4 / 60
第一章 はじまり
3
しおりを挟む「では次に『魔法師』についてお話いたしますわね」
アリーチェさんが改めて黒板に単語を書いていく。
「『魔法師』とは魔法のスペシャリストとして認められた資格取得者のことですわ。
この世界における殆どの国がこの制度を採用しておりますの。
この超大陸『ヴァール』においてはこの数年で『勇者』という新たな称号が生まれましたが、それまでは各国がこぞってこの『魔法師』を輩出することに躍起になっておりましたわ。
優れた『魔法師』の数こそが国の戦力保有数を、ひいては国力そのものを表しているとされていたのですから。
まぁ、『ヴァール』以外ではそれは今でもほぼ変わっておりませんがね」
その話なら僕も少し知っている。
この学園に来る時に荷馬車のおじさんとそんな話をしたこともあったっけ。
「『魔法師』にもまた3つのクラス分けが存在しており『下級魔法師』、『中級魔法師』、『上級魔法師』がありますの」
例によって、アリーチェさんが黒板にその3つの単語を板書していく。
「あの、僕の『魔法師』ってものに対する認識は単純に魔法を使える人、ぐらいのイメージだったんですけど、この前の模擬戦を見た限り今この学園に居る生徒の人達って割と普通に魔法を使えてますよね?
あの人達は『魔法師』とは呼ばないんですか?」
「まあ、魔法に詳しくなければ貴方と同じような認識の者が大半でしょうね。
ですが『魔法師』を名乗るには国から正式に施行されている国家試験に合格しなければなりませんわ。
そしてただ魔法が使える、というだけでは『魔法師』にはなれませんの。
他にも条件がありますわ」
「条件?」
アリーチェさんは黒板の3つの単語に説明文を載せた。
「まず、『下級魔法師』について。
基本的にただ『魔法師』と呼ばれている人は殆どがこのクラスのものになりますわ。
この『魔法師』になる為の条件は、『2種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』というものですの」
「2種類以上の系統?」
「そう、例えば炎魔法、《ファイアー・ジャベリン》と氷魔法、《アイス・ブレード》を発動出来る、といった具合でございますわ。
そして、これだけでも相当に困難な条件でありましてよ。
何故なら、自身の得意系統以外の魔法の発動というものはとても難易度が高いからですわ」
「そうなんですか?」
「ええ、まだ初等魔法程度なら他系統の魔法を使うことは比較的容易な方ではありますわ。
しかし中等魔法からはそうはいきません。
10年以上もの歳月をかけて鍛錬し、ようやく下位中等魔法を使えるかどうか、といわれておりますわ。
ですので、若い年齢のうちで『魔法師』になれる方は非常に稀ですわね」
そういえば『魔法師』候補と言われていたレディシュさんも確かに爆発魔法の他に魔力と体力を吸収する魔法も使えてたんだっけ。
あの人本当に凄い実力者だったんだなぁ……
「『中級魔法師』は『3種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』こと、そして『『準』高等魔法を使用可能である』こと、この2つの条件を満たす必要がありますわ」
「3種類以上の魔法……!」
「ええ、ちなみに『準』高等魔法の習得も同じくらい難しいと言われておりますわ。
単純に『下級魔法師』の2倍困難と言えますわね」
「………………」
改めて僕とそう変わらない歳で『中級魔法師』の資格を持つというキャリーさんの規格外ぶりがよく分かる……
そして、そんな人相手に有利な試合形式とはいえ、完勝してしまったアリーチェさんも……
「そして『上級魔法師』。
お察しかと思いますが、条件は『4種類以上の中等魔法が使用可能である』こと、そして『高等魔法を使用可能である』こと、ですわ。
貴方もご存知の『上級魔法師』といえば……」
「アリエス先生……ですよね」
高等治癒魔法、そのうえ解析魔法まで使えるコーディス先生曰く補助魔法を極めた世界最高峰の『魔法師』の1人。
僕も模擬戦の時やレディシュさんとの戦いの時の怪我の治療でお世話になったっけ。
「アリエス先生の母君であるリブラ先生もまた治癒魔法を極めた『上級魔法師』ですわね。
あの方々スターリィ家は代々強力な治癒魔法を得意系統としておりますのよ。
得意系統が血筋を通して遺伝するのは珍しくないですからね」
ふむ、そういうものなのか。
「あと、これは余談なのですがこの学園の講師陣は殆どが『魔法師』の資格持ちでしてよ。
これだけの数の『魔法師』が一堂に会する場所など、世界でもここぐらいしかありませんでしょうね」
「ほえぇ……」
いやはやもう何と言うか……
勇者学園恐るべし、の一言だ……
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「さて、基本的なお話はこんな所でしょうかね。
という訳で、アリスリーチェ先生の特別魔法講座はとりあえずここまでと致しますわ」
「はい!今日は本当にありがとうございます!
