今、この瞬間を走りゆく

佐々森りろ

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第十一章 夢物語

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 笑い合う三人はすごく楽しそうだ。元々はそこには三人しかいなかったんだ。あたしは急に現れた、ただの学校をサボって夏休みを田舎で過ごして気分転換をしに来ただけの、本来なら知り合うこともなかった他人だ。

 これから先もみんなと居たいだなんて、三人の仲間に入れたことがあまりに居心地がよかったから、勘違いしてしまっただけだ。
 未来にあたしもいるなんて、そんなことはありえない。

 だって、夏休みが終わればあたしは東京に帰るんだ。
 永遠に、ここにいられるわけじゃないんだ。

 そうだよ。ちゃんと冷静になって考えてみたら、未来なんて簡単に分かってしまうじゃないか。
 確かめになんていかなくたって、もう、決まっている。
 これ以上みんなと仲良くしていたら、帰る時が寂しくなるだけだ。

「ミナちゃん? なんか、今日は元気ない?」

 アオイくんが遠慮がちに、そばにきて聞いてくれる。

「アオイの成績表でも見せたら元気出るんじゃね?」

 ケラケラとハヅキくんが笑うと、アオイくんが怒ってしまう。

「先生からの一言、もっと落ち着いて行動しましょうって書いてあったよね」
「落ち着いてるって!」
「アオイはなんか見つけるとすぐにどっか飛んでっちゃうからなぁ。先生も目が離せないんだよ。高学年なんだし落ち着こうねー、アオイくん」
「えー、でもさ、五年間落ち着きましょうって書かれ続けるって逆に凄くね? もはや特技じゃねぇ?」
「え? 特技、落ち着きがない。めっちゃカッコわる! おもしろすぎだろそれ!」

 ぎゃはははと笑い転げる二人に、真っ赤な顔で怒っているアオイくんを見て、なんだかあたしまでつられておかしくなってきてしまった。思わずクスリと笑うと、アオイくんが一瞬眉を下げるから、口元をとっさに隠した。

「ミナちゃんが元気になって笑ってくれるなら、ま、いっか!」

 そう言って、アオイくんまで笑い出すから、驚いた。
 やっぱり、あたし、こうやってみんなと笑い合っていたい。みんなを危険な目に合わせたりしたくない。自分だけ良い子でいようなんて、そんなことは出来ない。
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