33 / 45
売り上げを伸ばしながらクエスト
可鱗さんと可憐さん
しおりを挟む
可鱗さんと横並びで階段を上がりながら、私は話題を振った。
「可憐さんは昔あんな感じなんですか?」
「いいえ。可憐は、もっと元気で……あんな子ではありませんでした」
可鱗さんは、寂しそうな顔をして俯いた。
私は聞いてはいけないことを聞いてしまったと思い、謝ろうとしたが、可鱗さんは話しを続けた。
「あの子は、高校の頃にイジメにあっているんです。それで……一度自殺未遂を」
「……イジメ……自殺未遂? あんなに優しい可憐さんが?」
「あの子は、優しすぎて人に言いように使われ、何をしても文句を言わないからと──エスカレートした結果でした。高校2年の2学期にイジメが始まり、可憐は1年間耐えた。けれど……高校3年の卒業式の日に屋上から……」
あの優しい可憐さんは、優しすぎたことで周りが可憐さんをいいように使った。
可憐さんは、自ら人のために動くタイプ。それはゲーム内でも変わらない。
人に優しいのはいいこと……でも、優しすぎるのもまた自分を苦しめることになるんだ……。
私は話しを聞いていて、胸が締め付けられた。
想像しただけで耐えられないイジメの光景に、言葉がでなかった。
すると、可鱗さんは寂しい顔から笑顔に変えてまだある続きを話してくれた。
「でも、ちゃんと助かってくれたの。屋上落ちたものの、たまたま真下に置かれていた体育用マットの上に落ちて左腕と左脚を複雑骨折しただけで済んで……嬉しかった。可憐が生きててくれたことが嬉しかった」
「可鱗さんはイジメに気づかなかったんですか?」
「私はどうしても双子の片割れでしょ? みんなが私にはバレないように1年間上手いこと遠ざけられてたのです」
可憐さんの片割れの可鱗さんが、イジメを知らなかっただなんて……可鱗さんが一番辛いよね。
私も過去に親友がイジメ被害に会い、転校している。
その時、私は1組で親友は4組。クラスがお互いに一番離れていたことで登下校以外に一緒にいる時間はあまり無かった。
そして私もまた──気づいてあげれなかった。
「分かります。私も親友のイジメに気づいてあげれなくて……気づいた頃には親友は転校してたので」
「鼎さんはこの問題にどう答えますか?」
──イジメはしたものが悪いわけでなければ、されたものが悪いわけでもない。原因は別にある。
「どうですか?」
「私は、イジメの原因はその場の空気だと思います。空気に流されれば、理由がなくてもいじりがイジメに。でも、1人でも止める者がいればイジメにならずに済む……じゃないですか?」
「フフフ。全く私と同じ考えの方で嬉しいです」
イジメの原因について、一度私なりに考えたことがあるからすぐに答えられた。
周りの空気に人は流されやすい傾向にあり、それを利用した結果が集団イジメ。
私は自分の考えを可鱗さんに言ってみた。
すると、可鱗さんも同じ考えだったらしく、私達の間に少し親近感が湧いた。
「私達、似ているのかもしれないですね」
「ですね。いえ……多分同じですね」
「フフフ」「アハハハ」
少しこっ恥ずかしくなった私と可鱗さんは、軽く笑って互いに誤魔化した。
全テストが終了し、帰宅すると17時。
姉はまだ帰ってきていない。
私はカレンダーを確認すると、今日の日付枠に、「18時~アルバイト」と書いてあった。
そうだ……今日はアルバイトで薬屋は私だけお休みもらったんだった。
【ディーヴェルクオンライン】で、みんなと一緒に遊びたい気持ちをグッと堪えて私はバイトに行く準備をする。
クローゼットからバイト先の制服を取り出し、それを着る。
着終えると、基本ファンデーションと薄ピンクのアイシャドウのみで化粧を済ませている私は簡単に直した。
すると、姉がいいタイミングで帰宅してきた。
「お姉ちゃん! 私バイト行ってくるから、お店任せるね!」
「おう我が妹よ! 頑張って行ってきてくれ! 明日は私が撮影だから今日は私が留守番をしておこう!」
無駄にテンションの高い姉に留守番を任せ、私は住んでいるマンションから数分のところにあるコンビニに向かった。
コンビニに着き、飲み物とおにぎりを買った私は走ってコンビニから2分で着くバイト先に向かう。
コンビニ横の脇道を進んで行くと、大通りにでる。
大通りの交差点を渡り、渡った先にあるガソリンスタンドの横に建つハンバーガー店が私のバイト先だ。
「おはようございます!」
「鼎ちゃんおはよー! 準備できたらすぐにレジ入って!」
「らしいですよー」
……あれ? 店長さんが以外に、毎日よく聞いている声が……。
「──可憐さん!?」
「今日からよろしくお願いしますねー、鼎先輩」
レジの横から中に入り、裏へ行く途中の通路で可憐さんが制服を着ていた。そして、すれ違った。
私は驚いて立ち止まって振り返ると、可憐さんはいつもの笑顔でこちらをチラッと見てレジに向かっていく。
サラサラの髪の毛を縛り、黒い制服を着た可憐さんの姿はとても新鮮だった。
いつもの可憐さんはフリルの付いたワンピースや、聖女服が多い。
ゲームと現実の区別が少しつくようになったのかな?
