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ウロボロス討伐 ①
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『ゲーム内最強魔獣 第三位 ウロボロスボルフ』が、コロシアムの奥からゆっくりと姿を見せる。
もう既に歯と歯の間からよだれを垂らしているウロボロスボルフの頭上には、200の表記がある。
200はレベル……。私と199の差があるよ……あのウロボロスボルフ……。
「どう戦う!」
「とりあえず僕とカチーシェが盾になるから、後ろから回転斬りでも決めてー!」
「よしルル! トールの盾2枚でやろう!」
ブウォーン……ガキンガキン!
トール杯優勝者、準優勝者が獲得することができたらしいトールの盾。
その頃の私は、ゲーム機そのものを買うためにバイト探しをしてたんだっけ。
宙に現れた2つの魔法陣から、トールの盾がそれぞれ1枚ずつ出てきた。
カチーシェさんとルルさんの指示もなく、2枚のトールの盾は自らウロボロスボルフの前に横並びに立ちはだかる。
「グロロロロロロロ!」
「鳴き声が変わった……。やばい! 盾の真後ろに集まって身を落とせ! 三連獄炎放射だ!」
「それは本当にやばい技ですー!」
アグナさんの知識を信じ、みんなで2枚のトールの盾の後ろに固まって身をかがめると──
「何も起きないですよ?」
「トールの盾に触れてみろ!」
「えーと……こうですか? ──あつっ!」
サイレントスキルを持つウロボロスボルフの三連獄炎放射は、音が一切無く、油断して頭を上げれば瀕死になるほど危険な技だった。
放射が終わったのか、歯ぎしりの音が聞こえてくる。
本当に危なかったよ……。私、頭上げてたら即死でまた3時間の長歩きになるところだった。
みんな揃って盾の後ろから出ると、霧ちゃんが素早く剣を抜き、詠唱を唱えた。
「霧雨……。生生泗水の理の、神剣ならば我名によってその力を最上位階まで解放したまえ! 死炎の霧……。冷たき神聖なる世界へ」
課金アイテムランキング5位の霧雨の刀身から、ジワジワと浮き出てきた水滴が地面に落ちると、辺りは一瞬にして霧の世界へと化した。
友達が話してた最強の日本刀で課金アイテムランキング5位を、高校生の霧ちゃんが持ってるなんて……私が出会った人達って、みんな化物だったんだ。
「良くやった霧ちゃん! いでよ地獄の双剣! カルディエラ!」
「じゃあ……僕も戦うよ……。いでよ天使の鎌……ミカエラシス」
アグナさんの両手には、地面にから生えてきた黒い触手が持ってきた闇のオーラを放つ双剣が装備され、カイトさんには天使が天から運んできた光のオーラを放つ大鎌が装備された。
ウロボロスボルフを見ると、霧の効果で火属性攻撃を仕掛けられずに一歩後ろに退いている。
私が状況を理解できたのはここまで。
瞬きをしてもいないのに、気づいたらアグナさんとカイトさんは……ウロボロスボルフを斬っていた。
「グォオオオン!」
「アグナさんとカイトさん……いつの間に……。──うわぁっ!」
「身体能力値を強化魔法でカンストしただけだから驚くな。まぁ……動けないウロボロスボルフなんて俺とカイト2人で余裕なわけさ」
全然理解できなかったけど、多分凄いことをしたのは分かった。
気づけばもう横にはいないし、また気づけば横にいるし……やっぱりこの人達は凄い化物だったんだ。
「それにしてもアキラー! 終了ブザーが鳴らないよー?」
「ん? どうせ壊れてんだろ? ルルが直してこいよ」
「いやいや! それはルルの仕事じゃなくて私だから!」
コロシアムには戦闘続行不可能となると、必ず大きなブザーが鳴るらしい。
けれど、全くブザーの音は聞こえてこない。
……嫌な考えを思いついてしまった。
もし、ブザーが必ず戦闘続行不可能時に鳴るのなら……まだ戦闘は終わっていないのじゃないのかな。
「うーん。壊れてないねー!」
「はぁ? じゃあまじで何だって言うんだよ。今度は音響機器の不具合か?」
「私達が話せているのでー、それはないですねー」
アグナさんが倒れたウロボロスボルフの上に乗っているけれど、全くウロボロスボルフは立ち上がってこない。
でも全く鳴らないブザー。
原因が一切分からないまま、数分が過ぎていた。
「じゃあ、まぁ……。剥ぎますか!」
「賛成ー! ウロボロスボルフの毛皮使って毛布を作ってもらおうー!」
「それにしてもこのウロボロスボルフ……息を引き取っていないような気がするのですが……」
聖女の可憐さんが、ウロボロスボルフの首に手を当ててそう言った。
まだ息があるからブザーがならないんだー。
なんて呑気なことを考えていると、可憐さんが「およっ!?」と、謎の声を出した。
「皆さんごめんなさーい! 間違えて治癒魔法まで使ってしまいましたー」
「「「「「「何やってんの────!?」」」」」」
「グルルルル……。グォオオオオオオオオン!!」
可憐さんが誤って使用した治癒魔法でウロボロスボルフは元気になってしまった。
そして、また放射準備完了の合図……鳴き声が変わった。
「みんな隠れたか!?」
「……お姉さんいませーん!」
「リミアちゃんは!?」
私は逃げ遅れ、ウロボロスボルフの目の前に立ちはだかっている状態。
死ぬのは確定。それから復活後に3時間歩いてまたコロシアムへ。
ならいっそ、死ぬ前にレベル1なりにやってみようと思う。
「ウロボロスボルフ! 掛かって来なさい! ポーション効果起動! 長時間回復……長時間高回復!」
放射が私に当たると同時に、使用した持続型回復ポーションが私を包んでくれた。
このまま放射が止むまで、私は回復しながら耐えてみせる!
