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第十四章 花火

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 新幹線の窓から見える景色に、徐々に建物が増えていく。
 久しぶりに降り立った東京駅のホーム。
 空気に人工的な色んな匂いが混じっていて、キカくんたちの住む東北とは全然違う重苦しさが鼻をつく。だけど、どこか懐かしさを感じる。
 これは、あたしが小さい頃から知っている、大切な思い出の空気だ。なんとなく、ほんの数週間離れただけなのに、とても懐かしく感じる。
 胸いっぱいに吸い込むのは……うん、それだけはやめておこう。

「なにやってるんだ? ミナ。ママとトキが迎えにきてるって。行こう」
「うんっ!」

 ここが、今のあたしの居場所。
 帰ったら、夏休みの宿題の残りが持っている。
 そして、今度はあたしが洋さんに読んでもらいたい物語を書くんだ。
 高鳴る胸に、スキップをするみたいに足取りも軽く歩き出す。ママとトキの待っている姿を、遠目に見つけた。手を振ると、笑顔で振り返してくれるママとトキに、なんだか涙が込み上げてきた。

「ただいま! ママ! トキ!」
「おかえりなさい」
「ねぇね!」

 久しぶりに抱きしめたママからはトキの匂いが混じっていて、とっても安心した。

 
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