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第十四章 花火
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予定よりも一週間早く、あたしは東京に帰ることにした。
たくさん遊んだし、たくさん思い出も出来たし、仲間だと胸を張って言える友達も出来た。
もう、大丈夫。
荷物を詰めたキャリーバックを家の中から引いて出てくると、外にはみんなが揃って見送りの為に集まってくれていた。
「アーオーイー、もう行くってよ?」
ハヅキくんが、なぜかあたしに背を向けているアオイくんの肩を掴んで、振り向かせた。アオイくんの顔は涙でビシャビシャになっているから驚いた。
「はははは! 泣きすぎだろー!」
「だって、だって、明日からもうミナちゃんに会えなくなるんだよ!? そんなの悲しすぎるだろー」
「別にまた会えるだろうが」
「いつ!? 次いつ来るんだよ? 明日? 明後日?」
「うーざーっ」
ハヅキくんは縋り付いて泣くアオイくんに、呆れたようにため息を吐き出した。
あたしはショルダーバッグに付けていたお猿のキーホルダーを外して、アオイくんに「はい」っと差し出した。
「この子、アオイくんに預けておくね。今度会う時まで、大事にしててね」
ピタリと泣き止んだアオイくんは、グスッと鼻を啜ってから、あたしに近づいてきてキーホルダーを受け取ってくれた。
「うん! 一生大事にするから!!」
真剣な目でそう言うから、その場にいたみんながアオイくんに注目した。
パパはなぜか車に積み込んでいた荷物を手元から落っことしてしまうし、何をやっているんだろうと思っていると、珠恵さんがそれを見て大きな声で笑い出した。
「アオイくん最高だわ! プロポーズかと思ったわよ」
あっはっはと笑う珠恵さんの隣では、パパが顔面蒼白だ。
「その猿を、大事にするってことだよね? そうだよね? アオイくん?」
「え? あ、はい。ミナちゃんのキーホルダーだから、一生一緒にいます!」
「……うーん」
アオイくんの真剣な答えに、パパはなんだか困惑しているような顔をしつつ、笑っている。
車に乗り込み、窓を全開にしてみんなの顔を順番に見た。
「君の物語を楽しみにしているよ」
最後に、洋さんが微笑んでくれる。
「はい! また来ます」
この美味しい空気ともしばしのお別れだ。
「また絶対来いよ!」
「うん」
「うちはいつでも歓迎だからね」
駅まではキカくんと珠恵さんが見送ってくれた。新幹線のホームまで来てくれて、窓越しに手を振る。
別れは辛い。だけど、また会いに来ればいい。会わない間だって、友達には変わりないんだから。
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