98 / 105
第7章 王立図書館の章
第98話 転生者の理《ことわり》⑦
しおりを挟む
「よくここまで入って来れましたね」
「館長とは幼馴染なのでな」
「馬鹿を言うな、なぜ儂がお前と幼馴染などにならなければならんのだ。そろそろ500歳を超えているだろうに」
師匠と幼馴染であればワンナー館長も500歳くらいになってしまう。
「そうだったか?まあ、旧知の仲であることには間違いないだろう」
「それはそうだが、お前に入室の許可を与えた記憶がないぞ。不法侵入であれば牢獄行きだ」
館長は物騒なことを言う。ただ確かに無許可にここまで入って来たとすれば十分あり得る話だ。
「それは大丈夫だ、ちゃんと許可は取ってある」
「何?儂は聞いておらんが?」
「ほれ、国王直属の許可証だ」
館長が確認すると、それは間違いなく本物だった。
「なるほど、そう来たか。まあいい、素性は知れているのだ、問題は無かろう」
館長はあっさり認めてしまった。俺やエル・ドアンが苦労してここまで入って来たのに師匠はあっさり入って来たことには少し嫉妬してしまう。
「だが折角入って来たのに、お前たちはもう出てしまうのか?」
「そうです師匠、俺たちの目的はもう達してしまったので今から出るところなのです。でも師匠はどうしてここに?」
「儂か、儂はコータロー、お前を追って来たのだ」
「えっ、俺ですか?」
「そうだ。お前を訪ねて王都に入ったのだが、お前が王立図書館最深部に入ったと聞いてな」
「俺にどんな用があったのですか?」
「その二人の前では話せん」
ヴァルドアはサーリールとエル・ドアンの二人を指さした。
「なんだ、ヴァルドア。エル・ドアンはまだしも私にも言えないことなのか?」
「ちょっと待ってください。僕も仲間外れにしないでください」
ヴァルドアの目的はサーリールもエル・ドアンも気になるのだろう。それはそうだ、目の前で二人には話せない、と言われたのだから気にならない筈がない。
「悪いな、師匠と弟子の間での内密な話、という意味だ、それ以外に他意はない」
それは中々通用しないいい訳ではあったが、ヴァルドアにそう言われては引き下がらざるを得ない。
エル・ドアンは図書館を出たらすぐに俺との決着を付けようとしていたのだが、それも師匠が一緒であれば流石のエル・ドアンも二人同時に相手は出来ない。
俺は図書館を出ると師匠とキサラを連れて宿舎に戻った。そこで師匠の話を聞くことにする。
「それで俺に用とは?」
「それよりも助かったであろう」
「えっ?」
「エル・ドアンとの直接対決を回避できただろう、と言っておるのだ」
なるほど師匠の用の一端は俺とエル・ドアンの決着を先に延ばすことだったのか。
「でも師匠、どうしてそれを?」
「いや、少し前からあの場所に居ったからな、聞いていただけじゃ」
流石に師匠、あのメンバーに気が付かれないように潜んでいたのだ。確かに俺も声を掛けられるまで師匠の存在に気付かなかった。
「なるほど。という事は本来の用事は別にある、ということですね」
「そうじゃな。儂の目的という用事はあの場所でお前たちが得た知識を共有したい、ということじゃ」
そう来るとは思っていた。ただその知識の内容の何を、どの部分を師匠は知りたいのだろう。
俺たちが得た知識は異世界からの召喚・逆召喚方法。但し、それを使えるのはストラトス家の者ともう一つの家系の者のみ。
「師匠がそれを知ってどうするのですか?」
「儂か。多分サーリールと同じ、だろうな」
サーリールが俺やエル・ドアンと同じ本を探していたことは判っているが、確かにサーリールのその本の使い方は聞いてはいない。何がしたかったのか。
「サーリールと同じ、何です?」
「異世界渡り、じゃよ」
「師匠が俺が元居た世界に、ということですか?」
「そうじゃな。サーリールは自分の世界に戻りたい、というか行き来したい、ということが目的であっただろう。自ららがその魔法を使えるのであれば自由に行き来できるだろうて」
サーリールは元居た世界に戻りたかったのか。ただ500年ほどもこの世界に馴染んでいたのだから、今更ではないのだろうか?
エル・ドアンが元居た世界を支配したい、という欲望とは少し違う気がする。ただの郷愁なのかも知れない。元居た世界の敵対勢力との関係もよく判らないが。
師匠のそれはただの好奇心のように思える。師匠の場合500年も生きて来て、この世界に飽きた、というあたりか。
「それと、召喚魔法などという高位魔法を儂が使えない、というのも腹立たしいのでな」
それがもしかしたら一番の本音かも知れない。
「館長とは幼馴染なのでな」
「馬鹿を言うな、なぜ儂がお前と幼馴染などにならなければならんのだ。そろそろ500歳を超えているだろうに」
師匠と幼馴染であればワンナー館長も500歳くらいになってしまう。
「そうだったか?まあ、旧知の仲であることには間違いないだろう」
「それはそうだが、お前に入室の許可を与えた記憶がないぞ。不法侵入であれば牢獄行きだ」
館長は物騒なことを言う。ただ確かに無許可にここまで入って来たとすれば十分あり得る話だ。
「それは大丈夫だ、ちゃんと許可は取ってある」
「何?儂は聞いておらんが?」
「ほれ、国王直属の許可証だ」
館長が確認すると、それは間違いなく本物だった。
「なるほど、そう来たか。まあいい、素性は知れているのだ、問題は無かろう」
館長はあっさり認めてしまった。俺やエル・ドアンが苦労してここまで入って来たのに師匠はあっさり入って来たことには少し嫉妬してしまう。
「だが折角入って来たのに、お前たちはもう出てしまうのか?」
「そうです師匠、俺たちの目的はもう達してしまったので今から出るところなのです。でも師匠はどうしてここに?」
「儂か、儂はコータロー、お前を追って来たのだ」
「えっ、俺ですか?」
「そうだ。お前を訪ねて王都に入ったのだが、お前が王立図書館最深部に入ったと聞いてな」
「俺にどんな用があったのですか?」
「その二人の前では話せん」
ヴァルドアはサーリールとエル・ドアンの二人を指さした。
「なんだ、ヴァルドア。エル・ドアンはまだしも私にも言えないことなのか?」
「ちょっと待ってください。僕も仲間外れにしないでください」
ヴァルドアの目的はサーリールもエル・ドアンも気になるのだろう。それはそうだ、目の前で二人には話せない、と言われたのだから気にならない筈がない。
「悪いな、師匠と弟子の間での内密な話、という意味だ、それ以外に他意はない」
それは中々通用しないいい訳ではあったが、ヴァルドアにそう言われては引き下がらざるを得ない。
エル・ドアンは図書館を出たらすぐに俺との決着を付けようとしていたのだが、それも師匠が一緒であれば流石のエル・ドアンも二人同時に相手は出来ない。
俺は図書館を出ると師匠とキサラを連れて宿舎に戻った。そこで師匠の話を聞くことにする。
「それで俺に用とは?」
「それよりも助かったであろう」
「えっ?」
「エル・ドアンとの直接対決を回避できただろう、と言っておるのだ」
なるほど師匠の用の一端は俺とエル・ドアンの決着を先に延ばすことだったのか。
「でも師匠、どうしてそれを?」
「いや、少し前からあの場所に居ったからな、聞いていただけじゃ」
流石に師匠、あのメンバーに気が付かれないように潜んでいたのだ。確かに俺も声を掛けられるまで師匠の存在に気付かなかった。
「なるほど。という事は本来の用事は別にある、ということですね」
「そうじゃな。儂の目的という用事はあの場所でお前たちが得た知識を共有したい、ということじゃ」
そう来るとは思っていた。ただその知識の内容の何を、どの部分を師匠は知りたいのだろう。
俺たちが得た知識は異世界からの召喚・逆召喚方法。但し、それを使えるのはストラトス家の者ともう一つの家系の者のみ。
「師匠がそれを知ってどうするのですか?」
「儂か。多分サーリールと同じ、だろうな」
サーリールが俺やエル・ドアンと同じ本を探していたことは判っているが、確かにサーリールのその本の使い方は聞いてはいない。何がしたかったのか。
「サーリールと同じ、何です?」
「異世界渡り、じゃよ」
「師匠が俺が元居た世界に、ということですか?」
「そうじゃな。サーリールは自分の世界に戻りたい、というか行き来したい、ということが目的であっただろう。自ららがその魔法を使えるのであれば自由に行き来できるだろうて」
サーリールは元居た世界に戻りたかったのか。ただ500年ほどもこの世界に馴染んでいたのだから、今更ではないのだろうか?