おかげで魔法について詳しくなれました!」
「んあ……?
ふわぁー……
話終わったのー?」
「今回の内容は本当に基礎的な部分だけでして、まだまだ知っていただきたいことはあったのですが……
まあそれはまた次の機会でお話いたしますわ」
「はい!よろしくお願いします!」
「サラッと次の予定を確約してるけどやるべきことが沢山あるんじゃなかったのか巻貝」
「アリスリーチェ様!
次の講義での衣装はこのファーティラ渾身の一作!
『バニーティーチャー ~ 魅惑の補習授業 ~』をどうかご着用ください!
女教師とバニーガール、方向性の違う2つのエロスをとことんつき詰めてみました!!」
「もうこの際ハッキリ言わせて貰いますね。
アナタもしかして色々とダメなのでは?」
そんなこんなで今回の特別講義は終了したのだった。
アリーチェさんが改めて黒板に単語を書いていく。
「『魔法師』とは魔法のスペシャリストとして認められた資格取得者のことですわ。
この世界における殆どの国がこの制度を採用しておりますの。
この超大陸『ヴァール』においてはこの数年で『勇者』という新たな称号が生まれましたが、それまでは各国がこぞってこの『魔法師』を輩出することに躍起になっておりましたわ。
優れた『魔法師』の数こそが国の戦力保有数を、ひいては国力そのものを表しているとされていたのですから。
まぁ、『ヴァール』以外ではそれは今でもほぼ変わっておりませんがね」
その話なら僕も少し知っている。
この学園に来る時に荷馬車のおじさんとそんな話をしたこともあったっけ。
「『魔法師』にもまた3つのクラス分けが存在しており『下級魔法師』、『中級魔法師』、『上級魔法師』がありますの」
例によって、アリーチェさんが黒板にその3つの単語を板書していく。
「あの、僕の『魔法師』ってものに対する認識は単純に魔法を使える人、ぐらいのイメージだったんですけど、この前の模擬戦を見た限り今この学園に居る生徒の人達って割と普通に魔法を使えてますよね?
あの人達は『魔法師』とは呼ばないんですか?」
「まあ、魔法に詳しくなければ貴方と同じような認識の者が大半でしょうね。
ですが『魔法師』を名乗るには国から正式に施行されている国家試験に合格しなければなりませんわ。
そしてただ魔法が使える、というだけでは『魔法師』にはなれませんの。
他にも条件がありますわ」
「条件?」
アリーチェさんは黒板の3つの単語に説明文を載せた。
「まず、『下級魔法師』について。
基本的にただ『魔法師』と呼ばれている人は殆どがこのクラスのものになりますわ。
この『魔法師』になる為の条件は、『2種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』というものですの」
「2種類以上の系統?」
「そう、例えば炎魔法、《ファイアー・ジャベリン》と氷魔法、《アイス・ブレード》を発動出来る、といった具合でございますわ。
そして、これだけでも相当に困難な条件でありましてよ。
何故なら、自身の得意系統以外の魔法の発動というものはとても難易度が高いからですわ」
「そうなんですか?」
「ええ、まだ初等魔法程度なら他系統の魔法を使うことは比較的容易な方ではありますわ。
しかし中等魔法からはそうはいきません。
10年以上もの歳月をかけて鍛錬し、ようやく下位中等魔法を使えるかどうか、といわれておりますわ。
ですので、若い年齢のうちで『魔法師』になれる方は非常に稀ですわね」
そういえば『魔法師』候補と言われていたレディシュさんも確かに爆発魔法の他に魔力と体力を吸収する魔法も使えてたんだっけ。
あの人本当に凄い実力者だったんだなぁ……
「『中級魔法師』は『3種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』こと、そして『『準』高等魔法を使用可能である』こと、この2つの条件を満たす必要がありますわ」
「3種類以上の魔法……!」
「ええ、ちなみに『準』高等魔法の習得も同じくらい難しいと言われておりますわ。
単純に『下級魔法師』の2倍困難と言えますわね」
「………………」
改めて僕とそう変わらない歳で『中級魔法師』の資格を持つというキャリーさんの規格外ぶりがよく分かる……
そして、そんな人相手に有利な試合形式とはいえ、完勝してしまったアリーチェさんも……
「そして『上級魔法師』。
お察しかと思いますが、条件は『4種類以上の中等魔法が使用可能である』こと、そして『高等魔法を使用可能である』こと、ですわ。
貴方もご存知の『上級魔法師』といえば……」
「アリエス先生……ですよね」
高等治癒魔法、そのうえ解析魔法まで使えるコーディス先生曰く補助魔法を極めた世界最高峰の『魔法師』の1人。
僕も模擬戦の時やレディシュさんとの戦いの時の怪我の治療でお世話になったっけ。
「アリエス先生の母君であるリブラ先生もまた治癒魔法を極めた『上級魔法師』ですわね。
あの方々スターリィ家は代々強力な治癒魔法を得意系統としておりますのよ。
得意系統が血筋を通して遺伝するのは珍しくないですからね」
ふむ、そういうものなのか。
「あと、これは余談なのですがこの学園の講師陣は殆どが『魔法師』の資格持ちでしてよ。
これだけの数の『魔法師』が一堂に会する場所など、世界でもここぐらいしかありませんでしょうね」
「ほえぇ……」
いやはやもう何と言うか……
勇者学園恐るべし、の一言だ……
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「さて、基本的なお話はこんな所でしょうかね。
という訳で、アリスリーチェ先生の特別魔法講座はとりあえずここまでと致しますわ」
「はい!今日は本当にありがとうございます!
おかげで魔法について詳しくなれました!」
「んあ……?
ふわぁー……
話終わったのー?」
「今回の内容は本当に基礎的な部分だけでして、まだまだ知っていただきたいことはあったのですが……
まあそれはまた次の機会でお話いたしますわ」
「はい!よろしくお願いします!」
「サラッと次の予定を確約してるけどやるべきことが沢山あるんじゃなかったのか巻貝」
「アリスリーチェ様!
次の講義での衣装はこのファーティラ渾身の一作!
『バニーティーチャー ~ 魅惑の補習授業 ~』をどうかご着用ください!
女教師とバニーガール、方向性の違う2つのエロスをとことんつき詰めてみました!!」
「もうこの際ハッキリ言わせて貰いますね。
アナタもしかして色々とダメなのでは?」
そんなこんなで今回の特別講義は終了したのだった。
16
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
ヒョイラレ
如月芳美
児童書・童話
中学に入って関東デビューを果たした俺は、急いで帰宅しようとして階段で足を滑らせる。
階段から落下した俺が目を覚ますと、しましまのモフモフになっている!
しかも生きて歩いてる『俺』を目の当たりにすることに。
その『俺』はとんでもなく困り果てていて……。
どうやら転生した奴が俺の体を使ってる!?

お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。
閉じられた図書館
関谷俊博
児童書・童話
ぼくの心には閉じられた図書館がある…。「あんたの母親は、適当な男と街を出ていったんだよ」祖母にそう聴かされたとき、ぼくは心の図書館の扉を閉めた…。(1/4完結。有難うございました)。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる