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第六章 ハヅキくんの反抗期
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持ってきた大皿を置いてテーブルの端っこの空いている空間に座ると、すぐにキカくんがご飯茶碗を持ったまま隣に座った。
「今日高見公園行けなくて悪かった。明日絶対行くからな」
「あ、うん」
「キカー、これミナちゃんにやって」
「あー、はいはい。俺にもとって! パプリカ無しのやつ」
「ちゃんとパプリカも食べなよ美味しいのに」
珠恵さんのぶつぶつと呟く小言も聞かずに、キカくんはあらかじめパプリカには入れていないハンバーグのような肉だねを焼いたものが乗った皿を受け取って、満足げに食べている。
さっき、パプリカがまだ残ってあるのに、詰めずに丸めていたのは、この為だったのかと、珠恵さんのキカくんへの愛を感じる。
キカくんが元気いっぱいでまっすぐなのは、このお家の人たちがみんな優しくて愛情を注いでくれているからなんだと思った。
お風呂から戻ってきたハヅキくんのお父さんとハズキくんは相変わらずあまり口を聞かないでいた。だけど、並んでパプリカの肉詰めを食べて幸せそうな顔をしている姿が、瓜二つすぎて、みんなで笑ったらハヅキくんが拗ねてしまった。
そこはすかさずキカくんが「風呂に入ろう」と、誘ってことなきを得たけれど、あたしにまで「一緒に入るか?」と聞いてきたから、珠恵さんにキカくんが怒られていた。
怒られる訳がわからないままで、何度もこちらを振り向きながら、キカくんはハヅキくんとお風呂場へと消えていった。
「ごめんね、キカって幼くって」
「あ、いえ。大丈夫です」
とは言ったものの、同い年の男の子とお風呂はさすがにちょっと、いや、かなり困るかもしれない。
「今日高見公園行けなくて悪かった。明日絶対行くからな」
「あ、うん」
「キカー、これミナちゃんにやって」
「あー、はいはい。俺にもとって! パプリカ無しのやつ」
「ちゃんとパプリカも食べなよ美味しいのに」
珠恵さんのぶつぶつと呟く小言も聞かずに、キカくんはあらかじめパプリカには入れていないハンバーグのような肉だねを焼いたものが乗った皿を受け取って、満足げに食べている。
さっき、パプリカがまだ残ってあるのに、詰めずに丸めていたのは、この為だったのかと、珠恵さんのキカくんへの愛を感じる。
キカくんが元気いっぱいでまっすぐなのは、このお家の人たちがみんな優しくて愛情を注いでくれているからなんだと思った。
お風呂から戻ってきたハヅキくんのお父さんとハズキくんは相変わらずあまり口を聞かないでいた。だけど、並んでパプリカの肉詰めを食べて幸せそうな顔をしている姿が、瓜二つすぎて、みんなで笑ったらハヅキくんが拗ねてしまった。
そこはすかさずキカくんが「風呂に入ろう」と、誘ってことなきを得たけれど、あたしにまで「一緒に入るか?」と聞いてきたから、珠恵さんにキカくんが怒られていた。
怒られる訳がわからないままで、何度もこちらを振り向きながら、キカくんはハヅキくんとお風呂場へと消えていった。
「ごめんね、キカって幼くって」
「あ、いえ。大丈夫です」
とは言ったものの、同い年の男の子とお風呂はさすがにちょっと、いや、かなり困るかもしれない。
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