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第二十三話 夜の絵本読み

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「お母さん、この本を今日は読んでー!」


 基本的にどの家族でも、子供ができると夜、子供が寝る前に絵本を読んで聞かせる時期がある。
 私も今日は、ヘルに読み聞かせをしてあげようと氷の部屋に入ってヘルのベットの中に私も入って絵本を開く。


「今日は不思議の国のアリスを読むね」

「うん!楽しみ!」


 ヘルちゃんが早く聞きたい!と言わんばかりの返事を返してくれたので私は張り切って読み始める。


ーー不思議の国のアリス(ラグナロク版)

 私の名前はアリス!
 私は大きなお城に住む女の子で、今日は庭でウサギと遊んでるの!
 ウサギと鬼ごっこをしていたら、木の根っこのところに大きな大きな穴を見つけたの。
 私は大きな穴を覗いてみると、走ってきたウサギが私のお尻を押しちゃって、私は穴に落ちてしまったの!
 私は穴をすごーく早くおちていってね、穴の一番下につくとドアが3つもあったの。
 

「ここに入ってみたいから入ってみよう!」


 私は赤いダイヤの形をした絵がかいてあるドアを開けたの。
 そしたらそこには見たことのないお花や、生き物がたくさんいたの!
 私は嬉しくてワクワクして、走ったわ!とても綺麗で夢のような世界があるから!
 くるくると回ったりしながら草原を走っていると、猫にあったの。
 その猫は消えたり、でてきたりして面白くてかわいい猫だったの!
 その次は鳥に出会って……。


ーーヘルの部屋

 ヘルはいつの間にか寝ていた。
 ヘルが寝たから、その後のお話は読まなくても大丈夫!だけど、アリスってこんなにいい話だっかな?と私は疑問が残る内容だった。
 猫が出てくるの早いよね?男の人はでてこないの?主人公の女の子ってそんな設定だった?薬を飲んだり序盤にしたよね?
 私の知っているアリスは、ドラゴンと戦ったりと凄まじい展開に主人公の女の子が巻き込まれていく話だったと思う。
 でも、ラグナロクの不思議の国のアリスはとても主人公が生き生きとしていて楽しそうな情景ばかり。
 それ以外には?と思った私が手に取ったのは赤ずきん。
 

赤ずきん


「では、お祖母さんのところにリンゴを届けてきます!」

「赤ずきん頼んでわね!」

 私は赤ずきんちゃん!お母さんに頼まれて、お祖母さんの家にリンゴを届けに行くことになったのだけど……森を通らないとお祖母さんの家には行けないの。
 私はこわーい森に入っていって、ゆっくり歩いてお祖母さんの家に行ったの。
 そしたらオオカミさんが出てきたの!大きなオオカミさん!
 私はびっくりして後ろにこけちゃってお尻をドテン!と地面にぶつけちゃったの。
 そしたら心配したオオカミさんが、


「大丈夫?立てる?」


と、声をかけてくれたの!優しいオオカミさんでよかった!
 オオカミさんは、どこに行くの?と私に聞いてきたの、だから私はお祖母さんの家にリンゴを届けにいくの!と言ったら、


「なら僕が一緒についていってあげるよ!」


と言ってくれてついてきてくれたの!
 私は怖い森を優しいオオカミと一緒に歩いていって、お祖母さんの家に怪我もなくついてリンゴを渡せました!


 おしまい。


 え?と私は思った。
 ものすごくオオカミがいい生き物になってしまっている。
 こんなにハッピーエンドじゃないお話だし、お祖母さん食べられたよね?赤ずきんも食べられて、狩人によってオオカミ殺されちゃよね?全然話が違うことに私は驚きが止まらない。
 テトに聞いたらわかるかもと思ったけど、テトなら、


「ハッピーエンドが一番だよ!」


とか言い出しそうな予感しかしないからだめ。
 私は一番しっかりとしているイシス様に聞いてみることにした。


「イシス様、ラグナロクのおとぎ話などって、どうしてこうも全てが完璧なハッピーエンドで終わるようになっているのですか?」

「簡単な話よ?ラグナロクの民は皆が幸せでなければいけない、テト様の教えのもとそう願っているわ。そして、テト様本人がその本すべてを人間界から引っ張ってきてアレンジして作ってあるのよ?」

「テトがですか?!やっぱりテトは幸せ主義だと思っていたのあってました」

「実は、テトはね……」

「それ以上はイシスだめだーー!!」


 大声でテトが飛んでくる。
 テトは顔を赤くして、ゼェゼェと息を荒げながらイシス様にごちゃごちゃ色々と言っている。
 それを無視するかのようにイシス様は続ける。


「ヘルちゃんのために作ってもあるのよ?アリアちゃんをお嫁にすると勝手にラグナロクで決めてから、ヘルちゃんのお母さんがアリアちゃんになったときように作ったのが、そのハッピーエンド満点の絵本よ。ウフフ」

「イシス!!」


 テトはイシス様の背中をグイグイ押していき、向こうにいってて!と追い出した。
 テトは私にりんごのように紅潮させた顔を向けて、大きな声で叫んだ。

 
「僕は幸せ主義でハッピーエンドが好きなだけ!それだけーー!!」


 それは普通に嘘とバレバレなのと、かわいい。
 

 結果、ラグナロク界の絵本がどれもハッピーエンド終わりなのは、テトの幸せ主義のせいと、ヘルちゃんへの愛情からでした。
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