無気力令息は安らかに眠りたい

餅粉

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2.両親

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私は自分の顔が嫌いだ。この男か女かもわからない顔が嫌いだ。


「シエル様もうすぐ夕飯の時間ですので一」

ふふん,うまいうまい,モグモグ。
もう一つ食べようとマカロンに手を伸ばしたがザックに止められた。

「マカロン没収です」

あぁマカロン……まだ八つしか食べていないのに。私はザックを睨みつけた。

「夕飯入らなくなりますよ」

「そうか」

もうそんな時間になったのか。私は読んでいた本を閉じそこら辺に置いて食卓へ向かう。食事なんざ一人で食べれば良いことを何故集まって食べなくてはならないのだ?

「はー面倒だ」

食卓に着くと顔の整った男女がすでに座っていた。

「「シエル」」

いきなり二人が立ち上がり私の方へ駆けつける。そして一

「あぁ,シエル」スリスリ「シエル」撫で撫で

今私にスリスリ,撫で撫でをしてくるこの男女が今の私の両親だ。シエルになってから一週間,飯の時間になるとからなずこのスリスリと撫で撫でをしてくる。抵抗することも出来たのだが不快だと思わなかった。だから抵抗はしない。

「まったく第三皇子は何を考えているのだ,こんなにも可愛いうちのシエルと婚約出来たというのに破棄するとは」

「同感ですわ!こんなにも愛らしいのに」

可愛いだの愛らしいだの私のどこを見てそう思うのか不思議だ。それにしてもこのスリスリと撫で撫ではいつになったら終わるんだ,そろそろ食卓のステーキを食べたい。

スリスリ撫で撫で

「「シエル~」」

はぁー

「旦那様,奥様。スリスリ撫で撫でをその辺にして早く召し上がってください。覚めますよ」

ザックの言葉を聞いて渋々私を離して席についた。流石は私の世話係兼護衛係,有能だ。さて私は今目の前にあるステーキに集中するとしよう。

ナイフとフォークを手に取りステーキをば一口サイズに切り口に運んだ。

「……うまい……」

以前の私なら肉を目にするだけで吐き気がしたが…

「はむっ」

今ではまったくその症状がない。
私がステーキに夢中になっていると父らしき人が私に話しかけた。

「シエル,世の中第三皇子より素敵な人は沢山いる。気に病むでない」

第三皇子……?あぁこのシエルの初恋相手か。私は口に入っていたステーキを飲み込み話す。

「親父,お袋安心しろ。私はあんな奴を気にするほど心は広くない」

気にしていないと話すと二人は目を見開いていた。

「おや…じ?」

「お,ふくろ…ですって?!」

なんだ急に空気が冷たく……

「久々にうまい以外の言葉が聞けると思ったのに親父,お袋って……シエル!せめてお母様いえ,ママとお呼び!」

ママ?

「リリアナがママなら私はパパと呼んでくれるのかな?」

パパ?

まぁ,二人がそう呼んで欲しいのなら

「わかった。パパ,ママ」

私がそう呼ぶと二人はニヤニヤしていた。そして二人は立ち上がり私の方へと近寄ってくる。

「「シエル~」」

スリスリ撫で撫で

また始まった。
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