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第十一章 夢物語

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「ねぇ、あたしね、洋さんからすごいこと聞いたの」
「え!? 何なになに!!」
「はい、落ち着いてー、アオイくん」
「いちいち言うなって!」
「で、じいちゃんが、なんだって?」

 思った以上にあたしの言葉に食いついてきた三人の期待の瞳に、伝える決心が一瞬怯んでしまうけど、グッと両手に力を入れて前を向いた。
 これは、言い訳じゃない。他にももしかしたらなにか別のやり方があるんじゃないかっていう、アイデアだ。

「大橋の線路は老朽化が進んでいるから、絶対に近づいてはいけない。だけど、高見公園の枝垂れ桜の木のある広場の坂道を下りながら同じことをするのも効果的っ……て」

 全身が心臓になったみたいに、ドクンドクンと波打つみたいに音を立てている。
 シンっとしたリビングにエアコンの音しか聞こえなくなって、あたしの心臓の音がみんなに聞こえてしまうんじゃないかって冷や汗が流れる。
 こんな嘘をついてしまって、引かれたらどうしよう。じゃあお前一人でやればって、見放されるかも知れない。
 そんなことが、一瞬のうちに頭の中を駆け巡る。耐えられなくなってギュッと目を瞑った瞬間──

「まじまじまじ!? あの怖い橋渡らなくて良いってこと!?」

 アオイくんが飛びついてくる。

「なんだよチートかよ!」

 舌打ちしそうな勢いでハヅキくんがため息をつく。

「良いじゃん。危ないことするより全然」

 安心したようにキカくんが苦笑いした。

 みんな……、信じてくれたの?

「じゃあさ、もう心の準備はほぼ要らないよな。あー、安心して眠れる」
「それ、寝坊決定じゃん。キカだけ橋走ったら?」
「はし、はしったらって、ギャグ?」
「は!? 違うし!」

 なにを言っても楽しそうなのは、最初からだった。あたしは、みんなと過ごすこの夏を物語にしたい。
 嘘でも、嘘じゃなくても、みんなとだから楽しいんだ。笑い合えるから、楽しいんだ。

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