23 / 40
ツァトゥグアの恐怖
13 新山教授の協力
しおりを挟む大学の先輩とは言っても世話になった覚えはなく、正直、今日初めて会った人だった。
「つまり、先輩の御実家のある商店街を盛り上げるためのヒーロースーツをタダで作れと」
「すまん。ムシがいいのは分かってる。だが、うちの商店街、爺さん婆さんばかりで、そんなに予算がないんだ、最初は、商店街のマスコットキャラクターの着ぐるみでも作ろうかとも考えたんだが、それでも、人が入る着ぐるみ一着、数十万はくだらない、ちゃんとしたデザイナーに頼めば、もっとかかる。で、思い出したんだ、うちの大学に趣味でヒーロースーツを作ってるやつがいるって。で、それを着た動画をたくさんあげて、再生数を稼いで、開発費に回してるやつがいるって」「いえ、ヒーロースーツではなく、どちらかというと運動補助のパワードスーツです。近未来の戦争を想定した、核の放射能、細菌兵器などによる空気汚染下の劣悪な環境下でも活動できる完全防護戦闘服の研究です。動画を撮影してネットで公開しているのは、そのスーツの性能をアピールして世界中から開発資金を集めるためです」
「つまり、ヒーロースーツではなく、兵器だと」
「ええ、そうです、趣味ではなく、現実的な兵器開発です。ま。見てもらった方が早いでしょう」
俺は、先輩を、俺の工房の奥に案内した。
「まず、この一番下に着る、全身タイツみたいな黒いアンダーウェアですが、人工筋肉が織り込まれています」
「人工筋肉?」
「通常の人間の動きを補佐する収縮素材の総称です。例えば、相手を殴るとき、その腕の動きに合わせて、これが収縮して、その腕の動きを加速させます」
「??」
「ま、皮膚の上にもう一枚筋肉の層ができる感じです。あくまで動作の補佐ですから超人的な怪力になるわけではありません。で、これには防弾や耐熱衝撃吸収等の機能もありますから、これ一枚だけでも、結構な戦闘服だとは思います」
「ほぉ」
分かったのか分からないのかはっきりしない、曖昧な相槌を先輩はした。
「で、この上にさらにこっちのアーマーを装着することで、強度を高めた簡易パワードスーツになるというわけです。本当は兵器オプション付きの様々なアーマーを開発したいのですが、重武装の兵装開発となると、資金面や国内の法律等で、現状は、このアンダーウェアとこのアメフトのプロテクターに毛が生えたようなものしか作れてません」
「このアメフトもどきのプロテクターも十分かっこいいじゃないか」
「かっこいいだけじゃなくて、実用性がないと」
「とりあえず、このままでいいから、こいつを俺にヒーロースーツとして貸し出してくれないか」
「そんなに、こいつをヒーロースーツとして使ってみたいですか?」
「ああ、気に入った。ちょっと商店街のマークとか入れさせてもらうけど、基本は、このままで十分だ。貸してくれ」
「先輩が着ますか」
「いや、俺なんか来ても人気なんか出ない。俺の現役女子高生の妹にヒロインをやらせるつもりだ。現役女子高生ヒロイン、うけると思うだろ?」
「さ、こちらとしては、貸し出す条件として、アクションシーンでのデータをいただきたいですね。今まで、俺が着たデータだけなんで、他の人が着た場合のデータがないので」
「おい、現役女子高生が着ると聞いて、変なデータを取るつもりじゃないだろうな」
「そんなことはしませんよ、俺は純粋に技術バカなんで、十代の女子が身に付けたとき、どの程度の筋力アップ効果が出るか知りたいだけです」
そうして、俺のパワードスーツ開発は、地方の商店街活性化プロジェクトの一部に組み込まれたが、現役女子高生がスタントマンなしで、派手なアクションをこなすご当地ヒーローが誕生し、そんな俺のスーツの噂を聞きつけたハリウッドの連中が、スタントマンの怪我を減らせるとして俺のスーツを億単位で求めるようになり、近未来戦争を想定して作ったそれは、各国警察の特殊部隊に採用されたり、特殊災害救助隊の装備に採用されたりと、俺の予想とは外れて意外に軍事以外に多く使われるようになった。
「つまり、先輩の御実家のある商店街を盛り上げるためのヒーロースーツをタダで作れと」
「すまん。ムシがいいのは分かってる。だが、うちの商店街、爺さん婆さんばかりで、そんなに予算がないんだ、最初は、商店街のマスコットキャラクターの着ぐるみでも作ろうかとも考えたんだが、それでも、人が入る着ぐるみ一着、数十万はくだらない、ちゃんとしたデザイナーに頼めば、もっとかかる。で、思い出したんだ、うちの大学に趣味でヒーロースーツを作ってるやつがいるって。で、それを着た動画をたくさんあげて、再生数を稼いで、開発費に回してるやつがいるって」「いえ、ヒーロースーツではなく、どちらかというと運動補助のパワードスーツです。近未来の戦争を想定した、核の放射能、細菌兵器などによる空気汚染下の劣悪な環境下でも活動できる完全防護戦闘服の研究です。動画を撮影してネットで公開しているのは、そのスーツの性能をアピールして世界中から開発資金を集めるためです」
「つまり、ヒーロースーツではなく、兵器だと」
「ええ、そうです、趣味ではなく、現実的な兵器開発です。ま。見てもらった方が早いでしょう」
俺は、先輩を、俺の工房の奥に案内した。
「まず、この一番下に着る、全身タイツみたいな黒いアンダーウェアですが、人工筋肉が織り込まれています」
「人工筋肉?」
「通常の人間の動きを補佐する収縮素材の総称です。例えば、相手を殴るとき、その腕の動きに合わせて、これが収縮して、その腕の動きを加速させます」
「??」
「ま、皮膚の上にもう一枚筋肉の層ができる感じです。あくまで動作の補佐ですから超人的な怪力になるわけではありません。で、これには防弾や耐熱衝撃吸収等の機能もありますから、これ一枚だけでも、結構な戦闘服だとは思います」
「ほぉ」
分かったのか分からないのかはっきりしない、曖昧な相槌を先輩はした。
「で、この上にさらにこっちのアーマーを装着することで、強度を高めた簡易パワードスーツになるというわけです。本当は兵器オプション付きの様々なアーマーを開発したいのですが、重武装の兵装開発となると、資金面や国内の法律等で、現状は、このアンダーウェアとこのアメフトのプロテクターに毛が生えたようなものしか作れてません」
「このアメフトもどきのプロテクターも十分かっこいいじゃないか」
「かっこいいだけじゃなくて、実用性がないと」
「とりあえず、このままでいいから、こいつを俺にヒーロースーツとして貸し出してくれないか」
「そんなに、こいつをヒーロースーツとして使ってみたいですか?」
「ああ、気に入った。ちょっと商店街のマークとか入れさせてもらうけど、基本は、このままで十分だ。貸してくれ」
「先輩が着ますか」
「いや、俺なんか来ても人気なんか出ない。俺の現役女子高生の妹にヒロインをやらせるつもりだ。現役女子高生ヒロイン、うけると思うだろ?」
「さ、こちらとしては、貸し出す条件として、アクションシーンでのデータをいただきたいですね。今まで、俺が着たデータだけなんで、他の人が着た場合のデータがないので」
「おい、現役女子高生が着ると聞いて、変なデータを取るつもりじゃないだろうな」
「そんなことはしませんよ、俺は純粋に技術バカなんで、十代の女子が身に付けたとき、どの程度の筋力アップ効果が出るか知りたいだけです」
そうして、俺のパワードスーツ開発は、地方の商店街活性化プロジェクトの一部に組み込まれたが、現役女子高生がスタントマンなしで、派手なアクションをこなすご当地ヒーローが誕生し、そんな俺のスーツの噂を聞きつけたハリウッドの連中が、スタントマンの怪我を減らせるとして俺のスーツを億単位で求めるようになり、近未来戦争を想定して作ったそれは、各国警察の特殊部隊に採用されたり、特殊災害救助隊の装備に採用されたりと、俺の予想とは外れて意外に軍事以外に多く使われるようになった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

邪神大戦
綾野祐介
ホラー
この物語は決して書いてはいけない物語
今まで誰も書いていない物語。
それは決して書いてはいけない物語。
いったいそこで何が起こったのか。
いったいそこで何が起こらなかったのか。
混沌と秩序の戦いが始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


こちら御神楽学園心霊部!
緒方あきら
ホラー
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。
灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。
それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。
。
部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。
前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。
通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。
どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。
封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。
決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。
事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。
ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。
都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。
延々と名前を問う不気味な声【名前】。
10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる