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一章〜ギルド設立を目指して〜

二十二話 バトルロイヤルの激闘⑥

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 その後、個人戦の表彰式が先に行われてから後半戦となった。
 後半戦を私達は誰一人ーー見ていない。
 何故なら、見る必要が無かったからだ。敵のことを知るのは大事と厚成に言われたが、相手のことを知らずに、真正面から突っ込んでいくのが私達のスタイルだからそれを崩さないのもまた、スタイル。

 まだギルド設立に至っていないので、スタイルと言うのもおかしな話かもしれない。
 とにかく、私達は『クイーン』の事は知らないまま戦うこととなる。

 いや、もう既にーー戦っている。
 オーラとオーラで、どちらが勝るかを。

「ーー男がいるな」

「……シュート、あんたは出番無しよ」

「げっ! まあ、そりゃそうだわな。んじゃ、終わったら起こしてくれ」

 『クイーン』のリーダー、アルラーネは、シュートが壁に背をつけて戦闘へ混じらないことを確認すると地面に付きそうなまでに長い紫の髪を風に一回靡かせた。
 冒険者より、モデルの方が似合うんじゃないだろうかその容姿と身動き。

 背は高く、180はありそうな勢い。そして何よりーーボンでキュンでボンでーーそれに加えて手足が細く長い。
 モデルウォークで町を歩いていれば、絶対スカウトされること間違い無し。羨ましいが、あまりに不平等とも感じる。
 
「決勝戦となったがーーお前達、教えて貰おう。ギルドかギルドでないか」

 アルラーネは魔法陣から二丁の銃を出して握ると、私と向けてそう質問してくる。
 ギルドかーーそうでないかーーもちろん後者だ。
 しかし、私達はギルド設立一歩手前の段階で今、ここに立っている。そこを忘れてはいけない。
 だからこう言うとする。

「ーーギルドであり、そうでない。そうでないけども、そうでもある。お分かりかしら~モデルさん?」

「そうかーーなら、ギルドであろうとなかろうと、構わない。前半戦、見ていなかったが聞いた噂では、かなり暴れたようだな。そのまま調子付いたままで、いてくれることを願うとしようか」

「調子付くもなにも、私達は初めから調子に乗っているだけの暴れ馬の集団よ? 暴れ出した馬を止めるなんて不可能じゃないの?」

「それはどうかなーー」

 アルラーネは引き金を躊躇わずに引いた。
 私の頬を掠れるようにして飛んだ銃弾は、ギリギリ結界で失せぐことが可能だったが、しかし亜音速を超えていた。
 早すぎてーー反応に遅れた。
 銃口までもが魔法陣でできており、そしてそこから発射される弾は魔力を吸収して速度と威力を上げていると推測しても良い。

 流石『クイーン』の頭である。
 油断したら、すぐに頭に銃弾をねじ込まれる。撃ち込まれる。
 反射神経と、結界を張りながらの反撃が重要となりそうだ。

「……甘いな。それで私を倒そうとは、恥を知ったほうが良い。まあ、ただ一つーー結界を瞬時に張ることができたお前は、並の冒険者とは違うと褒めてあげよう。さて、だがそれでも私が戦う相手は決まっているーーお前だ、アリアータ」

 アリアータが指名を受けた。
 私をそっちのけでーー。
 だけど、だけどもだ。アリアータとアルラーネが戦うのは、筋が通っている。
 現リーダーであり、アリアータを一度は『クイーン』に誘い、そして強制脱退させたから。筋はーーアリアータにした内容は通っていない。が、戦う筋はやはり通っている。

 私の出る幕は無いということは、確かだ。
 アリアータは受けて立つと言わんばかりに、剣を抜いた。
 だがしかしーー足が、震えている。
 強気を装っているが、自分より強い相手と戦うこと、それによく知る人物であることが加わり、闘争心が恐怖心へと変わったのだ。
 辛いーー辛いーー怖いーー怖いーー強いーー強い。
 アリアータの心の声が聞こえてくる。

「アリアータ、お前が強くなったか確かめさせてもらう」

「の、望むところっ!」

「……威勢は良いとしよう。さて、この決勝戦は二対二で戦うこととしよう。何故かーーそれは、私がリーダー、そしてコイツが副リーダーであるからだ。アリアータと私が戦うのなら、手合わせとして、リーダーのお前とうちの副リーダー、アルバータと戦うーー異議はあるか?」

「そんなの、私の出番はどうなるのですよっ!!」

「五月蝿い、ネネ。良いわよ、そうしましょ。じゃあ早速ーー始めましょう?」

 私が拳を構えると、アルラーネの背後から瓜ふたつの女が出てきた。
 アルラーネと同じ紫の髪ーーしかし、長さが段違いに長い。
 ツインテールにしてから、それを更に後ろで一本に結っているが、外してしまえば多分ーー。
 身長一つとその半分を足した長さはありそうだ。

