50 / 72
第五章 晩夏光の図書室
1
しおりを挟む
なんだか、普通の女子高生ってこんななのかな、なんて思うような放課後だった。
まりんちゃんはあたしの行動や表情に対して、気にしたり問いかけてはくれるけど、深くまでは聞いてこないし、すぐに別の話題や目の前のことに興味が逸れて話が次々展開していって尽きることがない。
色んなことに興味を持っているから、きっと一つのことにとどまってなんていられないのかもしれない。
隆大くんの部活が終わるのを待って、学校へ引き返していくまりんちゃんと「またね」と言って手を振り別れた。
直後、まりんちゃんが道路の反対側を歩く人に「おーい」と声をかけているから、つい、向こう側に誰がいるのか気になって視線を向けた。
「なーなみー!!」
あたしの視線がその人を捉えるのとほぼ同時に、まりんちゃんが相手の名前を呼ぶ。
制服はうちの学校のものではなくて、セーラー服だ。膝下のスカートにきっちりしたリボン。長めの黒い髪は後ろで一つ結びにしていて、眼鏡にかかるくらいの長さがある前髪が揺れたと思えば、まりんちゃんの方を向いて顔を上げた。
照れているのか、大きく全身で呼び止めるまりんちゃんとは対照的に、控えめに小さく手を振っている。
「……あの子……」
七美……?
記憶の中の古賀くんの隣を歩く七美の姿を思い出す。そして、まりんちゃんに視線を戻してみると、なにやら親しげに話しかけている。
どう言うこと?
まりんちゃんと七美は知り合いなの?
ものすごく気になるけれど、人の交友関係にあまり関わったりはしたくなくて、気が付かないふりをしたままゆっくり歩き出す。
だけど、どうしたって気になる気持ちの方が上回ってしまって、あたしは踵を返した。七美に「またねー」と言ってまた学校へ向かい出すまりんちゃんを慌てて追いかけた。
「……ね、ねぇ、今の子、知り合い?」
普段走ったり急いだりなんてしないから、突然誰かを追いかけるなんて自分でも驚いているし、運動なんてしないからほんの少し走っただけで息が思ったよりも上がってしまった。振り返ったまりんちゃんも驚いたように目を見開く。
「涼風ちゃん?」
「今、話しかけてた子って、七美って言うんだよね?」
「うん、そうだよ。小学校の時仲良かったの。すっごい久しぶりで思わず声かけちゃった」
あははと笑うまりんちゃんは、きっとあの七美って子が古賀くんの元カノだと言うことは知らないのかもしれない。
「あの子、古賀くんの元カノだと思うんだけど」
「…………え?」
うん、いい反応だと思う。
まさかと苦笑いするまりんちゃんに、あたしまで苦笑いするしかない。
それはそうだ。古賀くんは誰がどう見たってイケメンで、背が高くて顔面良すぎて、モテるけど近寄りがたくて、美人な先輩すらなかなか告白するのを躊躇うくらいに手が届かないで有名なんだ。
あたしがそんな古賀くんと付き合えたのは、本当に今考えればタイミングや運が良かったとしか言えないかもしれない。
「そうなのー!?」
「うん……」
「あの古賀くんの、元カノが、七美?」
「うん」
ぱっちりと開いた目元がまん丸くなる。そして、嬉しそうに細く弧を描いていく。
「へぇ、古賀くんって見る目あるね。七美に涼風ちゃんでしょ? なにそれ、やっぱり古賀くんって中身までイケメンなんじゃん! マジすごい!」
「……は?」
まりんちゃんが興奮気味に古賀くんのことを褒め始めるから、あたしは何が何だかわからなくなる。
だって、葉ちゃんと同じ反応をまりんちゃんもするんだと思ったから。
それなのに、なんでこんなに嬉しそうなの?
まりんちゃんはあたしの行動や表情に対して、気にしたり問いかけてはくれるけど、深くまでは聞いてこないし、すぐに別の話題や目の前のことに興味が逸れて話が次々展開していって尽きることがない。
色んなことに興味を持っているから、きっと一つのことにとどまってなんていられないのかもしれない。
隆大くんの部活が終わるのを待って、学校へ引き返していくまりんちゃんと「またね」と言って手を振り別れた。
直後、まりんちゃんが道路の反対側を歩く人に「おーい」と声をかけているから、つい、向こう側に誰がいるのか気になって視線を向けた。
「なーなみー!!」
あたしの視線がその人を捉えるのとほぼ同時に、まりんちゃんが相手の名前を呼ぶ。
制服はうちの学校のものではなくて、セーラー服だ。膝下のスカートにきっちりしたリボン。長めの黒い髪は後ろで一つ結びにしていて、眼鏡にかかるくらいの長さがある前髪が揺れたと思えば、まりんちゃんの方を向いて顔を上げた。
照れているのか、大きく全身で呼び止めるまりんちゃんとは対照的に、控えめに小さく手を振っている。
「……あの子……」
七美……?
記憶の中の古賀くんの隣を歩く七美の姿を思い出す。そして、まりんちゃんに視線を戻してみると、なにやら親しげに話しかけている。
どう言うこと?
まりんちゃんと七美は知り合いなの?
