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売れ行きが伸びない日々

リリーミ・シュテンの助言

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「またお前か……金髪ガングロギャル幼女」
「名前長くて言いにくいねー? と、言うことでお久しぶりてーす!」
「あの……。思ったのですけど、リリーさんってここらに住んでいるんですか?」
「のー! 君達がここの大学から出てくるのを、この間たまたま見てねー! ディーライン内で有名になっていたから顔を覚えてて、まさかのゲーム内でリアルの顔を使っているとは思わなかったけどー!」

 またまた現れたリリーさんは、たまたま大学から固まって帰宅する私達の姿を見ていたらしい。
 それで私達に会うために、前回は大学内のファミレスで待っていたのだと教えてくれた。

「それで今回は何か?」
「助言……アドバイスに来た感じでーす!」
「アドバイス……ですか?」

 運営陣であるリリーさんが、今回私達に会いに来た理由はアドバイスだった。
 でもそんなことをして、上司に怒られたりしないのかな?
 ゲーム内での情報などを、ゲーム関係者がプレイヤーへ教えることは違約となると聞いたことがある。
 ゲーム関係者になる際に書かされる契約書には、「外部へのゲーム内容、機密の漏洩は契約違反とする」らしい……けれどミリーさんは、アドバイスにしろゲーム内でのお金稼ぎの方法を簡単にヒントとして教えると言う。
 契約違反にならないのか……一度負けた相手であっても心配になってきちゃった。

「まぁ、私は運営陣。でも、契約書を書かされていない特別関係者としてゲーム内を賑わせる為にいる隠れプレイヤーだから色々教えてあげるよー?」
「ではー、聞きたいことが多いんですけど先にアドバイスいいですかー?」
「はいよ! と、言っても意味が分かれば簡単なんだけどね? ……アドバイスは、周りとの関わり……以上!」

 周りとの関わり。
 それ以上は契約書を書いていない特別関係者であっても言えないのか、もしくはそれが以上言うことがないのか。
 それにしても、全く意味が分からない一言だったな……。
 
「意味はさっぱりだね!」
「私にも分からないな! アッハハハハ!」
「みんなウケるー! 考えて考え──あっ。電話だー! はーいリリーミでーす! はいはい、はいはい……はーい! と、言うことで会社戻りまーす! バイバーイ!」

 電話で呼び出されたのか私達に敬礼をビシッと決め、「ブーン」と言いながら飛行機の羽のように両手を伸ばしてリリーさんは帰って行った。
 その後ろ姿が見えなくなるまで私は目で追った。
 遠くから見ているだけならとても可愛い女の子にしか見えないけれど、喋ると少しお馬鹿に思ってしまうのって私だけかな。

「リリーさんって……喋るとお馬鹿なのかな? と、思ってしまうのですけど……」
「それ……みんな思っていると思う。僕も思うから……」
「てか、普通にバカだろあの金髪ガングロギャル幼女は」

 金髪ガングロギャル幼女……アグナさんの中では、もう見た目がそのままあだ名になっているようだった。

「アグナさんって、見た目そのままであだ名つける人ですか?」
「そのまま付けられるなら、そのまま付けないか? てか、現実ではアキラと呼んでいいぞリミアちゃん」
「あ、はい! アキラさん!」
「うっ……! 大声で突然叫ぶんじゃねー! 恥ずかしいだろう!」

 私が名前を少し大きめな声で呼ぶと、アグ……アキラさんは一瞬にして顔を真っ赤に染めて私の口を抑えてきた。
 その光景を、カチーシェさんとルルさんがスマホのカメラ機能で連射撮影をしている。
 姉は大爆笑、カイトさんはなぜか白目を向いてどこか遠くの世界へと行っている。可憐さんはトイレに行っている。

「それでみんなはどう考える感じだい? あの金髪幼女のアドバイスの意味が私には理解不能だ」
「僕分からない!」
「とりあえずルルは、一人称を僕か私かに統一して欲しい。私の可愛い彼女が馬鹿に思われるから」
「はいはいー。とりあえず2人も考えてくださいねー」

 リリーさんのアドバイスを聞いてからトイレに行った可憐さんが、戻ってくるなり笑顔でカチーシェさんとルルさんに考えるよう言った。
 それにしても、全く意味の分からないアドバイス。
 周りとの関わりと言われても、結構なプレイヤーの方々とか変わっているはずなんだけど……。
 みんな無言で考える。けれど誰一人として「こういう意味かな?」などの、もしかしたらの発想すらない。

 そして、貰ったアドバイスの意味が全く分からないまま午後一回目の授業が始まる5分前のチャイムが鳴ってしまった。

ーーーーー

「リリー君。また鼎に何か吹き込んだかね?」
「吹き込んだなんて言い方が少し不快ですよー? 私はアドバイスをしただけでーす!」
「君という女の子は……まぁいい。とりあえず、隠れプレイヤーとして鼎を見張ってくれ。モンスター制御システムの暴走を止めるわけにはいかない……だからこそ、あの子がゲームと体がシンクロしすぎていることで、ゲーム内の死が現実の体に支障をきたすことは避けたい」

「──他人となった娘でもですか?」

「あ……ぁ。そうだ……」
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