エル・ドアンが元居た世界を支配したい、という欲望とは少し違う気がする。ただの郷愁なのかも知れない。元居た世界の敵対勢力との関係もよく判らないが。
師匠のそれはただの好奇心のように思える。師匠の場合500年も生きて来て、この世界に飽きた、というあたりか。
「それと、召喚魔法などという高位魔法を儂が使えない、というのも腹立たしいのでな」
それがもしかしたら一番の本音かも知れない。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
グライフトゥルム戦記~微笑みの軍師マティアスの救国戦略~
愛山雄町
ファンタジー
エンデラント大陸最古の王国、グライフトゥルム王国の英雄の一人である、マティアス・フォン・ラウシェンバッハは転生者である。
彼は類い稀なる知力と予知能力を持つと言われるほどの先見性から、“知将マティアス”や“千里眼のマティアス”と呼ばれることになる。
彼は大陸最強の軍事国家ゾルダート帝国や狂信的な宗教国家レヒト法国の侵略に対し、優柔不断な国王や獅子身中の虫である大貴族の有形無形の妨害にあいながらも、旧態依然とした王国軍の近代化を図りつつ、敵国に対して謀略を仕掛け、危機的な状況を回避する。
しかし、宿敵である帝国には軍事と政治の天才が生まれ、更に謎の暗殺者集団“夜(ナハト)”や目的のためなら手段を選ばぬ魔導師集団“真理の探究者”など一筋縄ではいかぬ敵たちが次々と現れる。
そんな敵たちとの死闘に際しても、絶対の自信の表れとも言える余裕の笑みを浮かべながら策を献じたことから、“微笑みの軍師”とも呼ばれていた。
しかし、マティアスは日本での記憶を持った一般人に過ぎなかった。彼は情報分析とプレゼンテーション能力こそ、この世界の人間より優れていたものの、軍事に関する知識は小説や映画などから得たレベルのものしか持っていなかった。
更に彼は生まれつき身体が弱く、武術も魔導の才もないというハンディキャップを抱えていた。また、日本で得た知識を使った技術革新も、世界を崩壊させる危険な技術として封じられてしまう。
彼の代名詞である“微笑み”も単に苦し紛れの策に対する苦笑に過ぎなかった。
マティアスは愛する家族や仲間を守るため、大賢者とその配下の凄腕間者集団の力を借りつつ、優秀な友人たちと力を合わせて強大な敵と戦うことを決意する。
彼は情報の重要性を誰よりも重視し、巧みに情報を利用した謀略で敵を混乱させ、更に戦場では敵の意表を突く戦術を駆使して勝利に貢献していく……。
■■■
あらすじにある通り、主人公にあるのは日本で得た中途半端な知識のみで、チートに類する卓越した能力はありません。基本的には政略・謀略・軍略といったシリアスな話が主となる予定で、恋愛要素は少なめ、ハーレム要素はもちろんありません。前半は裏方に徹して情報収集や情報操作を行うため、主人公が出てくる戦闘シーンはほとんどありません。
■■■
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる