上 下
35 / 49
1部

第三十一話 真実と嘘

しおりを挟む
「国王!全ての嘘を正しに来た!覚悟しや……」

「はぁてー?どなたたちじゃ?」

「テト、あれは……近所のおじいちゃんよ」 

「……。僕のカッコイイはずのセリフが台無しだーー!!この罪は、成敗だけでは済まないぞ国王!」

「テト神、真実とはいかに?」


 後ろからコツコツと音を立てながら歩いてくる男、マントを身にまとい、王を引き継ぐさいに前国王より渡される神聖の首輪をつけたその姿は国王の姿そのもの。


「アリア……スカちゃん?」

「スカーレットです!バカ!」

「そうそう、そのいきそのいき!」

「やっぱりはらたちゅあいつゅ……」


 からかわれた私は頬を膨らませて、釣り人に釣り上げられたフグのようにパタパタとその場で小刻みに暴れる。
 それを横で見ているテトが、呆れた顔をしてつぶやく。


「アリア、普通に相手の挑発にのってるけど……大丈夫?」


 そのテトの声は相手のことを、「コイツ、多分ほんまのバカだ……」と思っている人へ言うこと言葉の様な残念さを混ぜこんだ声していた。


「多分スカちゃんはバカだよ?テト神」

「ですよね!アリアって絶対バカですよね!」

「この際バカなのはおいておくけど……なんで敵と仲良くなって先輩と後輩のような会話してるのよ!」

「はぁっ!忘れていた!あの人は敵だ!」

「ハハハ……敵なんてひどいなー」


 バカ夫のテト神と、ハハハと軽く笑いながらお気楽な国王。
 この2人で話は成り立つのか……いや、私がしっかりしなきゃ!
 私はそう思って話を切り出す。


「国王!あなたには、罪を償ってもらうわ!私へきせた罪とお父様の殺害の件で!」

「ふむ。それは困るなー。僕は口止めされてやらされただけでからねー。君のお父様は殺してないしー」

「どういうことだテト神」

「テト神はおバカだから困るよー、理解して理解して」

「アリアーー!うわはぁああ!バカって言われよ!あんな軽い男にバカって!」


 救い用の無いバカはほっておくことにした私は、テトをとりあえずおすわりで静かにさせて話を続ける。


「どういうこと?誰かが裏で操ってたってこと?」

「そうそう!君の住んでるラグナロクの神なら皆知っている人物」

「それってもしかして……」


 イシス様を先頭に、騎士団の足を止めてくれていた神様一行が入ってくる。
 すると一番後ろにいたシヴァ様が先頭へと華麗な宙返りを決めて立つと、ある人物の名前をあげた。

「カルマ大総帥……ですかね?ガクカ国王様」

「うーん。もうここまでバレたら言うしかないよねー、そうだよー。その通り!」

「ブフッ!オカマキャラなの王さんって!キャハハハハハ!腹痛いよー!」
 
「同感……ブフォッ!」


 アマテラス様とアヌビス様は、国王の話し方と仕草が壺にハマったらしく、お腹を抱えて大笑いをする。
 緊張感がないどころか、真実はどうでもいいように。


「笑うなんてひどいなー。普通に話してるのにー」

「で、国王。カルマ大総帥がなぜ裏の首謀者?」

「簡単簡単!まずー、カルマ大総帥と君のお父さん、ダルマンは仲が良かったのだけどね?同じ宗教信仰者で、どうしても対立が起きてしまって、それの2つの軍勢のリーダーがカルマくんと君のお父さんだったわけ。そして宗教反乱にでたカルマ軍は、九尾の存在を使って君のお父さんに化けさせて罪を被せた」

「カルマ大総帥も中々のアホなのね」

「うん!僕以上のバカがいて立ち直れた!」

「テトが一番のバカよ?バカ」

「そんな……。僕は……僕は……くそぅ……」

「次はお父さんの死の真相ね!あれもカルマが九尾を使ってしたことだよー。僕に化けさせて命令を下して海賊に襲わせた。僕は確かにこのことを追求しようとしたんだけど口止めされてね。「今ここで九尾の存在とダルマンの死の真相が世界に広まれば、この国は終わりだ!」なんて脅されちゃってねー。それでダルマンが君を殺そうとしているのを知って上手いこと追放で逃したのだけど……テト神はびっくらポン!」

「じゃあ九尾の死は?どうなって九尾は死んだの?」

「僕の憶測になるけど、僕に化けさせてアリア暗殺計画でもしたんだろうね、知らないけどねー。アハハハ。そして用が済んだからと言って、恋人の女の子を宗教漬けして洗脳でもして殺させたと思うよ?」

「倒すべきはカルマか……」

「呼んだかね?神様御一行」


 そう言って姿を現したのはカルマ大総帥だった。
 そして、不気味な笑みを浮かべながら語り始めた。


「ダルマンは死んだね。私の作戦で死んだ友は素敵だったよー。そして君が真実に辿りつく前に葬りたかったのにねー……誠に無念だよ」

「カルマ大総帥……」

「ガクカ国王、口止めしたのに言ってしまうのはいけないよー?」 

「さてはて、どの口が言うかな?僕をこけに使っておいて達者だね、君のお口は」

「カルマさん、全てお話願いますね?」

「いいでしょうー。素晴らしき友情の真実をお話しましょう」 


 カルマが真犯人で裏の首謀者。
 そしてカルマが語る真実のすべて。
 私は、これで最後の、お父様とお母様の無念を晴らす!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

私の恋が消えた春

豆狸
恋愛
「愛しているのは、今も昔も君だけだ……」 ──え? 風が運んできた夫の声が耳朶を打ち、私は凍りつきました。 彼の前にいるのは私ではありません。 なろう様でも公開中です。

彼はもう終わりです。

豆狸
恋愛
悪夢は、終わらせなくてはいけません。

1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

水川サキ
恋愛
「僕には他に愛する人がいるんだ。だから、君を愛することはできない」 伯爵令嬢アリアは政略結婚で結ばれた侯爵に1年だけでいいから妻のふりをしてほしいと頼まれる。 そのあいだ、何でも好きなものを与えてくれるし、いくらでも贅沢していいと言う。 アリアは喜んでその条件を受け入れる。 たった1年だけど、美味しいものを食べて素敵なドレスや宝石を身につけて、いっぱい楽しいことしちゃおっ! などと気楽に考えていたのに、なぜか侯爵さまが夜の生活を求めてきて……。 いやいや、あなた私のこと好きじゃないですよね? ふりですよね? ふり!! なぜか侯爵さまが離してくれません。 ※設定ゆるゆるご都合主義

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

処理中です...