「鼎ちゃーん! 早くお願い! お客様増えてきたー!」
「あっ! はーい!」
「可憐さんは昔あんな感じなんですか?」
「いいえ。可憐は、もっと元気で……あんな子ではありませんでした」
可鱗さんは、寂しそうな顔をして俯いた。
私は聞いてはいけないことを聞いてしまったと思い、謝ろうとしたが、可鱗さんは話しを続けた。
「あの子は、高校の頃にイジメにあっているんです。それで……一度自殺未遂を」
「……イジメ……自殺未遂? あんなに優しい可憐さんが?」
「あの子は、優しすぎて人に言いように使われ、何をしても文句を言わないからと──エスカレートした結果でした。高校2年の2学期にイジメが始まり、可憐は1年間耐えた。けれど……高校3年の卒業式の日に屋上から……」
あの優しい可憐さんは、優しすぎたことで周りが可憐さんをいいように使った。
可憐さんは、自ら人のために動くタイプ。それはゲーム内でも変わらない。
人に優しいのはいいこと……でも、優しすぎるのもまた自分を苦しめることになるんだ……。
私は話しを聞いていて、胸が締め付けられた。
想像しただけで耐えられないイジメの光景に、言葉がでなかった。
すると、可鱗さんは寂しい顔から笑顔に変えてまだある続きを話してくれた。
「でも、ちゃんと助かってくれたの。屋上落ちたものの、たまたま真下に置かれていた体育用マットの上に落ちて左腕と左脚を複雑骨折しただけで済んで……嬉しかった。可憐が生きててくれたことが嬉しかった」
「可鱗さんはイジメに気づかなかったんですか?」
「私はどうしても双子の片割れでしょ? みんなが私にはバレないように1年間上手いこと遠ざけられてたのです」
可憐さんの片割れの可鱗さんが、イジメを知らなかっただなんて……可鱗さんが一番辛いよね。
私も過去に親友がイジメ被害に会い、転校している。
その時、私は1組で親友は4組。クラスがお互いに一番離れていたことで登下校以外に一緒にいる時間はあまり無かった。
そして私もまた──気づいてあげれなかった。
「分かります。私も親友のイジメに気づいてあげれなくて……気づいた頃には親友は転校してたので」
「鼎さんはこの問題にどう答えますか?」
──イジメはしたものが悪いわけでなければ、されたものが悪いわけでもない。原因は別にある。
「どうですか?」
「私は、イジメの原因はその場の空気だと思います。空気に流されれば、理由がなくてもいじりがイジメに。でも、1人でも止める者がいればイジメにならずに済む……じゃないですか?」
「フフフ。全く私と同じ考えの方で嬉しいです」
イジメの原因について、一度私なりに考えたことがあるからすぐに答えられた。
周りの空気に人は流されやすい傾向にあり、それを利用した結果が集団イジメ。
私は自分の考えを可鱗さんに言ってみた。
すると、可鱗さんも同じ考えだったらしく、私達の間に少し親近感が湧いた。
「私達、似ているのかもしれないですね」
「ですね。いえ……多分同じですね」
「フフフ」「アハハハ」
少しこっ恥ずかしくなった私と可鱗さんは、軽く笑って互いに誤魔化した。
全テストが終了し、帰宅すると17時。
姉はまだ帰ってきていない。
私はカレンダーを確認すると、今日の日付枠に、「18時~アルバイト」と書いてあった。
そうだ……今日はアルバイトで薬屋は私だけお休みもらったんだった。
【ディーヴェルクオンライン】で、みんなと一緒に遊びたい気持ちをグッと堪えて私はバイトに行く準備をする。
クローゼットからバイト先の制服を取り出し、それを着る。
着終えると、基本ファンデーションと薄ピンクのアイシャドウのみで化粧を済ませている私は簡単に直した。
すると、姉がいいタイミングで帰宅してきた。
「お姉ちゃん! 私バイト行ってくるから、お店任せるね!」
「おう我が妹よ! 頑張って行ってきてくれ! 明日は私が撮影だから今日は私が留守番をしておこう!」
無駄にテンションの高い姉に留守番を任せ、私は住んでいるマンションから数分のところにあるコンビニに向かった。
コンビニに着き、飲み物とおにぎりを買った私は走ってコンビニから2分で着くバイト先に向かう。
コンビニ横の脇道を進んで行くと、大通りにでる。
大通りの交差点を渡り、渡った先にあるガソリンスタンドの横に建つハンバーガー店が私のバイト先だ。
「おはようございます!」
「鼎ちゃんおはよー! 準備できたらすぐにレジ入って!」
「らしいですよー」
……あれ? 店長さんが以外に、毎日よく聞いている声が……。
「──可憐さん!?」
「今日からよろしくお願いしますねー、鼎先輩」
レジの横から中に入り、裏へ行く途中の通路で可憐さんが制服を着ていた。そして、すれ違った。
私は驚いて立ち止まって振り返ると、可憐さんはいつもの笑顔でこちらをチラッと見てレジに向かっていく。
サラサラの髪の毛を縛り、黒い制服を着た可憐さんの姿はとても新鮮だった。
いつもの可憐さんはフリルの付いたワンピースや、聖女服が多い。
ゲームと現実の区別が少しつくようになったのかな?
