。

 ペルセポネに似た闇の魔力だが、黒騎士にはそれに加えて恨みの念を感じる。
 念はしっかりと、鋭くロッドに向けられている。
 私が結界を解くと、黒騎士は馬から降りて歩いてくる。
 ゆっくりとーーゆっくりと。

「ロッド、俺と一緒に……冥界へ行こう。二人で、そこで、神になろう」

「二人で……?」

「そうだ、私達は二人で……幸せになろう。人間に裏切られ続けてきた、私達は、邪神であろうと、魔神であろうと、神になればーー幸せでいられる」

「そんなの、無理に決まってるじゃない」

 きっぱりと否定できた。
 
「誰だ、君は」

「私はリリーよ。ペルセポネに聞いてあげようかしら? 何ならハーデスにでも聞いてもらう?」

「……ペルセポネ。君は、知り合いなのか? 冥界の皇女と」

「ええ、そうよ? だから分かるけど、そう簡単に神になれないはずよ。ペルセポネだって、天界からハーデスに連れ去られて邪神に落ちたわけだしね。何か宛があるの?」

「ある。俺はタナトスと、約束をしたーー神になれると」

「タナトスなんて信じてしまったのグレイル!?」

 ロッドは剣を強く握り締めると、歯ぎしりして黒騎士を睨みつける。
 黒騎士は三人の中で一番前に立つ私の目前で立ち止まると、兜を脱いだ。

 兜の下にはーー。


「……シュートッ!?」

「似て、る? いや、似ているとは思っていたけど……赤髪になると、更に……似ている」

「俺が二人とかまじかよっ!!」


 私達は驚愕した。
 正確には、私とシュートーーがだ。
 ロッドはシュートを見た時、グレイルと似ていると思っていたらしい。
 だが黒騎士の顔を知らない私とシュートは、やはり同じ顔が二人いる現状を理解することは、不可能。
 ドッペルゲンガー現象を、認められないのだ。

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