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第三章 仲間

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「そーだよ、他になにがある」

 当たり前だろと呆れたような目でキカくんが振り向いた。と、思ったら、アオイくんがあたしにまた振り返る。

「ミナちゃんも頼まれたの?」

 まさか、と顔色を悪くして聞いてくるアオイくんに、あたしは不思議に思って首を傾げた。

「キカのじいちゃんに、命綱もなしに大橋に掛かる柵のない線路を走り抜けろって言われた?」

 どんどん血の気が引いて青白くなっていくアオイくんの顔に、あたしは驚いてしまう。
 だけど、あたしは、洋さんにそんなことは言われていない。だから、無言のまま首を横に振った。

「言われなかった? 本当に? まじか、よかったね、そんなん言われるの僕だけで十分だよ」

 安心したようにアオイくんは少し涙目で口角を引きつらせた。

「いや、さっきの本渡されてた時点でアウトだろ」

 歩くスピードは変わらずに、アオイくんの隣のハヅキくんが冷めたように言う。

「あの本を返してきて欲しいって言われなかった?」

 ようやく、こちらを振り返ったハヅキくんと目が合う。真っ直ぐな瞳に、心臓がどきりと鳴った。

「……い、言われた」
「だろ? じゃあ、もうミナも俺たちの仲間じゃん」

 日焼けした肌に、白い歯を見せて笑ったハヅキくんに、今度は胸がドキドキと波打つような感覚になった。ずっと口を結んで無表情だったのに、その笑顔はギャップがありすぎる。

「今から行くとこは、あの本に出てくる最初の場所。じいちゃんがなにをしたいのかはよく分からないけど、とりあえず、俺たちはこの夏休み中にあの本の謎を解くんだ。めんどくせぇけど、関わったからには、ミナももう戻れないからな」

 キカくんが振り返って立ち止まると、みんなも一度足を止める。円になってこちらを見てくる三人に、あたしはという言葉にワクワクする気持ちと嬉しさが入り混じって、両手を握りしめて全力で頷いた。

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