「鼎ちゃーん! 早くお願い! お客様増えてきたー!」
「あっ! はーい!」
0
お気に入りに追加
1,065
あなたにおすすめの小説
和風MMOでくノ一やってたら異世界に転移したので自重しない
ペンギン4号
ファンタジー
和風VRMMO『大和伝』で【くノ一】としてプレイしていた高1女子「葵」はゲーム中に突然よく分からない場所に放り出される。
体はゲームキャラそのままでスキルもアイテムも使えるのに、そこは単なるゲームの世界とは思えないほどリアルで精巧な作りをしていた。
異世界転移かもしれないと最初はパニックになりながらもそこにいる人々と触れ合い、その驚異的な身体能力と一騎当千の忍術を駆使し、相棒の豆柴犬である「豆太郎」と旅をする。
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
Let's『錬成』!~初めてのVRMMOで不遇職『錬金術師』やってます♪~
夢・風魔
ファンタジー
初めてプレイするVRMMOに『World Skill Fantasy Online』を選んだ中学三年生の茜。
スキルレベルだけで成長をするというシステムのこのゲームで、彼女は錬金術師を選択した。
『錬成』一つでなんでも出来る!
そんな謳い文句のこの職業。しかし攻撃スキルはなく、ポーションの錬成も生産職のソレと比べると回復量は劣り……。
挙句にホムンクルスはパーティーの経験値配分枠を取ってしまい、邪険にされる始末。
不遇と呼ばれプレイヤー人口の少ない錬金術師を選んだ茜は『チョコ・ミント』としてゲームを楽しむ。
彼女は先入観に捕らわれず、斜め上に向かって錬金術師を楽しむことで──
やがて錬金術師プレイヤーの地位向上に貢献することとなる。
*小説家になろう・カクヨムでも公開中
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜
雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。
剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。
このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。
これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は
「このゲームをやれば沢山寝れる!!」
と言いこのゲームを始める。
ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。
「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」
何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は
「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」
武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!!
..........寝ながら。
現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
この作品は 旧題:金運に恵まれたが人運に恵まれなかった俺は、現実逃避するためにフルダイブVRゲームの世界に逃げ込んだ
の内容を一部変更し修正加筆したものになります。
宝くじにより大金を手に入れた主人公だったが、それを皮切りに周囲の人間関係が悪化し、色々あった結果、現実の生活に見切りを付け、溜まっていた鬱憤をVRゲームの世界で好き勝手やって晴らすことを決めた。
そして、課金したりかわいいテイムモンスターといちゃいちゃしたり、なんて事をしている内にダンジョンを手に入れたりする主人公の物語。
※ 異世界転移や転生、ログアウト不可物の話ではありません ※
※修正前から主人公の性別が変わっているので注意。
※男主人公バージョンはカクヨムにあります
チート級スキルを得たゲーマーのやりたいことだけするVRMMO!
しりうす。
ファンタジー
VRゲーム【Another world・Online】βテストをソロでクリアした主人公──────雲母八雲。
βテスト最後のボスを倒すと、謎のアイテム【スキルの素】を入手する。不思議に思いつつも、もうこのゲームの中に居る必要はないためアイテムの事を深く考えずにログアウトする。
そして、本サービス開始時刻と同時に【Another world・Online】にダイブし、そこで謎アイテム【スキルの素】が出てきてチート級スキルを10個作ることに。
そこで作ったチート級スキルを手に、【Another world・Online】の世界をやりたいことだけ謳歌する!
※ゆるーくやっていくので、戦闘シーンなどの描写には期待しないでください。
※処女作ですので、誤字脱字、設定の矛盾などがあると思います。あったら是非教えてください!
※感想は出来るだけ返信します。わからない点、意味不明な点があったら教えてください。(アンチコメはスルーします)
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる