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緊急です緊急です
緊急──チーターとの大戦3
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ーーカラガイナ区 ロイドアンド墓地ーー
「マテリア冒険者街からかなり来たよね」
「ロイドアンド墓地だから──20キロくらいだろうか?」
「もうちょいあるよー? 正確には22.81キロあるからねー」
ギルド本部での簡単な状況と、報酬についての説明を受けた私達は、すぐさま5チームに別れて決めた各指定の場所へ。
カイトさんの予みが正しければ、私達第1チームは……ここロイドアンド墓地で待てば敵がくるらしい。
でも……ここは怖すぎるよ。肝試しで行った心霊スポットの500倍はあるよ絶対。
今にもゾンビの1体や2体、足元から出てきそうなほどに不気味な空気が漂っている。
生首の吊るされた大樹、掘り起こされた墓、コウモリがぶら下がる浮いた聖女の石像。そして真っ赤な月。
「怖いよお姉ちゃん……」
空気に負け、私はお姉ちゃんにゆっくりと近づいて服を掴んで小さくなる。
すると、私の足元の土がムクリと盛り上がって触手の先端が顔を出す。
「ひぃっ!」
「ダスト。もういなくなったから安心していいよー」
「気持ち悪くて、思わず声を出してしまいました……」
リリーミさんが、ダストと呼ばれる魔法で触手をどこかへ飛ばしてくれた。
ダストは「捨てる」らしい。
実際の英語でダストは「ゴミ」のはずだから、ここだけの用語みたいだけど。
「なるほど……リリーミ・シュテンが関わっていると、きましたか」
「──!? 誰!?」
「誰もいないようだな。確かに声が聞こえたのだがな」
「それはコイツじゃ……ない、うぐっ……ぐぐぐ!」
「「リリーミさん!」」
大樹の太い枝の一本に座る男性が、リリーミさんの首に触覚を巻き付けて吊し上げている。
いつの間にあんなところに……。それより、リリーミさんが呆気なく縛られるなんて、あの人何者?
「リリーミ・シュテン、懐かしいですね」
「あ、あぁ……。バルロッサ……お久し、ぶりだね。うぅ!」
「それと薬師ちゃんですね? あらら、厄介ですねー」
「あなたは──」
「バルロッサと言います。ロンドンのローカルチャンネルでチーターをやっています、以後お見知りおきを」
ロンドンのローカルチャンネルは、説明の途中に出てきたチートの発生地。
つまり……この人はチーター集団の一人。
暗い墓地に、黄緑色の瞳だけが光っている。
そこへ、かなり早いペースて移動する赤月の光よって、バルロッサさんの顔が明らかになった。
「骸骨!」
「スケルトン……いや、体はあるらしいな」
「顔だけですよ顔だけ。リリーミ・シュテンに色々と顔をいじられましてねー」
顔をイジられた程度で済ますことができないほどに恐ろしい顔。
骨に目と、金髪が付いているだけの……まさにスケルトン。
体はしっかりとしているけれど、顔だけはどうしても見ていられない。
と言うか、リリーミさんもリリーミさんで趣味がだいぶと悪いようにも思えた。
「それで、目的は……なんだバルロッサ」
「そうですね。邪魔なあなたを排除して──薬師ちゃんを消し去るですね」
「ふざ……けるな! リミアちゃんは、生きていなきゃ……うぐっ!」
たかがゲーム、それなのに私はとてもリリーミさんに守られている。
だが、リリーミさんがここまでする理由が私には理解ができない。
ゲームは死亡した場合、コンティニューができる。前回もそうして、イベントでリリーミさんに秒速でヤラれた際も復活している。
でも、今のリリーミさんの言い方はまるで──本当に死ぬかのようだ。
「とりあえず……リリーミさんを離してもらおうか!」
「勢いがいい巨乳のお姉さんですね。いいですよ? ──そらっ!」
「──!? リリーミさん! 危なかったー」
リリーミさんを取り返そうと、大樹に向かって勢い良く飛んでいった姉に、バルロッサさんはリリーミさんを投げつけた。
勢い良く飛んでくるリリーミさんを姉は吸収魔法で受け止めると、その瞬間移動で私の横に戻ってきた。
だが──
「リリーミさんのMPが!」
「ドレインタッチだったのかあれは……」
「ドレインタッチを超え、もう名前がないですけどね。ドレインタッチなんて所詮は吸血鬼のお得意技にすぎなですから」
ドレインタッチを超え、名前すらないチート技。
謎のチート技でMPを知らぬ間に吸収されていたのか、リリーミさんも驚いている。
吸収されていることすら分からない……そんなドレインタッチ、チート技を受ければバルロッサさんのMPは無限に増えていくのみじゃない。
「ここは私が先にやってみるとしよう……。リリーミさんの言った意味が、私には理解できたから鼎は戦ってはいけない。逃げるんだ! バルロッサ──!」
「威勢がいいですね。ではお相手を……ハックドラット」
「──空絶一文字斬り!」
大きなネズミの炎と、姉の持つ大剣にまとう水色の炎がぶつかり合う。
そして──
「グハッ……!」
姉が押しで負け、数メートル吹き飛ばされた後、ズサーッ! と、地面を滑っていき墓石に背中からぶつかった。
姉は大きくダメージを負うも、瞬間的に追加で発動していた回復魔法で全回復した。
そしてまた言われた──
「鼎……逃げろ! お前は戦闘不能になればまずい! リリーミさん、頼むからギルド本部か強制ログアウトさせてイタリアへ鼎を連れていけ!」
