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第七章 アオイくんの思い
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「あっちの公園で遊んで行こうぜ」
キカくんがまた走り出す。少し奥に行くと遊具が置かれていて、すべり台やブランコ、入り組んだジャングルジムや鉄棒、うんていまであった。
小さな子供が小さめの遊具で遊んでいるから、邪魔にならないようにしながら、あたしたちは公園で遊んだ。広い芝生の広場では鬼ごっこやかくれんぼもした。
「ミナー、キカ見つかった?」
キカくんだけが、かくれんぼをしていてしばらく見つけられずにいて、みんなで探し回った。
「キカはかくれんの上手いんだよねー」
「そうそう、気配消すの上手いよな」
褒めているのか、貶しているのか。二人のやりとりを聞きながら、あたしは広場に向かった。
こんな見通しのいい場所には隠れる場所なんてない。だけど、広場のちょうど真ん中らへん。さわさわと、長く垂れ下がった枝と葉っぱが風で揺れ動く、大きな垂れ桜の木があった。そんなに強い風でもないのに、まるで意志があるみたいで、不思議に感じる。心臓がドキドキするけど、同時にワクワクもする。
「あ! あそこにいるじゃん!」
すぐ隣に走ってきたアオイくんが真っ直ぐ枝垂れ桜の木を指差して、嬉しそうにまた走っていく。
「キカみーっけ!」
垂れ桜の木のかげに隠れていたキカくんは、なんだか様子が少しおかしい。
「どうした? キカ」
ハズキくんもこちらに来て、悩むようにあごに手を当てて目を閉じているキカくんの肩をポンっと叩くと、今気が付いたみたいにキカくんが「うわぁ!」と声を出した。
「あー、ハズキか」
「なんだよ、俺で悪いか。先に見つけたのはたぶんミナだぞ。で、アオイが自分の手柄にしようとしてた」
「え!? なんでだよ! そんなことないってば」
いつもの言い合いが始まって、あたしは笑ってしまう。
「本当に仲良しだよね」
羨ましいなぁ。思わず出そうになった言葉を心の中に閉じ込めた。
そうして今日も、あっという間に時間が過ぎて帰る時間になってしまった。
元来た道を、ゆっくりと下っていく。
「ねぇ、僕たち、ずっと友達でいられるよね?」
ふざけ合いながら歩くキカくんとハヅキくんの後ろ、あたしと並んで歩いていたアオイくんが、突然立ち止まって聞いてきた。
キカくんがまた走り出す。少し奥に行くと遊具が置かれていて、すべり台やブランコ、入り組んだジャングルジムや鉄棒、うんていまであった。
小さな子供が小さめの遊具で遊んでいるから、邪魔にならないようにしながら、あたしたちは公園で遊んだ。広い芝生の広場では鬼ごっこやかくれんぼもした。
「ミナー、キカ見つかった?」
キカくんだけが、かくれんぼをしていてしばらく見つけられずにいて、みんなで探し回った。
「キカはかくれんの上手いんだよねー」
「そうそう、気配消すの上手いよな」
褒めているのか、貶しているのか。二人のやりとりを聞きながら、あたしは広場に向かった。
こんな見通しのいい場所には隠れる場所なんてない。だけど、広場のちょうど真ん中らへん。さわさわと、長く垂れ下がった枝と葉っぱが風で揺れ動く、大きな垂れ桜の木があった。そんなに強い風でもないのに、まるで意志があるみたいで、不思議に感じる。心臓がドキドキするけど、同時にワクワクもする。
「あ! あそこにいるじゃん!」
すぐ隣に走ってきたアオイくんが真っ直ぐ枝垂れ桜の木を指差して、嬉しそうにまた走っていく。
「キカみーっけ!」
垂れ桜の木のかげに隠れていたキカくんは、なんだか様子が少しおかしい。
「どうした? キカ」
ハズキくんもこちらに来て、悩むようにあごに手を当てて目を閉じているキカくんの肩をポンっと叩くと、今気が付いたみたいにキカくんが「うわぁ!」と声を出した。
「あー、ハズキか」
「なんだよ、俺で悪いか。先に見つけたのはたぶんミナだぞ。で、アオイが自分の手柄にしようとしてた」
「え!? なんでだよ! そんなことないってば」
いつもの言い合いが始まって、あたしは笑ってしまう。
「本当に仲良しだよね」
羨ましいなぁ。思わず出そうになった言葉を心の中に閉じ込めた。
そうして今日も、あっという間に時間が過ぎて帰る時間になってしまった。
元来た道を、ゆっくりと下っていく。
「ねぇ、僕たち、ずっと友達でいられるよね?」
ふざけ合いながら歩くキカくんとハヅキくんの後ろ、あたしと並んで歩いていたアオイくんが、突然立ち止まって聞いてきた。
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