ものすごく気になるけれど、人の交友関係にあまり関わったりはしたくなくて、気が付かないふりをしたままゆっくり歩き出す。
だけど、どうしたって気になる気持ちの方が上回ってしまって、あたしは踵を返した。七美に「またねー」と言ってまた学校へ向かい出すまりんちゃんを慌てて追いかけた。
「……ね、ねぇ、今の子、知り合い?」
普段走ったり急いだりなんてしないから、突然誰かを追いかけるなんて自分でも驚いているし、運動なんてしないからほんの少し走っただけで息が思ったよりも上がってしまった。振り返ったまりんちゃんも驚いたように目を見開く。
「涼風ちゃん?」
「今、話しかけてた子って、七美って言うんだよね?」
「うん、そうだよ。小学校の時仲良かったの。すっごい久しぶりで思わず声かけちゃった」
あははと笑うまりんちゃんは、きっとあの七美って子が古賀くんの元カノだと言うことは知らないのかもしれない。
「あの子、古賀くんの元カノだと思うんだけど」
「…………え?」
うん、いい反応だと思う。
まさかと苦笑いするまりんちゃんに、あたしまで苦笑いするしかない。
それはそうだ。古賀くんは誰がどう見たってイケメンで、背が高くて顔面良すぎて、モテるけど近寄りがたくて、美人な先輩すらなかなか告白するのを躊躇うくらいに手が届かないで有名なんだ。
あたしがそんな古賀くんと付き合えたのは、本当に今考えればタイミングや運が良かったとしか言えないかもしれない。
「そうなのー!?」
「うん……」
「あの古賀くんの、元カノが、七美?」
「うん」
ぱっちりと開いた目元がまん丸くなる。そして、嬉しそうに細く弧を描いていく。
「へぇ、古賀くんって見る目あるね。七美に涼風ちゃんでしょ? なにそれ、やっぱり古賀くんって中身までイケメンなんじゃん! マジすごい!」
「……は?」
まりんちゃんが興奮気味に古賀くんのことを褒め始めるから、あたしは何が何だかわからなくなる。
だって、葉ちゃんと同じ反応をまりんちゃんもするんだと思ったから。
それなのに、なんでこんなに嬉しそうなの?
4
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
アスカニア大陸戦記 黒衣の剣士と氷の魔女【R-15】
StarFox
ファンタジー
無頼漢は再び旅に出る。皇帝となった唯一の親友のために。
落ちこぼれ魔女は寄り添う。唯一の居場所である男の傍に。
後に『黒い剣士と氷の魔女』と呼ばれる二人と仲間達の旅が始まる。
剣と魔法の中世と、スチームパンクな魔法科学が芽吹き始め、飛空艇や飛行船が大空を駆り、竜やアンデッド、エルフやドワーフもいるファンタジー世界。
皇太子ラインハルトとジカイラ達の活躍により革命政府は倒れ、皇太子ラインハルトはバレンシュテット帝国皇帝に即位。
絶対帝政を敷く軍事大国バレンシュテット帝国は復活し、再び大陸に秩序と平和が訪れつつあった。
本編主人公のジカイラは、元海賊の無期懲役囚で任侠道を重んじる無頼漢。革命政府打倒の戦いでは皇太子ラインハルトの相棒として活躍した。
ジカイラは、皇帝となったラインハルトから勅命として、革命政府と組んでアスカニア大陸での様々な悪事に一枚噛んでいる大陸北西部の『港湾自治都市群』の探索の命を受けた。
高い理想を掲げる親友であり皇帝であるラインハルトのため、敢えて自分の手を汚す決意をした『黒衣の剣士ジカイラ』は、恋人のヒナ、そしてユニコーン小隊の仲間と共に潜入と探索の旅に出る。
ここにジカイラと仲間達の旅が始まる。
アルファポリス様、カクヨム様、エブリスタ様、ノベルアップ+様にも掲載させて頂きました。
どうぞよろしくお願いいたします。
関連作品
※R-15版
アスカニア大陸戦記 亡国の皇太子
https://ncode.syosetu.com/n7933gj/
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
その花は、夜にこそ咲き、強く香る。
木立 花音
青春
『なんで、アイツの顔見えるんだよ』
相貌失認(そうぼうしつにん)。
女性の顔だけ上手く認識できないという先天性の病を発症している少年、早坂翔(はやさかしょう)。
夏休みが終わった後の八月。彼の前に現れたのは、なぜか顔が見える女の子、水瀬茉莉(みなせまつり)だった。
他の女の子と違うという特異性から、次第に彼女に惹かれていく翔。
中学に進学したのち、クラスアート実行委員として再び一緒になった二人は、夜に芳香を強めるという匂蕃茉莉(においばんまつり)の花が咲き乱れる丘を題材にして作業にはいる。
ところが、クラスアートの完成も間近となったある日、水瀬が不登校に陥ってしまう。
それは、彼女がずっと隠し続けていた、心の傷が開いた瞬間だった。
※第12回ドリーム小説大賞奨励賞受賞作品
※表紙画像は、ミカスケ様のフリーアイコンを使わせて頂きました。
※「交錯する想い」の挿絵として、テン(西湖鳴)様に頂いたファンアートを、「彼女を好きだ、と自覚したあの夜の記憶」の挿絵として、騰成様に頂いたファンアートを使わせて頂きました。ありがとうございました。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
夏の出来事
ケンナンバワン
青春
幼馴染の三人が夏休みに美由のおばあさんの家に行き観光をする。花火を見た帰りにバケトンと呼ばれるトンネルを通る。その時車内灯が点滅して美由が驚く。その時は何事もなく過ぎるが夏休みが終わり二学期が始まっても美由が来ない。美由は自宅に帰ってから金縛りにあうようになっていた。その原因と名をす方法を探して三人は奔走する。
私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる