VRMMOの世界で薬屋を開いたレベル1の薬師

永遠ノ宮

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ここからが本気の営業

本当の緊急クエスト

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 運営に見放されているとカイトさんが呟く。
 
「運営が見放している。配布アイテムやアップデートはやっているけれど、モンスターは放置か」
「と! とりあえずみんなで倒しましょう!」

 とは言ったものの、モンスターの数が多すぎてどうしたらいいかなんて分からない。
 とりあえず私は、後方からポーションを投げることしかできない。
 モンスターの数は数百体を超え、群れを成して街の建物もろとも破壊しながら進行してきている。
 まず誰かが止めないといけない。

「よーし! カチーシェ! 僕達で止めよう!」
「ほいよ! あの盾技決めよう!」
「よーし! ……あれれ!? 盾を忘れたから店内の空間アイテム倉庫から取ってくるから待ってて!」
「ルルー!? それさすがに無理ー!」

 ルルさんが店内へとスキップで呑気に戻っていく。
 カチーシェだけではあの群れの数はさすがに……そうだ、私のポーションの毒で足を止めればいいんだ。
 毒ステータスマックスなら、毒系ポーションは全て最強のはず。
 
「私に任せてください! ……ポーション効果起動! 毒にもがきなさい! 毒の雨ポイズンレイン!」
「やったれ薬師ちゃん!」
「最強薬師のレベル1いけー!」

 駆けつけてきた他のプレイヤーの方々に応援され、ポーションのコルクを抜いてモンスターの群れに投げつけた。
 瓶が割れ、紫色の霧がモクモクと空に向かって上がっていくとその部分のみに雨が降る。
 すると、霧の向こうからモンスターが一向に現れない。

「もしかして……やったとか?」
「いや……それはねーだろ。俺が様子を見てくる」
「僕も行くよアキラお兄さん」

 アグナさんとカイトさんが、ゆっくりと毒霧に近づいていく。
 私は毒消しのポーションを後方から投げて霧を消しておく。
 すると、やはり予想通りモンスターは倒れていた。

「まじか……。ここまで毒ステータスマックスが強いなんてな」
「それについては僕も同感だよ……これは最強だね。でもまだみたい」

 カイトさんがアグナさんを連れて戻ってくると、またモンスターの鳴き声が響いてくる。
 さっきが地なら、次は空だと何となく本能で分かった。
 そして、結局空からモンスターの群れが押し寄せてくる。
 モンスターが多すぎて、もうどれも同じ種類に見えてきてしまった。
 こんなに大量のモンスターを一回で目にしたことがないから口が閉まらなくなったよ……。

「お待たせー! 武器多すぎて大変で……ってこれ誰がしたの?」
「リミアちゃんがポーションで倒したんだよー? すごいよねー!」
「まじで!? すごいすごい! なら……あれもやってしまおう!」

 店内から戻って来たルルさんが指した方向を見ると、そこに居たのは大きな蜘蛛だった。
 私……蜘蛛は苦手だから無理ですルルさん。
 なんて言えるわけはなく、嫌々で「行ってきます……」と、言ってしまった。

「可憐さーん。連れて行ってもらってもいいですか?」
「いいよー? だけど、聖女は蜘蛛に触れると死ぬ体質があるから遠いところから投げるね?」
「いえ、真上に連れて行ってくれれば燃やしますので。私を餌にしないでください……」

 危なかった……可憐さんに蜘蛛の餌にされてしまうところだった。
 ちなみに、大きな蜘蛛はスパイダーダークと言うらしい。
 このゲームのモンスターは名前が表示されないから覚えるのに苦労してしまう。
 ゲームを始めて4日か5日が経っているのに、覚えたモンスターはたったの3体だけ。
 攻略本でも買わないとダメかな……。

「ここで止めてください!」
「はーい! じゃあ早く終わらしてねー」
「ポーション効果起動! 燃えなさい……炎炎炎トリプルファイアー!」
「じゃあ撤退しまーす!」

 スパイダーダークはしっかりと燃やしたので、お店の前に戻ると、とても楽しそうだった。
 空から降りてきた無数のモンスターが嘴で、走り回る2、30人のプレイヤーをモグラ叩きのように突こうとしている。

「楽しそうですね!」
「うーん……後は任せても問題なさそうだから店内でポーションでも作っておこうよリミアちゃーん」
「そうしましょう!」

 モンスターとモグラ叩きを楽しむプレイヤー方を背にし、店内へと何も無かったかのように私と可憐さんは戻った。

 
 数時間すると、カチーシェさん達が帰ってきた。
 モンスターの叫び声や、大きな足音が聞こえてこないことから、全て倒したんだと分かる。
 遊びながら倒して、レベルが付いてきてくれる。
 いいゲームだけど、私のレベルを先に下さい……。

「よーし! 業務再開!」
「客寄せするね! みなさーん! 営業再開ですよー!」

 ルルさんが呼びかけをすると、すぐにお客様が集団で入店してきてくれる。
 店内はいつものように賑わい……でもよく見ると常連さんのみ。
 私、新規のお客様がいないことに気づいてしまった。
 ──これは多分……色々とまずい。

「カイトさん! ゲーム内ネットワークでのホームページ開設と、電子掲示板での呼び込みを!」
「見たところ、お馴染みの顔ばっかりなんだろうなって……一目で分かったから、もうしておいたよ?」

 私が言うまでもなく、カイトさんがとっくに行動をしてくれていた。
 ゲーム内ネットワークで人目に止れば新規のお客様が増えることは間違い無し。


 ……今日でポーション2000瓶作ってるから、また貧血が。
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