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売り上げを伸ばしながらクエスト
可鱗さんと可憐さん
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可鱗さんと横並びで階段を上がりながら、私は話題を振った。
「可憐さんは昔あんな感じなんですか?」
「いいえ。可憐は、もっと元気で……あんな子ではありませんでした」
可鱗さんは、寂しそうな顔をして俯いた。
私は聞いてはいけないことを聞いてしまったと思い、謝ろうとしたが、可鱗さんは話しを続けた。
「あの子は、高校の頃にイジメにあっているんです。それで……一度自殺未遂を」
「……イジメ……自殺未遂? あんなに優しい可憐さんが?」
「あの子は、優しすぎて人に言いように使われ、何をしても文句を言わないからと──エスカレートした結果でした。高校2年の2学期にイジメが始まり、可憐は1年間耐えた。けれど……高校3年の卒業式の日に屋上から……」
あの優しい可憐さんは、優しすぎたことで周りが可憐さんをいいように使った。
可憐さんは、自ら人のために動くタイプ。それはゲーム内でも変わらない。
人に優しいのはいいこと……でも、優しすぎるのもまた自分を苦しめることになるんだ……。
私は話しを聞いていて、胸が締め付けられた。
想像しただけで耐えられないイジメの光景に、言葉がでなかった。
すると、可鱗さんは寂しい顔から笑顔に変えてまだある続きを話してくれた。
「でも、ちゃんと助かってくれたの。屋上落ちたものの、たまたま真下に置かれていた体育用マットの上に落ちて左腕と左脚を複雑骨折しただけで済んで……嬉しかった。可憐が生きててくれたことが嬉しかった」
「可鱗さんはイジメに気づかなかったんですか?」
「私はどうしても双子の片割れでしょ? みんなが私にはバレないように1年間上手いこと遠ざけられてたのです」
可憐さんの片割れの可鱗さんが、イジメを知らなかっただなんて……可鱗さんが一番辛いよね。
私も過去に親友がイジメ被害に会い、転校している。
その時、私は1組で親友は4組。クラスがお互いに一番離れていたことで登下校以外に一緒にいる時間はあまり無かった。
そして私もまた──気づいてあげれなかった。
「分かります。私も親友のイジメに気づいてあげれなくて……気づいた頃には親友は転校してたので」
「鼎さんはこの問題にどう答えますか?」
──イジメはしたものが悪いわけでなければ、されたものが悪いわけでもない。原因は別にある。
「どうですか?」
「私は、イジメの原因はその場の空気だと思います。空気に流されれば、理由がなくてもいじりがイジメに。でも、1人でも止める者がいればイジメにならずに済む……じゃないですか?」
「フフフ。全く私と同じ考えの方で嬉しいです」
イジメの原因について、一度私なりに考えたことがあるからすぐに答えられた。
周りの空気に人は流されやすい傾向にあり、それを利用した結果が集団イジメ。
私は自分の考えを可鱗さんに言ってみた。
すると、可鱗さんも同じ考えだったらしく、私達の間に少し親近感が湧いた。
「私達、似ているのかもしれないですね」
「ですね。いえ……多分同じですね」
「フフフ」「アハハハ」
少しこっ恥ずかしくなった私と可鱗さんは、軽く笑って互いに誤魔化した。
全テストが終了し、帰宅すると17時。
姉はまだ帰ってきていない。
私はカレンダーを確認すると、今日の日付枠に、「18時~アルバイト」と書いてあった。
そうだ……今日はアルバイトで薬屋は私だけお休みもらったんだった。
【ディーヴェルクオンライン】で、みんなと一緒に遊びたい気持ちをグッと堪えて私はバイトに行く準備をする。
クローゼットからバイト先の制服を取り出し、それを着る。
着終えると、基本ファンデーションと薄ピンクのアイシャドウのみで化粧を済ませている私は簡単に直した。
すると、姉がいいタイミングで帰宅してきた。
「お姉ちゃん! 私バイト行ってくるから、お店任せるね!」
「おう我が妹よ! 頑張って行ってきてくれ! 明日は私が撮影だから今日は私が留守番をしておこう!」
無駄にテンションの高い姉に留守番を任せ、私は住んでいるマンションから数分のところにあるコンビニに向かった。
コンビニに着き、飲み物とおにぎりを買った私は走ってコンビニから2分で着くバイト先に向かう。
コンビニ横の脇道を進んで行くと、大通りにでる。
大通りの交差点を渡り、渡った先にあるガソリンスタンドの横に建つハンバーガー店が私のバイト先だ。
「おはようございます!」
「鼎ちゃんおはよー! 準備できたらすぐにレジ入って!」
「らしいですよー」
……あれ? 店長さんが以外に、毎日よく聞いている声が……。
「──可憐さん!?」
「今日からよろしくお願いしますねー、鼎先輩」
レジの横から中に入り、裏へ行く途中の通路で可憐さんが制服を着ていた。そして、すれ違った。
私は驚いて立ち止まって振り返ると、可憐さんはいつもの笑顔でこちらをチラッと見てレジに向かっていく。
サラサラの髪の毛を縛り、黒い制服を着た可憐さんの姿はとても新鮮だった。
いつもの可憐さんはフリルの付いたワンピースや、聖女服が多い。
ゲームと現実の区別が少しつくようになったのかな?
「鼎ちゃーん! 早くお願い! お客様増えてきたー!」
「あっ! はーい!」
「可憐さんは昔あんな感じなんですか?」
「いいえ。可憐は、もっと元気で……あんな子ではありませんでした」
可鱗さんは、寂しそうな顔をして俯いた。
私は聞いてはいけないことを聞いてしまったと思い、謝ろうとしたが、可鱗さんは話しを続けた。
「あの子は、高校の頃にイジメにあっているんです。それで……一度自殺未遂を」
「……イジメ……自殺未遂? あんなに優しい可憐さんが?」
「あの子は、優しすぎて人に言いように使われ、何をしても文句を言わないからと──エスカレートした結果でした。高校2年の2学期にイジメが始まり、可憐は1年間耐えた。けれど……高校3年の卒業式の日に屋上から……」
あの優しい可憐さんは、優しすぎたことで周りが可憐さんをいいように使った。
可憐さんは、自ら人のために動くタイプ。それはゲーム内でも変わらない。
人に優しいのはいいこと……でも、優しすぎるのもまた自分を苦しめることになるんだ……。
私は話しを聞いていて、胸が締め付けられた。
想像しただけで耐えられないイジメの光景に、言葉がでなかった。
すると、可鱗さんは寂しい顔から笑顔に変えてまだある続きを話してくれた。
「でも、ちゃんと助かってくれたの。屋上落ちたものの、たまたま真下に置かれていた体育用マットの上に落ちて左腕と左脚を複雑骨折しただけで済んで……嬉しかった。可憐が生きててくれたことが嬉しかった」
「可鱗さんはイジメに気づかなかったんですか?」
「私はどうしても双子の片割れでしょ? みんなが私にはバレないように1年間上手いこと遠ざけられてたのです」
可憐さんの片割れの可鱗さんが、イジメを知らなかっただなんて……可鱗さんが一番辛いよね。
私も過去に親友がイジメ被害に会い、転校している。
その時、私は1組で親友は4組。クラスがお互いに一番離れていたことで登下校以外に一緒にいる時間はあまり無かった。
そして私もまた──気づいてあげれなかった。
「分かります。私も親友のイジメに気づいてあげれなくて……気づいた頃には親友は転校してたので」
「鼎さんはこの問題にどう答えますか?」
──イジメはしたものが悪いわけでなければ、されたものが悪いわけでもない。原因は別にある。
「どうですか?」
「私は、イジメの原因はその場の空気だと思います。空気に流されれば、理由がなくてもいじりがイジメに。でも、1人でも止める者がいればイジメにならずに済む……じゃないですか?」
「フフフ。全く私と同じ考えの方で嬉しいです」
イジメの原因について、一度私なりに考えたことがあるからすぐに答えられた。
周りの空気に人は流されやすい傾向にあり、それを利用した結果が集団イジメ。
私は自分の考えを可鱗さんに言ってみた。
すると、可鱗さんも同じ考えだったらしく、私達の間に少し親近感が湧いた。
「私達、似ているのかもしれないですね」
「ですね。いえ……多分同じですね」
「フフフ」「アハハハ」
少しこっ恥ずかしくなった私と可鱗さんは、軽く笑って互いに誤魔化した。
全テストが終了し、帰宅すると17時。
姉はまだ帰ってきていない。
私はカレンダーを確認すると、今日の日付枠に、「18時~アルバイト」と書いてあった。
そうだ……今日はアルバイトで薬屋は私だけお休みもらったんだった。
【ディーヴェルクオンライン】で、みんなと一緒に遊びたい気持ちをグッと堪えて私はバイトに行く準備をする。
クローゼットからバイト先の制服を取り出し、それを着る。
着終えると、基本ファンデーションと薄ピンクのアイシャドウのみで化粧を済ませている私は簡単に直した。
すると、姉がいいタイミングで帰宅してきた。
「お姉ちゃん! 私バイト行ってくるから、お店任せるね!」
「おう我が妹よ! 頑張って行ってきてくれ! 明日は私が撮影だから今日は私が留守番をしておこう!」
無駄にテンションの高い姉に留守番を任せ、私は住んでいるマンションから数分のところにあるコンビニに向かった。
コンビニに着き、飲み物とおにぎりを買った私は走ってコンビニから2分で着くバイト先に向かう。
コンビニ横の脇道を進んで行くと、大通りにでる。
大通りの交差点を渡り、渡った先にあるガソリンスタンドの横に建つハンバーガー店が私のバイト先だ。
「おはようございます!」
「鼎ちゃんおはよー! 準備できたらすぐにレジ入って!」
「らしいですよー」
……あれ? 店長さんが以外に、毎日よく聞いている声が……。
「──可憐さん!?」
「今日からよろしくお願いしますねー、鼎先輩」
レジの横から中に入り、裏へ行く途中の通路で可憐さんが制服を着ていた。そして、すれ違った。
私は驚いて立ち止まって振り返ると、可憐さんはいつもの笑顔でこちらをチラッと見てレジに向かっていく。
サラサラの髪の毛を縛り、黒い制服を着た可憐さんの姿はとても新鮮だった。
いつもの可憐さんはフリルの付いたワンピースや、聖女服が多い。
ゲームと現実の区別が少しつくようになったのかな?
「鼎ちゃーん! 早くお願い! お客様増えてきたー!」
「あっ! はーい!」
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