32 / 72
第三章 ラムネとかき氷
2
しおりを挟む「あ! まりん! 今日こそ部活に顔出しなよー!」
「ごめぇん! これからデートなのっ♪」
葉ちゃんが教室に入ってきたと思ったら、陽気な猫撫で声ですぐに返事をして、走り去っていく女の子の後ろ姿を見送った。
「もぉー、あの子全然部活する気ないでしょ。もうやめたらいいのに」
怒り気味であたしの目の前まで来た葉ちゃん。
「今のって……」
「三組の高橋まりんだよ。一応バスケ部」
「だよ、ね」
ちょっと混乱しているのは、あたしの知っている高橋まりんちゃんとは少しだけ……いや、だいぶ違うような気がしたから。
喋り方は元々あんな感じでおっとりとしていたけれど、髪も真っ直ぐで黒かったし、眼鏡をかけていて真面目な、どちらかと言うとあまり目立たないような雰囲気の子だった気がする。だから、今目の前にいたのは一瞬、誰だろうかと疑問に思ってしまった。
「あー! そっか!」
思い出したように、葉ちゃんが頷く。
「あの子、夏休み中に彼氏出来て変わっちゃったんだよ! そのせいで部活はまったく来なくなっちゃうし」
はぁ、と呆れるようにため息を吐き出して、葉ちゃんは椅子に座った。
やっぱり。あたしの知っているまりんちゃんとはイメージが違いすぎたから、さっきは混乱したんだ。
だけど、たまにあたしを気にかけてくれる優しさは前から変わらない気がする。
『ため息って、幸せ逃げるんだよ』
幸せなんて、あいにく持ち合わせていない。だから、逃げる幸せなんてものはない。あたしのため息は空っぽだ。失うものなんて何もないんだよ。
「彼氏出来て変わっちゃう典型だよ。友達付き合いも悪くなったし」
「……そう、なんだ」
「涼風は彼氏出来ても変わらずにあたしといつも通りに接してくれてたし、嬉しかったんだよー。こんな良い子フルとか、古賀くん見る目なさすぎ」
何故か古賀くんへの暴言に変わって、葉ちゃんは「また明日ね」と教室を出て行った。
葉ちゃんの古賀くんへの評価が日に日に下がりすぎている気がする。まぁ、仕方ないのかもしれないけれど。
「あ! まーりーんっ! わりぃ、これから部活のミーティングだって! 待ってられる?」
突然、廊下から男の子の大きな声が聞こえてきた。
「うん、大丈夫だよ。リュウくんのことなら、まりんいくらでも待てちゃうから」
「ぐはぁ! なにそれ! やば、可愛すぎるでしょ。抱きしめていい?」
「えっと、後でね。ミーティング頑張って!」
「うん! 頑張るー! 待っててー」
なんとも甘いやり取りの一部始終が聞こえてきて、あたしは開いた口が塞がらないでいた。
すると、教室にまりんちゃんがまた戻ってきた。
4
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
さよなら私のドッペルゲンガー
新田漣
青春
「なんとかなるでしょ、だって夏だし」
京都市内で一人暮らし中の高校生、墨染郁人は『ノリと勢いだけで生きている』と評される馬鹿だ。そんな墨染の前に、白谷凛と名乗る少女の幽霊が現れる。
なんでも凛はドッペルゲンガーに存在を奪われ、死に至ったらしい。不幸な最期を遂げた凛が願うのは、自分と成り代わったドッペルゲンガーの殺害だった。
凛の境遇に感じるものがあった墨染は、復讐劇の協力を申し出る。友人である深谷宗平も巻き込んで、奇想天外かつ法律スレスレの馬鹿騒ぎを巻き起こしながらドッペルゲンガーと接触を重ねていく――――。
幽霊になった少女の、報われない恋心と復讐心。
人間として生きるドッペルゲンガーが抱える、衝撃の真実。
ノリと勢いだけで生きる馬鹿達の、眩い青春の日々。
これは、様々な要素が交錯する夏の京都で起きた、笑いあり涙ありの青春復讐劇。
【第12回ドリーム小説大賞にて、大賞を頂きました。また、エブリスタ・ノベルアップ+でも掲載しております】
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
adolescent days
wasabi
青春
これは普通の僕が普通では無くなる話
2320年
あらゆる生活にロボット、AIが導入され人間の仕事が急速に置き換わる時代。社会は多様性が重視され、独自性が評価される時代となった。そんな時代に将来に不安を抱える僕(鈴木晴人(すずきはると))は夏休みの課題に『自分にとって特別な何かをする』という課題のレポートが出される。特別ってなんだよ…そんなことを胸に思いながら歩いていると一人の中年男性がの垂れていた…
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる