春の真ん中、泣いてる君と恋をした

佐々森りろ

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1巻

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   プロローグ


 それはまるで、晴天に降るにわか雨のように静かで……


 満開の桜に吹き付ける春一番のように力強く。
 気を緩めてしまえば涙が溢れ出てきそうなほどに、切ない旋律だった。


 かすかに聞こえてくる音を、耳だけを頼りに探す。
 澄み渡る空の蒼に、遠く灰色の雨雲が見えた。
 ぽつり。鼻先に落ちてきた細い雫。


 見上げた空にいくつも透明な線を描いていた。
 太陽の光で、雨の線は金色にも銀色にも見える。
 幻想的な空、眩しいきらめきに目を細める。
 ふいにまた、耳に流れくる音。


 切なくて、悲しい旋律は、祝福の喜びも含んでいるような。
 そんな優しさも感じた。




   第一章 「再出発」


 高一の終わり、両親が離婚した。
 小さい頃に見せてもらった結婚式のDVDを思い出す。
 挙式会場として飾り立てられた展望レストランが、会場だった。壁一面がガラス窓になっていて、澄み渡る蒼い空が近くて、まるで宙に浮いているようだったことを覚えている。ふわりと花のように笑う母と、どこかぎこちないけれど、とても嬉しそうな笑顔の父。おごそかな雰囲気の中、かなでられるピアノから始まり、ゆっくり母と祖父が入場してくる。永遠の愛を誓い合う二人の姿は、幸せそうなオーラに包まれて見えた。父が上げたベールから見えた母はとても美しかった。
 それから、DVDの場面は桜吹雪舞い散る庭へと変わって、たくさんの人の手から祝福の花びらが降り注いだ。純白のウェディングドレスとタキシードに花びらが色を添えている。
 周りの人達も、母も父も、とても幸せそうな顔をしていると思った。
 あたしは、何度も、何度も、幸せそうな二人を飽きることなく繰り返し見ていた。
 あたしもいつか、こんなふうに幸せになりたいと、ずっと思っていた。思っていたのに……


 電車に揺られるあたしは、いつの間にか眠っていたらしい。
 夢を見ていた。
 幸せだけど、とても切なく悲しい気持ちが胸の中に広がる。

奏音かの、おばあちゃんち、覚えてる?」

 母がそっと聞いてきた。まだぼんやりとする頭を振って、目を軽く擦ってから、「……覚えてるよ」と電車の走行音にかき消されてしまいそうなくらい小さな声で答えた。

「今日から、おばあちゃんちでお世話になるからね。学校も近くだからさっそく見学しようね」

 優しく、あたしを慰めるように母がゆっくりと伝えてくれる。
 あたしは視線を前のガラス窓へと上げて、流れゆく外の風景を眺めた。
 都会の高いビルも目立った建物もない、だだっ広い田園風景が流れて行く。晴天の雲ひとつない空の向こうには、てっぺんの方の木の輪郭までくっきりと見えるくらい近い距離に山があった。
 懐かしい。この景色を見てそう思えるのは、あたしがこの場所に小学二年生の頃まで住んでいたからだ。
 三年生へ上がるタイミングで、父の転勤が決まって横浜へ家族で引っ越してしまったのだけど。

「ごめんね、何度も奏音を振り回してしまって」

 母の声が、ガタンっと揺れる電車の音に掻き消されそうなほど小さく聞こえる。
 ようやく完全に覚醒した頭を働かせて、あたしは母の肩を軽く叩いた。

「もう大丈夫だからって、あっち出る前に言ったじゃん。あたしは友達作るの上手いんだから、どこでだってやっていけるよ。お母さんこそ心配なんだからね。しっかりしてよ」

 見れば、母はまた目に涙を浮かべていた。向こうを出る前に「泣くのはやめて」と言ったばかりなのに。

「だって……私が実家に帰りたいってわがまま言っちゃって……奏音のことお友達とも離れ離れにしちゃったし……」

 うぅっと嗚咽おえつを漏らしながら、ついに泣き出してしまった母に、あたしは慌ててしまう。周りをうかがえば、都会のようなすし詰め状態ではないし、人はまばら。むしろ閑散としているから、余計に嗚咽おえつが響いているんじゃないかと感じてしまう。

「だから、言ったでしょ? 向こうの友達とはこれで繋がっているし、離れ離れになったなんて思っていないよ」

 母の嗚咽おえつを遮るように、あたしはスマホを取り出してみせた。
 SNSでいつだって会話は出来るし、場所が変わったとしても、今まで仲良くなった友達はずっと友達だと思っている。

「ね、あたしの心配はいらないから。お母さんは自分の心配をして? 仕事とか探さなきゃないでしょ? あたしだって自分で学校を決めれたんだから」
「……奏音……」

 まっすぐに母の潤んだ瞳を見つめると、また泣き出してしまった。
 呆れてため息を吐き出しつつ、あたしは母にハンカチを渡す。母はそんなあたしを見上げて、赤い目のままで笑った。

「……ごめんね、着いたらもう泣かないね。ありがとう奏音」
「……うん」

 母は強い人だと思っていた。
 こんなに泣き虫で、弱かったなんて知らなかった。いつもあたしのことを心配してくれて、励ましてくれて。ずっとそばで支えていてくれたから。
 父と別れて、母はひどく落ち込んでいた。ようやく、実家に戻る決心がついたんだろうけど、まだ心には波があるようで、時々一人で泣いているのを見てきていた。
 だから、もう泣いてほしくない。
 あたしは、母よりも強くいなくちゃいけない。泣いてなんていられない。
 今度は、あたしが母の事を心配して励まして、そばで支えていてあげたい。
 きっと、母にだってすぐに友達が出来る。だって、あたしの母は世界一、優しいんだから。

「お母さん、アイメイク全滅だよ? ヤバいって。はい、これ」

 ハンカチで擦ってしまったからか、余計にメイクが剥げてまぶたが赤くなってしまっている。あたしはポーチの中からパウダーを取り出して、鏡と一緒に渡した。するとようやく、母が笑った。

「やだぁ、酷い顔」
「ほら、とりあえず風送って冷やして、それで誤魔化しなよ」

 手をうちわのようにしてあたしは母の顔に風を送る。
 鏡の中の自分の顔に、ガッカリと肩を落とす母に思わず笑ってしまった。

「もう、やだぁ、笑わないでよ」

 母は可愛い。そんな可愛い母を、きっと父は好きになったんだと思う。それなのに、どうして離婚することになってしまったのだろう。父と話す機会がなかったあたしには、それが分からない。今は、母が笑顔になってくれれば、あたしはそれでいい。


 到着駅に降り立つと、ふんわりと春の匂いが鼻をかすめた。
 日陰にはまだ、積雪の名残なごりが残っている。だけど、草花はもう春を今か今かと待ちきれずに成長していて、太陽の日差しが香りを舞い上がらせていた。

「奏音、おばあちゃんちの近くに住んでいた、恭太きょうたくんって覚えてる?」

 歩きながら、母があたしの方を見てにっこりと笑う。
 その名前は、あたしの記憶にしっかり残っていた。

「知ってるよ! 恭ちゃんでしょ?」
「あら、そんな風に呼んでいたんだっけ?」

 ふふ、と懐かしそうに笑う母。

「恭太くんに、奏音の学校案内を頼もうかなぁって考えていたんだけど、どうかな?」
「……え、お母さん、恭ちゃんと連絡取り合ってたの?」

 思わず頬を膨らませて母を見ると、優しく微笑んでくる。

「ううん、恭太くんのお母さんとよ。こっちにいた時からお世話になっていたし、向こうに行ってからも連絡を取り合って仲良くさせてもらっていたの」
「そうなの? 知らなかった」
「今春休み中でしょ? 天気もいいし、おばあちゃんに挨拶したら、お散歩がてら学校見学に連れてってもらってきたら良いんじゃないかなって」
「うん! 行く、行きたいっ」
「良かった。じゃあ、道香みちかさんに連絡しておくわね」

 さっそくスマホを取り出した母を横目に、あたしは記憶を辿る。道香さんというのは恭ちゃんのお母さんの名前だ。
 ……恭ちゃんかぁ。懐かしいな、何年振りだろう。
 急に決まった父の転勤で、きちんとお別れも言えずにここから離れた気がする。あの頃の友達にも、もしかしたら会えるかもしれないんだ。
 スマホなんて持っていなかった小学生のあたしには、みんなとの繋がりは何もなくなっていた。もちろん、幼馴染だった恭ちゃんとも。お互い高校生。きっと、すっごく大人になっているんだろうな。
 急に吹いてきた突風に暴れる髪を押さえて、空を見上げた。あたしの頬に何かが張り付く。
 それは、どこから飛んできたのか、薄桃色の花びらだった。
 桜……? 
 あたりを見渡すけれど、桜の木はどこにもない。
 そっと、首から下げていた透明なスマホケースに花びらをしまった。
 駅前から母と一緒にタクシーに乗り込んだ。
 母がおばあちゃんちの住所を告げると、すぐに運転手の白髪のおじいさんは柔らかい笑顔で頷いて、車を出発させた。町並みから少し外れて坂を上る。田んぼ道に家が遠く見えてきた。


 タクシーから降りると、目の前に広がる風景に懐かしさが込み上げてきた。胸の中がじんわりと熱くなる。
 手入れされた広い庭と畑。鬱蒼うっそうとしていて子供の頃は不気味に見えていた家の後ろを囲む杉林は今見ると木漏れ日が差していて、まるで童話の森のようだった。
 縁側のある平屋の住まいは横に広く、何部屋もあった気がする。そんな記憶の中でも、はっきりと覚えていたりガラスの玄関の前で、あたしは感激していた。

「わぁ、おばあちゃん変わらないねー!」
「いらっしゃい、待ってたよぉ」

 白髪は増えたように感じるけれど、おばあちゃんの小柄で少しふっくらとしたまあるい姿と、腰の曲がり具合と笑顔はあの頃のままだ。
 あれ? でも、一つだけ違和感。

「おばあちゃん、ポチは?」

 犬小屋は見えるけれど、そこでいつもあたしが来ると耳を塞ぎたくなるほどうるさく吠えていたポチの姿がない。あたしはポチが苦手だった。だから、吠えられないに越した事はないのだが、いないはいないで、なんだか物足りない。
 あたしがそう言うと、おばあちゃんは少し悲しそうな顔になった。

「ああ、ポチはねぇ、去年亡くなったんだよ。もうずいぶん長生きだったから。ポチも、もう一度奏音ちゃんに、会いたかったかもねぇ」
「そう、なんだ」

 そうだよね、ポチはあたしが生まれる前からこの家にいたんだ。
 でもそっか、もう、いないのか。
 空の犬小屋を見て、寂しい気持ちになった胸元に手を置き、キュッと握った。

「ばあちゃんもしばらくは寂しくて、新しい子を迎え入れようかとも思ったんだけどね、もう自分のことだけで精一杯だなあって、諦めたんだよ」

 ふふふと笑うおばあちゃんは、どこかやっぱり母と似ている。
 おばあちゃんは、おじいちゃんが亡くなってからポチと暮らしていた。去年ポチが亡くなってからは、一人きりでこの大きな家にいたのかと思うと、やっぱり寂しい気持ちになった。

「おばあちゃん、一人でここにいて、寂しかったよね?」

 あたしがそっとおばあちゃんの丸くなった肩に手を当てて言うと、おばあちゃんの細い目尻にしわが増えていく。

「ふふふ、近所の人達がみんな家族みたいなもんだからねぇ、寂しくなんてないよ。そんなふうに思ってくれる奏音ちゃんは、優しい子だねぇ」

「お入り」と家の中へ曲がった腰を少しだけ伸ばして、おばあちゃんは玄関の段差を壁に手を置いて体を支えながらゆっくり進んでいく。
 母がそっとあたしの耳元で囁いた。

「おばあちゃんね、奏音が来ることをとても楽しみにしていたのよ。あたしも、いつまでもクヨクヨしていないで、頑張らなくちゃね」
「……お母さん」
「じゃあ、ただいま、しようか? 奏音。ここからまた、お母さんも奏音も素敵な生活を送っていけるように」
「うん」

 二人で並んで、まっすぐに姿勢を正す。
 伸ばした指先に力を込めて、一度互いに目を合わせた。それを合図に、「「ただいま」」と声を揃えて一歩を踏み出した。


   *


 居間に座って窓から庭を眺めた。雀が物干し竿にとまっている。おばあちゃんが緑茶を急須から湯呑みへと注ぐ音と雀のさえずりしか聞こえない。
 今まで騒がしい場所に居たんだなと実感する。
 それぐらい、外から聞こえる物音は、時折吹く強めの風に揺れて擦れる葉や枝の軋む音だけだった。
 横浜で過ごしてきた思い出話をしていると、開いていた窓からざかざかと庭の砂利を踏む音が聞こえてきた。

「おや、恭太くんかな?」

 おばあちゃんが湯呑みをテーブルへ戻すと、ゆっくりと腰を上げて立ち上がった。玄関から、話し声が聞こえてくる。

「こんにちは! とき子さん今日も変わりないっすか?」
「こんにちは、ありがとうね、変わりないよ。お入り」

 元気いっぱいな男の子の声が聞こえてきて、あたしはドキッと心臓が高鳴る。
 おばあちゃんがさっき、「恭太くん」と言っていた。
 もしかしたら、数年振りの恭ちゃんとの再会かもしれない。
 ギシギシと軋む廊下を歩いて居間に現れたのは、ガラス戸ギリギリの高い背丈をした短髪の男の子だった。戸をくぐり抜けるように部屋の中へと入ってくる。
 健康的な小麦色の肌に、白いTシャツから伸びる腕は筋肉質だ。
 何かスポーツでもやっているんだろう。
 その姿に圧倒されながら視線を上げると、ぱっちりと見開いた二重ふたえの瞳と目が合った。
 その瞬間、くるりと彼の瞳がきらめいた。

「マジで奏音ちゃんなの⁉」

 驚きの中に喜びが混じったような声で笑顔を見せた彼は、あたしの記憶の中の面影の恭ちゃんとぴったり重なった。笑った時に見える八重歯と両頬のエクボ。見上げるくらいの体格を除けば、あの頃の恭ちゃんそのままだ。

「恭ちゃん……、恭ちゃんだぁ」

 胸にじんっと熱いものが込み上げる。

「なんだよ、めちゃくちゃ可愛くなってんじゃん! 奏音ちゃん!」

 あたしの目の前に座って、恭ちゃんがニッと笑う。それに釣られて、あたしも照れながら笑顔になった。

「か、可愛いとか、恭ちゃんこそ」
「え! 俺も? マジで? かっこよくなった⁉」

 テーブルに両手を付いて、どんどん乗り出して近づいてくる恭ちゃんに、あたしは思わず大笑いしてしまう。

「あはははっ! ぜーんぜんっ変わらないねー!」

 元気いっぱいなとこも、声が大きいとこも、笑った顔も。大人っぽくはなっているけれど。

「あの頃のまま大きくなったって感じで、嬉しい!」
「えー! カッコいいって言ってほしかったんだけど!」

 すぐ目の前まで迫っていた顔はガックリと項垂うなだれた。と、思えばすぐに頬杖をついて、満面の笑みを浮かべて、こっちを見つめる。
 そんな恭ちゃんを見つつ、母は嬉しそうに笑った。

