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大量買いの商人
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「よーし! みんな集まったね」
「じゃあ俺は、取り寄せてもらってある素材を取りに行ってくる」
「ありがとうございます! アグナさん!」
開業2日目。
生成作業に慣れた私は、裏で素早く粉薬とポーションを作っていく。
ノルマは500瓶分の回復ポーションを小中大で作ることと、NPCからも稼ぐことができることから風邪などの粉薬も作っていく。
「じゃあ……私は大怪我を負った冒険者さんからお金貰いながら治癒してまーす!」
「私はその他の売り物を発注して並べるね!」
みんなで始めた薬屋【ドラッグ一番屋】は、営業前の準備で大忙し。
準備が終わって、営業をしてしまえば忙しさは減るけれど……営業よりも準備が大事な今。
そんな中、一人だけ理由を付けて消えていった可憐さんみたいな人もいる。
ちなみに、金銭管理はカチーシェさんで私はお店の代表者となっている。
私が中回復ポーションを200個作り終えた頃、カランカラン……とお店の扉を開けて人が入ってくる。
「すいませんねお客さん! まだ準備中なもので! 急用出ない限りは提供できないんですけど……」
「いやいや。べつにそんなことはない。ただ、ここのお店の薬とポーションを全て買い取りたい」
お客さんだと思った人は、NPCの小児茹でではなく、プレイヤーの自由アルバイトでやっているのだろう商人だった。
プレイヤーは、必ず全員が頭上にプレイヤーネームが載る。
そして、突然入ってきた商人にもプレイヤーネームが載っていることで気づけた。
「プレイヤーね。それで……なんで全部欲しいわけかな?」
「転売することが目的と言えば分かるか?」
転売と言うと、ここで購入した金額よりも高値で売りつけることだから……運営のパトロールに見つかればアカウントをBANされる。
BANはアカウントを飛ばされる、消される。
注意事項に載っていたはずだけど、読んでないんだこの人。
「えーと。悪いんだけど……それは自由アルバイトのシステムを使ってなったサブ職業の商人かもなんだけどね? 注意事項に転売とかはいけないって──」
「それはパトロールにバレなければいいと言っているのと同じでは?」
「そいつの言う通りでバレなきゃいい」
素材が沢山入った大きな木箱を抱えて入ってきた。
確かに、アグナさんと商人の言うようにバレなければいいのは否定できないけど……。
それでも、注意事項とかには載っていない、もっと大事な何かがあると思う。
それに気づかないで、自分の勝手をできる人がこの商人。
「だがなー商人。お前の売り物は自由だが、こっちの売り物はこっちの自由。売るか決めるのはみんなの同意の上での話ってことと……。俺らが売っているのは、他のプレイヤーが必要とする物で、NPCが必要とする物だから転売には売れねーな」
「だからそれを、私が広めてあげようとだな──」
「こっちはギリギリの安値でやってるわけだ。お前みたいに、ここで安く買って他で高く売りつけるやつとは違う。オーケー?」
私達が始めた薬屋は、みんなに優しいようにギリギリの値段で提供している。
素材費はみんなでお金を合わせて沢山の素材屋から取り寄せているからこそ、一人の負担が少なく済んでいるだけ。
薬師だから、手の平からいくらでもポイポイとポーションや粉薬を生み出せると思っていたけどそれは違った。
一から煎じたり、粉に砕いたり。
ただ、【ディーヴェルクオンライン】内では唯一の生成スキルを持つのが薬師と言うだけ。
──レベルが上がれば、また話は変わるのだけど……。
「なるほど……。つまり君たちは、ゲーム内唯一の薬師と、こんなお金にならないビジネスしているわけだ」
「今のは聞捨てならないですね。聖女の私が出る幕かどうか悩みましたが……今のはリミアちゃんへの侮辱です」
「可憐さん、私は大丈夫で──」
「ここは可憐さんの言うことが正しいよリミアちゃん」
外でボランティア治療を行っていた可憐さんが、外から聞いていたのか店内に勢い良く入って来た。
商人を見るなり、指を勢い良く胸に突き当てて鬼の形相で怒りを見せている。
このお店のコンセプト、「みんなに優しく」をバカにされたことに激怒しているように見える。
少し抜けていて、可愛い可憐さんの面影が消えていて、みんな驚いている。
「あんたに売る物はない! 自分で人を癒せることができるようになってから薬を扱いなさい! 何も人を癒やすことができない、ただの商人はここから出て行け! 人が、人に助けてもらって、それで協力して建てて、営業している店に足を入れるな!」
「お前、聖女だからって調子乗ってるだろ? そこまで言うなら勝負で決めようぜ? 俺が勝てば全てタダでいただく。お前が勝てばもう来ない。どうだ?」
「受けて立つわ! 負けは確定しているのだから、負けても泣くんじゃないわよ!?」
売られた喧嘩を買った可憐さんと喧嘩を売った商人は、街の中央通りで向き合ってアグナさんの戦闘開始の合図を構えて待っている。
私には、可憐さんが戦闘に強いようには見えない。
けれど、戦闘前にアグナさんは、私の肩をポンポンッと叩いてこっそり教えてくれたことがある。
──アイツは精霊の魔導書を持っている。だから……勝つさ。
精霊の魔導書を知らない私は、「?」だけが残っているけど、カチーシェさんとルルさんは理解しているように見える。
この二人がワクワクするほどの武器アイテムと言うこと──凄い武器アイテムなんだと分かる。
「それでは……ようい。──はじめ!」
アグナさんが手を振り下ろすと、最初に地面を蹴って宙を飛んだのは──可憐さんだった。
「じゃあ俺は、取り寄せてもらってある素材を取りに行ってくる」
「ありがとうございます! アグナさん!」
開業2日目。
生成作業に慣れた私は、裏で素早く粉薬とポーションを作っていく。
ノルマは500瓶分の回復ポーションを小中大で作ることと、NPCからも稼ぐことができることから風邪などの粉薬も作っていく。
「じゃあ……私は大怪我を負った冒険者さんからお金貰いながら治癒してまーす!」
「私はその他の売り物を発注して並べるね!」
みんなで始めた薬屋【ドラッグ一番屋】は、営業前の準備で大忙し。
準備が終わって、営業をしてしまえば忙しさは減るけれど……営業よりも準備が大事な今。
そんな中、一人だけ理由を付けて消えていった可憐さんみたいな人もいる。
ちなみに、金銭管理はカチーシェさんで私はお店の代表者となっている。
私が中回復ポーションを200個作り終えた頃、カランカラン……とお店の扉を開けて人が入ってくる。
「すいませんねお客さん! まだ準備中なもので! 急用出ない限りは提供できないんですけど……」
「いやいや。べつにそんなことはない。ただ、ここのお店の薬とポーションを全て買い取りたい」
お客さんだと思った人は、NPCの小児茹でではなく、プレイヤーの自由アルバイトでやっているのだろう商人だった。
プレイヤーは、必ず全員が頭上にプレイヤーネームが載る。
そして、突然入ってきた商人にもプレイヤーネームが載っていることで気づけた。
「プレイヤーね。それで……なんで全部欲しいわけかな?」
「転売することが目的と言えば分かるか?」
転売と言うと、ここで購入した金額よりも高値で売りつけることだから……運営のパトロールに見つかればアカウントをBANされる。
BANはアカウントを飛ばされる、消される。
注意事項に載っていたはずだけど、読んでないんだこの人。
「えーと。悪いんだけど……それは自由アルバイトのシステムを使ってなったサブ職業の商人かもなんだけどね? 注意事項に転売とかはいけないって──」
「それはパトロールにバレなければいいと言っているのと同じでは?」
「そいつの言う通りでバレなきゃいい」
素材が沢山入った大きな木箱を抱えて入ってきた。
確かに、アグナさんと商人の言うようにバレなければいいのは否定できないけど……。
それでも、注意事項とかには載っていない、もっと大事な何かがあると思う。
それに気づかないで、自分の勝手をできる人がこの商人。
「だがなー商人。お前の売り物は自由だが、こっちの売り物はこっちの自由。売るか決めるのはみんなの同意の上での話ってことと……。俺らが売っているのは、他のプレイヤーが必要とする物で、NPCが必要とする物だから転売には売れねーな」
「だからそれを、私が広めてあげようとだな──」
「こっちはギリギリの安値でやってるわけだ。お前みたいに、ここで安く買って他で高く売りつけるやつとは違う。オーケー?」
私達が始めた薬屋は、みんなに優しいようにギリギリの値段で提供している。
素材費はみんなでお金を合わせて沢山の素材屋から取り寄せているからこそ、一人の負担が少なく済んでいるだけ。
薬師だから、手の平からいくらでもポイポイとポーションや粉薬を生み出せると思っていたけどそれは違った。
一から煎じたり、粉に砕いたり。
ただ、【ディーヴェルクオンライン】内では唯一の生成スキルを持つのが薬師と言うだけ。
──レベルが上がれば、また話は変わるのだけど……。
「なるほど……。つまり君たちは、ゲーム内唯一の薬師と、こんなお金にならないビジネスしているわけだ」
「今のは聞捨てならないですね。聖女の私が出る幕かどうか悩みましたが……今のはリミアちゃんへの侮辱です」
「可憐さん、私は大丈夫で──」
「ここは可憐さんの言うことが正しいよリミアちゃん」
外でボランティア治療を行っていた可憐さんが、外から聞いていたのか店内に勢い良く入って来た。
商人を見るなり、指を勢い良く胸に突き当てて鬼の形相で怒りを見せている。
このお店のコンセプト、「みんなに優しく」をバカにされたことに激怒しているように見える。
少し抜けていて、可愛い可憐さんの面影が消えていて、みんな驚いている。
「あんたに売る物はない! 自分で人を癒せることができるようになってから薬を扱いなさい! 何も人を癒やすことができない、ただの商人はここから出て行け! 人が、人に助けてもらって、それで協力して建てて、営業している店に足を入れるな!」
「お前、聖女だからって調子乗ってるだろ? そこまで言うなら勝負で決めようぜ? 俺が勝てば全てタダでいただく。お前が勝てばもう来ない。どうだ?」
「受けて立つわ! 負けは確定しているのだから、負けても泣くんじゃないわよ!?」
売られた喧嘩を買った可憐さんと喧嘩を売った商人は、街の中央通りで向き合ってアグナさんの戦闘開始の合図を構えて待っている。
私には、可憐さんが戦闘に強いようには見えない。
けれど、戦闘前にアグナさんは、私の肩をポンポンッと叩いてこっそり教えてくれたことがある。
──アイツは精霊の魔導書を持っている。だから……勝つさ。
精霊の魔導書を知らない私は、「?」だけが残っているけど、カチーシェさんとルルさんは理解しているように見える。
この二人がワクワクするほどの武器アイテムと言うこと──凄い武器アイテムなんだと分かる。
「それでは……ようい。──はじめ!」
アグナさんが手を振り下ろすと、最初に地面を蹴って宙を飛んだのは──可憐さんだった。
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