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第一章 はじまり
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「結構な荷物ですね! 後ろ積んでください」
車から降りてあたし達の荷物に驚いた珠恵さん。その後ろに、男の人がいることに気がついた。運転席でハンドルを握ったまま真っ直ぐ前を向いている。白髪の長い髪を後ろで一つに結んでいて、鼻の下のヒゲも白髪が混じっている。
「あれっ、洋さんも来てたんじゃないですか! あいっかわらず影薄いっすね」
豪快に笑いながら、パパも運転手の存在に気がついて流れるように助手席へと乗り込んだ。
あ、この人が、洋さんなんだ。
「ミナちゃん、荷物こっちにいいよ」
珠恵さんの声にハッとして、持っていたキャリーケースの持ち手をしまうと、空いている場所に載せてもらった。
「後ろに乗って」
「あ、はいっ。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げてから、後部座席へと乗り込む。くるりと振り返って目が合ったパパは笑顔だ。洋さんとはルームミラー越しに目が合って、少しだけ口角が上を向いた気がした。そして、片手を上げてくれた。
「ごめんね、うちのお父さん無口なの。でも、ミナちゃんが来てくれたことはすっごく嬉しいはずだよ」
出発した車の中、隣に座る珠恵さんが小声で謝ってくれた。
だけど、あたしはイメージしていた詩人の洋さんそのものだったから、珠恵さんが謝ることはないと思った。
難しい本を書く人って、なんとなく厳格なイメージを持っていたから、それとピッタリ当てはまったことが、逆に嬉しく思ったほどだ。
少しずつ、話を聞けたらいいなと思うけれど、やっぱり無口で無表情な洋さんの顔は少しだけ、怖いかもしれない。
車から降りてあたし達の荷物に驚いた珠恵さん。その後ろに、男の人がいることに気がついた。運転席でハンドルを握ったまま真っ直ぐ前を向いている。白髪の長い髪を後ろで一つに結んでいて、鼻の下のヒゲも白髪が混じっている。
「あれっ、洋さんも来てたんじゃないですか! あいっかわらず影薄いっすね」
豪快に笑いながら、パパも運転手の存在に気がついて流れるように助手席へと乗り込んだ。
あ、この人が、洋さんなんだ。
「ミナちゃん、荷物こっちにいいよ」
珠恵さんの声にハッとして、持っていたキャリーケースの持ち手をしまうと、空いている場所に載せてもらった。
「後ろに乗って」
「あ、はいっ。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げてから、後部座席へと乗り込む。くるりと振り返って目が合ったパパは笑顔だ。洋さんとはルームミラー越しに目が合って、少しだけ口角が上を向いた気がした。そして、片手を上げてくれた。
「ごめんね、うちのお父さん無口なの。でも、ミナちゃんが来てくれたことはすっごく嬉しいはずだよ」
出発した車の中、隣に座る珠恵さんが小声で謝ってくれた。
だけど、あたしはイメージしていた詩人の洋さんそのものだったから、珠恵さんが謝ることはないと思った。
難しい本を書く人って、なんとなく厳格なイメージを持っていたから、それとピッタリ当てはまったことが、逆に嬉しく思ったほどだ。
少しずつ、話を聞けたらいいなと思うけれど、やっぱり無口で無表情な洋さんの顔は少しだけ、怖いかもしれない。
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