だからお姉ちゃん……何って言うのよ! なんでそんなことを……。なんでイタリアなのよ……。
「マテリア冒険者街からかなり来たよね」
「ロイドアンド墓地だから──20キロくらいだろうか?」
「もうちょいあるよー? 正確には22.81キロあるからねー」
ギルド本部での簡単な状況と、報酬についての説明を受けた私達は、すぐさま5チームに別れて決めた各指定の場所へ。
カイトさんの予みが正しければ、私達第1チームは……ここロイドアンド墓地で待てば敵がくるらしい。
でも……ここは怖すぎるよ。肝試しで行った心霊スポットの500倍はあるよ絶対。
今にもゾンビの1体や2体、足元から出てきそうなほどに不気味な空気が漂っている。
生首の吊るされた大樹、掘り起こされた墓、コウモリがぶら下がる浮いた聖女の石像。そして真っ赤な月。
「怖いよお姉ちゃん……」
空気に負け、私はお姉ちゃんにゆっくりと近づいて服を掴んで小さくなる。
すると、私の足元の土がムクリと盛り上がって触手の先端が顔を出す。
「ひぃっ!」
「ダスト。もういなくなったから安心していいよー」
「気持ち悪くて、思わず声を出してしまいました……」
リリーミさんが、ダストと呼ばれる魔法で触手をどこかへ飛ばしてくれた。
ダストは「捨てる」らしい。
実際の英語でダストは「ゴミ」のはずだから、ここだけの用語みたいだけど。
「なるほど……リリーミ・シュテンが関わっていると、きましたか」
「──!? 誰!?」
「誰もいないようだな。確かに声が聞こえたのだがな」
「それはコイツじゃ……ない、うぐっ……ぐぐぐ!」
「「リリーミさん!」」
大樹の太い枝の一本に座る男性が、リリーミさんの首に触覚を巻き付けて吊し上げている。
いつの間にあんなところに……。それより、リリーミさんが呆気なく縛られるなんて、あの人何者?
「リリーミ・シュテン、懐かしいですね」
「あ、あぁ……。バルロッサ……お久し、ぶりだね。うぅ!」
「それと薬師ちゃんですね? あらら、厄介ですねー」
「あなたは──」
「バルロッサと言います。ロンドンのローカルチャンネルでチーターをやっています、以後お見知りおきを」
ロンドンのローカルチャンネルは、説明の途中に出てきたチートの発生地。
つまり……この人はチーター集団の一人。
暗い墓地に、黄緑色の瞳だけが光っている。
そこへ、かなり早いペースて移動する赤月の光よって、バルロッサさんの顔が明らかになった。
「骸骨!」
「スケルトン……いや、体はあるらしいな」
「顔だけですよ顔だけ。リリーミ・シュテンに色々と顔をいじられましてねー」
顔をイジられた程度で済ますことができないほどに恐ろしい顔。
骨に目と、金髪が付いているだけの……まさにスケルトン。
体はしっかりとしているけれど、顔だけはどうしても見ていられない。
と言うか、リリーミさんもリリーミさんで趣味がだいぶと悪いようにも思えた。
「それで、目的は……なんだバルロッサ」
「そうですね。邪魔なあなたを排除して──薬師ちゃんを消し去るですね」
「ふざ……けるな! リミアちゃんは、生きていなきゃ……うぐっ!」
たかがゲーム、それなのに私はとてもリリーミさんに守られている。
だが、リリーミさんがここまでする理由が私には理解ができない。
ゲームは死亡した場合、コンティニューができる。前回もそうして、イベントでリリーミさんに秒速でヤラれた際も復活している。
でも、今のリリーミさんの言い方はまるで──本当に死ぬかのようだ。
「とりあえず……リリーミさんを離してもらおうか!」
「勢いがいい巨乳のお姉さんですね。いいですよ? ──そらっ!」
「──!? リリーミさん! 危なかったー」
リリーミさんを取り返そうと、大樹に向かって勢い良く飛んでいった姉に、バルロッサさんはリリーミさんを投げつけた。
勢い良く飛んでくるリリーミさんを姉は吸収魔法で受け止めると、その瞬間移動で私の横に戻ってきた。
だが──
「リリーミさんのMPが!」
「ドレインタッチだったのかあれは……」
「ドレインタッチを超え、もう名前がないですけどね。ドレインタッチなんて所詮は吸血鬼のお得意技にすぎなですから」
ドレインタッチを超え、名前すらないチート技。
謎のチート技でMPを知らぬ間に吸収されていたのか、リリーミさんも驚いている。
吸収されていることすら分からない……そんなドレインタッチ、チート技を受ければバルロッサさんのMPは無限に増えていくのみじゃない。
「ここは私が先にやってみるとしよう……。リリーミさんの言った意味が、私には理解できたから鼎は戦ってはいけない。逃げるんだ! バルロッサ──!」
「威勢がいいですね。ではお相手を……ハックドラット」
「──空絶一文字斬り!」
大きなネズミの炎と、姉の持つ大剣にまとう水色の炎がぶつかり合う。
そして──
「グハッ……!」
姉が押しで負け、数メートル吹き飛ばされた後、ズサーッ! と、地面を滑っていき墓石に背中からぶつかった。
姉は大きくダメージを負うも、瞬間的に追加で発動していた回復魔法で全回復した。
そしてまた言われた──
「鼎……逃げろ! お前は戦闘不能になればまずい! リリーミさん、頼むからギルド本部か強制ログアウトさせてイタリアへ鼎を連れていけ!」
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