 そして何より不気味な点が一つ……。

 アルラーネが呼んだ、瓜ふたつの双子の片割ともとれるその女アルバータは、目を閉じている。
 盲目ではない、でも、目を閉じている冒険者が副リーダーを務めていることが不気味で不気味で、吐き気を覚えるほどに嫌なオーラしか感じない。
 多分この女ーー半端なく強い。

 アルバータは私に気づくと(見えてはいないから気配のみで)、ニコッと微笑んでくる。

「あなたが……御相手を?」

「今時、「御」なんて付けて喋る人間居ないわよ?」

「……独特の空気を感じます。あなたは、何者なのでしょうか?」

「あんたこそ何者? その目、盲目で閉じている訳ではないでしょ? 開いて見なさいよ」

 と、私が言うとアルバータは「そうしましょうか」と言って目を開けた。
 その目は、三白眼ーー!? 
 私とアリアータ、それに下がったネネとシュートも声を上げて驚いた。
 三白眼は、視野が狭く冒険者になることは無理とされている一種の万病だ。

 アルバータは、彼女は、その三白眼を平気な顔で見せてきたのだ。
 驚かない人間は居ない。三白眼で冒険者は、無茶が過ぎる。
 視野が狭いとなれば、完全感覚のみで見えない範囲をカバーしながら動かないといけない。
 馬鹿も大概にしろと、私のメンバーなら言っている。

「お姉様、宜しいのでしょうか?」

「ああ、構わない。暴れて良いぞ」

「では、遠慮は無しということで」

 アルバータはアルラーネから離れると、やはり魔法陣を浮かび上がらせた。
 姉妹揃って、異空間使いだった。
 魔法陣は異空間と繋がっており、そこから物を生成したりすることが可能な高度な魔法。

 その魔法陣を戦いの主武器としている。
 つまり、異空間使いなだけに好き放題物を生成したり中を経由して場所移動したりできることになる。
 最悪な相手である上に、これが私達の本当の初陣であることがまた最悪度を増させる。

「おいでなさい……神獣鏡」

「……その目、やっぱり三白眼だったのね……。それに、神獣鏡……」

「アリアータ、お前は見たこと無かったか。それなら良い機会だ、私にやられた後にその目に焼き付けろ」

 アリアータも知らなかった、副リーダーの三白眼と神獣鏡。
 神獣鏡もまた厄介だ。これは武器を超えた神器と言う物。
 並の冒険者が使えば身を滅ぼすが、選ばれし物が使えば効果を増す。

 何が厄介なのかーーと、言うならやはり、反撃効果である。
 神獣鏡はありとあらゆる攻撃を跳ね返す。
 私の相手が魔法陣使いの神獣鏡に選ばれし化物だと思わなかった。
 だがしかし、故に、私は燃えている。
 アルバータを私がどんな形でも、ぶちのめしてしまえば世界に名を轟かせる冒険者の一人に頭一つだろうが入ることが可能だ。

 私はアルバータに、笑ってみせた。
 すると、アルバータは首を傾げたが、アルラーネが何かを悟ったように眉を一瞬動かした。

「アルバータ、気をつけろ。あいつ、魔法陣にも神獣鏡にも怯まない質だ」

「そうなのでしょうか? それはそれで、面白い」

「姉妹の会話は、家に帰ってパピーとマミーと食卓囲んでしてくれる? 私は今ねーー良い感じに熱が上がっているのよ、この熱は冷めそうにないわあ。あんたに膝をつかせない限りね!!」

「……熱は冷めます。すぐに、死体となって死後硬直しますから」

 フフッーーと微笑んだアルバータは、何やら楽しげで、更に私の熱を上げてくれる。
 私は魔法陣の使い方を知ってはいるが上手に使えそうにないが、それでも見様見真似で武器を生成する。

「良いですね。私に対して、短剣一本なんて、面白いです」

「短剣ね……これがただの短剣に見える? 」

 私が短剣を右手に持ち、太陽向けて伸ばすと刃先から柄に向かってゆっくりとオレンジのオーラが纏わり付きだした。
 
「太陽の剣……シャイニングソードか」

「そうねアルラーネ。シャイニングソードなんて、世界探せば至るところにあるけどーーこれは純バルテン製よ。バルテンは、太陽石の輸出で世界一位。つまりそのバルテン製は何処の国の太陽石よりーー純度が高い、即ち、このシャイニングソードは太陽光をエネルギーにして私の魔力を倍増させていく!」

「そうか……そう言うことか。お前の正体、ようやく分かった。しかし、戦いにそんなことは無用だ。さあ、始めようーーアリアータ。私を超えてみせろ!」

 アルラーネは、私から目を逸らすと二丁の銃をアリアータに向けた。
 アリアータが構えると同時に、私とアルバータも構えそして、頭上を飛ぶ烏が決勝戦開始を知らせーー。

 一斉に飛び掛り、そしてまた闘技場が壊れるのではないか勢いで爆発と地響きが起き、砂埃が天高くまで舞い闘技場外まで地割れが起きた。
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