もう既に歯と歯の間からよだれを垂らしているウロボロスボルフの頭上には、200の表記がある。
200はレベル……。私と199の差があるよ……あのウロボロスボルフ……。
「どう戦う!」
「とりあえず僕とカチーシェが盾になるから、後ろから回転斬りでも決めてー!」
「よしルル! トールの盾2枚でやろう!」
ブウォーン……ガキンガキン!
トール杯優勝者、準優勝者が獲得することができたらしいトールの盾。
その頃の私は、ゲーム機そのものを買うためにバイト探しをしてたんだっけ。
宙に現れた2つの魔法陣から、トールの盾がそれぞれ1枚ずつ出てきた。
カチーシェさんとルルさんの指示もなく、2枚のトールの盾は自らウロボロスボルフの前に横並びに立ちはだかる。
「グロロロロロロロ!」
「鳴き声が変わった……。やばい! 盾の真後ろに集まって身を落とせ! 三連獄炎放射だ!」
「それは本当にやばい技ですー!」
アグナさんの知識を信じ、みんなで2枚のトールの盾の後ろに固まって身をかがめると──
「何も起きないですよ?」
「トールの盾に触れてみろ!」
「えーと……こうですか? ──あつっ!」
サイレントスキルを持つウロボロスボルフの三連獄炎放射は、音が一切無く、油断して頭を上げれば瀕死になるほど危険な技だった。
放射が終わったのか、歯ぎしりの音が聞こえてくる。
本当に危なかったよ……。私、頭上げてたら即死でまた3時間の長歩きになるところだった。
みんな揃って盾の後ろから出ると、霧ちゃんが素早く剣を抜き、詠唱を唱えた。
「霧雨……。生生泗水の理の、神剣ならば我名によってその力を最上位階まで解放したまえ! 死炎の霧……。冷たき神聖なる世界へ」
課金アイテムランキング5位の霧雨の刀身から、ジワジワと浮き出てきた水滴が地面に落ちると、辺りは一瞬にして霧の世界へと化した。
友達が話してた最強の日本刀で課金アイテムランキング5位を、高校生の霧ちゃんが持ってるなんて……私が出会った人達って、みんな化物だったんだ。
「良くやった霧ちゃん! いでよ地獄の双剣! カルディエラ!」
「じゃあ……僕も戦うよ……。いでよ天使の鎌……ミカエラシス」
アグナさんの両手には、地面にから生えてきた黒い触手が持ってきた闇のオーラを放つ双剣が装備され、カイトさんには天使が天から運んできた光のオーラを放つ大鎌が装備された。
ウロボロスボルフを見ると、霧の効果で火属性攻撃を仕掛けられずに一歩後ろに退いている。
私が状況を理解できたのはここまで。
瞬きをしてもいないのに、気づいたらアグナさんとカイトさんは……ウロボロスボルフを斬っていた。
「グォオオオン!」
「アグナさんとカイトさん……いつの間に……。──うわぁっ!」
「身体能力値を強化魔法でカンストしただけだから驚くな。まぁ……動けないウロボロスボルフなんて俺とカイト2人で余裕なわけさ」
全然理解できなかったけど、多分凄いことをしたのは分かった。
気づけばもう横にはいないし、また気づけば横にいるし……やっぱりこの人達は凄い化物だったんだ。
「それにしてもアキラー! 終了ブザーが鳴らないよー?」
「ん? どうせ壊れてんだろ? ルルが直してこいよ」
「いやいや! それはルルの仕事じゃなくて私だから!」
コロシアムには戦闘続行不可能となると、必ず大きなブザーが鳴るらしい。
けれど、全くブザーの音は聞こえてこない。
……嫌な考えを思いついてしまった。
もし、ブザーが必ず戦闘続行不可能時に鳴るのなら……まだ戦闘は終わっていないのじゃないのかな。
「うーん。壊れてないねー!」
「はぁ? じゃあまじで何だって言うんだよ。今度は音響機器の不具合か?」
「私達が話せているのでー、それはないですねー」
アグナさんが倒れたウロボロスボルフの上に乗っているけれど、全くウロボロスボルフは立ち上がってこない。
でも全く鳴らないブザー。
原因が一切分からないまま、数分が過ぎていた。
「じゃあ、まぁ……。剥ぎますか!」
「賛成ー! ウロボロスボルフの毛皮使って毛布を作ってもらおうー!」
「それにしてもこのウロボロスボルフ……息を引き取っていないような気がするのですが……」
聖女の可憐さんが、ウロボロスボルフの首に手を当ててそう言った。
まだ息があるからブザーがならないんだー。
なんて呑気なことを考えていると、可憐さんが「およっ!?」と、謎の声を出した。
「皆さんごめんなさーい! 間違えて治癒魔法まで使ってしまいましたー」
「「「「「「何やってんの────!?」」」」」」
「グルルルル……。グォオオオオオオオオン!!」
可憐さんが誤って使用した治癒魔法でウロボロスボルフは元気になってしまった。
そして、また放射準備完了の合図……鳴き声が変わった。
「みんな隠れたか!?」
「……お姉さんいませーん!」
「リミアちゃんは!?」
私は逃げ遅れ、ウロボロスボルフの目の前に立ちはだかっている状態。
死ぬのは確定。それから復活後に3時間歩いてまたコロシアムへ。
ならいっそ、死ぬ前にレベル1なりにやってみようと思う。
「ウロボロスボルフ! 掛かって来なさい! ポーション効果起動! 長時間回復……長時間高回復!」
放射が私に当たると同時に、使用した持続型回復ポーションが私を包んでくれた。
このまま放射が止むまで、私は回復しながら耐えてみせる!
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