「恭太くんは変わらず元気ね。安心したわ」
「あ! 奏音ちゃんのお母さん? お久しぶりです……で良いんすかね? すみません、お母さんの顔までよく覚えてなくて」

 恭ちゃんは 母に向かってペコッと頭を軽く下げて笑う。

「ふふふ、奏音のことを覚えていてくれただけで十分よ。恭太くんに、奏音のこと任せてもいいかしら?」
「え! はいっ! もちろんっす! やった」

 なぜか小さくガッツポーズをしている恭ちゃん。
 そんなこんなで、恭ちゃんが今から学校案内をしてくれるということになった。母とおばあちゃんに送り出されて、あたしは恭ちゃんと並んで歩き出した。
 でも、途端に恭ちゃんは静かになった。しばらく二人で並んで歩く。
 さっきまで元気だった恭ちゃんがあんまり喋らなくなったのが不思議で、あたしは見上げるように恭ちゃんの顔をうかがう。あたしの視線に気が付いたのか、一瞬恭ちゃんがこちらを見た。でも、目が合ったはずなのにすぐに逸らされた。

「……恭ちゃん?」
「……ん、何?」
「もしかして、学校案内、面倒だって思ったりしてない?」

 せっかくの休みなのに、きっと予定があったのかもしれないのに。母からの連絡で、恭ちゃんはあたしのことを案内する役を突然頼まれて来てくれたけど、迷惑だったんじゃないかな。

「んなわけない! ってか、むしろ……嬉しいって、言うか……なんて、言うか」

 慌てて大きな声を出したかと思うと、最後は聞き取れないくらいに小さくなっていく声。
 うつむいて耳を赤くした恭ちゃんの姿に、一瞬目をみはる。
 恭ちゃんはそのまま足を止め、真面目な顔で言った。

「奏音ちゃんが突然転校していっちゃってさ、俺、寂しかったんだよ。だから、戻ってきてくれてすっげぇ嬉しい」

 その真剣な瞳に、胸の中がじんわりと暖かくなった。

「……うん、あたしも嬉しい」

 両親の離婚で、あたしだって気持ちが落ち込んでいた。昔住んでいた場所だからって、すぐに馴染める自信だってそこまでなかった。だけど、今は恭ちゃんがいてくれることがとても心強い。
 あたしたちは再度、学校へと向かう道をゆっくり歩きだした。
 小さい頃の記憶って意外と覚えているもので、あたしは学校までの道のりでいろんなことを思い出した。
 視線の先にある大きな木が目に留まる。

「あ、あそこって……」
「お! 覚えてる? よくあそこで集まって遊んだよな」
「やっぱり? 懐かしい。でもあんなに狭かったかなぁ」

 大きな木の下、空き地になっているその場所でよく鬼ごっこやかくれんぼ、ピクニックをしたはずだ。

「俺も思ったそれ! あの頃は大草原ってくらいに広く見えてたのに、不思議だなって」
「あー、わかる! 大草原っ、どこまでも走っていける気がしてた」
「大きくなったんだよ、俺ら」
「……確かに。恭ちゃん、あたしと変わらない身長だったはずなのに、見上げるくらいに大きいし」
「毎日牛乳飲んで鍛えてるからな! 奏音ちゃんと見える世界があの頃は一緒だったけど、今は俺の方が遠くまで見渡せる」

 額に手を当てて行く道の先を見つめる横顔が、こちらに向き直る。

「だからさ、なんでも頼ってくれて良いからな。その……俺も奏音ちゃんに、頼られたいし」

 照れたように頭を掻いて、こちらを向いた恭ちゃんに微笑んだ。

「うん、頼りにしてます」
「お、おう! まかしとけ」

 ひらり。


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