VRMMOの世界で薬屋を開いたレベル1の薬師

カチーシェとルル

「リミアちゃーん！　待った？」
「いえ！　全然です！」
「「ゲーム内そっくりだな……」」

　大学内で、今回は今後の【ディーベルクオンライン】での活動の話をすることに。
　昨日はポーションを一投げしただけで……有名になって忙しくて──ゲーム内で貧血起こしたんだっけ。
　ポーション一投げで、ワイバーン5体を消し去った私の元に、お礼の品や、薬にポーションを生成して欲しいと開業前のお店に来ていた。

「けど……なんで緊急をメールでくれなかったんだろうな」
「だよね。アップデートはやっぱり無かったし」
「不具合で……仕方なくシステム変更でしょうか？」

　緊急クエストの件で、まだ何か引っかかっている様子のカチーシェさん。
　本当にゲーム内同様で高身長で綺麗なボーイッシュな人。
　ルルーさんはまんま小さい。
　けど、大学内では有名人だから凄いよね。

「とりあえず今後だよね？」
「なんとか、貧血ギリギリでポーションは数分、薬も数分できてます」
「なら売り娘は二人に！　僕は呼び込みだね！」
「客引きは罪だよー？　ルル捕まるね！」

　実際、二人の名前を聞いていないけれど、現実でもゲーム内同様の名前で呼んでいる……つまり本名。
　二人ともハーフに見えるから多分合っている。

「じゃあ帰ったら、まずはお店の開業といこう！」
「「お──！」」

　それでまたゲーム内で集合した。
　お店に入り、準備中を営業中に変えて裏に戻る。
　とりあえず、一日で100人の人が来ても対応できるだけの量は確保している。
　
「──すいません」
「いらっしゃーい！　何かお探しで？」
「いえいえ！　バイトというか……お手伝いしたくきた可憐と言います！」
「「……感激！」」

　カチーシェさんとルルさんは、感激しすぎたのか口から出てしまっていた。
　可憐さんは見たところ──

「聖女さん！？」
「治癒の加護で世界一になった可憐でーす！」

　最強の聖女さんが来てしまった。
　その後、即採用となった可憐さんは切磋琢磨、掃除などをしてくれて申し訳なく、謝れないまま次の日になってました。

「リミアちゃーん！　おーい！」
「あ！　ルルさんとカチーシェさん！」
「ルルさんとカチーシェさん！　やほー！」
「「「……まんま可憐さんいる！」」」

　ゲーム内でもやっぱりまんま同じ容姿にしていた可憐さんは、私の横に座ってカレーを5人前平らげていた。
　影が薄すぎて、横にいるのに20分近く気づかなかった私が悪いのか影が薄すい可憐さんが悪いのか……。
　可憐さんにはツッコミたいことが3つあので、ツッコませてもらった。

「なぜ猫耳？」
「ゲーム内と同じです！」
「なぜ聖女の制服をここで？」
「好きだから……買ってしまったので着てます！」
「どうして……5人前？」
「大食いの称号はゲームでも現実でも変わりません！」

　分かったことは一つだけ。
　この人は、ゲームと現実世界が全く同じ空間になってしまっていることが原因で、常に【ディーヴェルクオンライン】と連動してしまっている不思議さんでした。

「面白くてやばいね！　アッハハハハ！」
「痛い痛い！　お腹痛いよ！　キャハハハハハ！」
「そういえば……昨日言っていた固定スキルの件を調べましたよ！」
「どうでした！？　何か分かって──」

「さっぱりでした！」

　……。
　…………。
　分かってはいた結果だったけど……ハッキリと言われると少し心が痛いのはちゃんと人間だからだと思う。
　それに比べて、この人は多分人間ではない。
　──バカそのものの塊。

「あー！　マジ腹痛い！　アハハハハハ！」
「さっぱりでした……ブブォッ！　キャハハハハハ！　だめー！　本当に面白くてやばい！」
「何ケラケラ笑いまくってんだよ。……お前ってリミア言う薬師か？」

　まるでゲーム内の様に声を掛けてきた爽やか先輩。
　ゲーム内でもこの姿をコピーして使っている……いや、設定させてもらえずそのままだから見たら分かるものなんだ。

「リミアですが……どちら様ですか？」
「コイツらによく素材集めのパシリにされてる聖騎士のアグナ。本名はアキラ」
「よろしくお願いします！　リミアです！　本名は──」
「そういえば私達もまだ聞いていなかったよね？」

　本名を一人だけ名乗っていないのはいけない。
　咄嗟に思ったことだけど、みんな案外……本名つけてるよね。

「本名は鼎です」
「よろしくね鼎。それで……今日は店開ける？」
「開けます開けます！」
「なら手伝うよ。今日は素材クエストがない日だからね！　生成シーンも録画しておきたいしね」

　ゲーム内世界でたった一枠の奇跡の職業　薬師。
　昨日はどこかのグラビアアイドルみたいに、あらゆる角度から連射で写真と、何本もの動画取らされて……また貧血だったんだ。