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第7章 王立図書館の章
第95話 転生者の理《ことわり》④
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俺が入って来た扉が開いた。この部屋に入るには、その扉を開けるしかないのだ。
そして、そこからエル・ドアンが入って来たのた。
まず外から干渉してきていたエル・ドアンに対して意思の疎通のため魔法で会話をできるようにした。そして、俺が入って来た時の方法を試すよう伝えた。一発でOKだった。一定の期間ごとに入室方法が変わるのかも知れない。それがまだ変わっていなかったのだ。
「こんなところに隠れていたのですね」
「隠れていた訳ではないがな。入ったのはいいが出られなかっただけだ」
「もしかして、僕もここから出られないと?」
「ああ、その可能性も高い。だが出る方法はある。間違いなくな」
エル・ドアンを中に引き入れたのは、外で何か画策されても困るとの思いからだった。
「それより、どうやって最深部までは言って来たんだ?許可は下りなかっただろうに」
「普通の方法ではね。でも城で偶然シータ王女に会って、お願いしたらすんなり許可が出たのですよ」
「シータとはシータ・ラフティア・アリステリアス王女のことか」
「そうですよ。あなたはサーリールさんですよね。王女をご存知なのですか?」
「城で一度会った。アレは危険な女だ。魔法でどうこうできる存在ではない。多分私の魔法などでは太刀打ちできないだろう」
「なんだって。そんな化け物が王女なのか?」
「多分、と言っておるだろう。実際にやった事は無いので判らない」
「ただ、そう感じた、ということか。それは間違いなく化け物だと思った方がいいな。それでそのシータ王女の手配でここまで来た、という訳か」
「手配、というか彼女に連れて来てもらったのですが。多分今でも最深部のどこかに居る筈です。僕か消えたことに気が付いたら、もしかしたら彼女も中に入って来てしまうかも知れませんね」
「それは拙《まず》いな。少なくとも彼女には外で待っていて貰おう。ドアン先生、なんとか彼女に連絡をしてくれ」
「判りました。全員がここに閉じ込められる訳には行きませんね」
素直にエル・ドアンは応じた。とりあえず三人で外に出る算段を付けなければならない。
「この部屋には結界が張られている、ということでいいんですかね」
エル・ドアンはシータ王女と話が付かなかったようで、仕方なしに部屋を出る方法の探究にシフトし始めた。
「結界といえば結界でしょうね。それも特別強力な。私の魔法では解除できないくらいにはね」
「そんな。あんたに解除できないのなら誰にも出来ないだろうよ」
「もしかしたら、そこかも知れませんね」
「そこ?」
エル・ドアンは考えこんでしまった。何か見つけたのか?
「これとこれと、あとはこれか」
「ん?どうした?」
「持ち出すとすれば、この3冊、という意味だ」
サーリールか選んだ3冊は異世界関連のものばかりだった。異世界からの召喚方法、異世界召喚者の歴史、そして異世界に戻す方法。
そこには魔法の掛け方なども当然記載されていたが、読み進めていくと色々と障害があることが書かれていた。
そもそも異世界関係の魔法は誰にでも修行すれば使えるようになるものではない、ということだ。結局一子相伝ではないがストラトス家の者にしか使えない魔法、ということになる。あとは俺の場合のような超特殊なケースだ。
ただ、ストラトス家以外にも使える家系があるのだという。具体的に名前は記されていなかったが、ストラトス家だけの専売特許ではないようだ。
しかし名前が判らないのであれは探しようもない。
「探せばもっとあるのかも知れんが」
「俺はこれを持って出ることにする」
俺が持っていたのは日本語で書かれたあの日記だった。特に重要なことが書かれていた訳ではなかったのだが、やはり日本語が懐かしかったからだ。
「持ち出すものはそれで大丈夫ですか?」
考えが纏《まと》まったエル・ドアンか割り込んできた。エル・ドアンの目的は元の世界に戻る方法だけだ、今サーリールが持ち出そうとしている本で事足りる。
「それは大丈夫だが、出る方法が見つかったのか?」
「見つかる、というか、結界なので結界を解除する魔法を使う、という事だけです」
「おいおい、それはさっきもサーリールが言っていたけれど無理なんだぞ?」
「サーリールさん単独では、ね」
「どういう意味だ?」
「ここに居る三人で一気に結界を解除する、ということですよ」
なるほど、単純に三人で三倍の魔法を掛けることによって強制解除してしまう、ということか。強引ではあるが試してみる価値はある。
「そういうことか。やってみる価値はありそうだな」
「駄目で元々です」
「よし、サーリール、準備はいいか?」
サーリールの唱える結界解除の魔法を俺とエル・ドアンで重ねる。
「結界解除!」
本来は必要ないのだが俺が最後に叫んだ。やりたかっただけだ。
「どうだ?」
さっきまでは内側からは全く明かなかった扉が、簡単に開いた。
「やった、成功だ」
三人で一気に外に出る。そこは俺が入った場所だった。
そして、そこからエル・ドアンが入って来たのた。
まず外から干渉してきていたエル・ドアンに対して意思の疎通のため魔法で会話をできるようにした。そして、俺が入って来た時の方法を試すよう伝えた。一発でOKだった。一定の期間ごとに入室方法が変わるのかも知れない。それがまだ変わっていなかったのだ。
「こんなところに隠れていたのですね」
「隠れていた訳ではないがな。入ったのはいいが出られなかっただけだ」
「もしかして、僕もここから出られないと?」
「ああ、その可能性も高い。だが出る方法はある。間違いなくな」
エル・ドアンを中に引き入れたのは、外で何か画策されても困るとの思いからだった。
「それより、どうやって最深部までは言って来たんだ?許可は下りなかっただろうに」
「普通の方法ではね。でも城で偶然シータ王女に会って、お願いしたらすんなり許可が出たのですよ」
「シータとはシータ・ラフティア・アリステリアス王女のことか」
「そうですよ。あなたはサーリールさんですよね。王女をご存知なのですか?」
「城で一度会った。アレは危険な女だ。魔法でどうこうできる存在ではない。多分私の魔法などでは太刀打ちできないだろう」
「なんだって。そんな化け物が王女なのか?」
「多分、と言っておるだろう。実際にやった事は無いので判らない」
「ただ、そう感じた、ということか。それは間違いなく化け物だと思った方がいいな。それでそのシータ王女の手配でここまで来た、という訳か」
「手配、というか彼女に連れて来てもらったのですが。多分今でも最深部のどこかに居る筈です。僕か消えたことに気が付いたら、もしかしたら彼女も中に入って来てしまうかも知れませんね」
「それは拙《まず》いな。少なくとも彼女には外で待っていて貰おう。ドアン先生、なんとか彼女に連絡をしてくれ」
「判りました。全員がここに閉じ込められる訳には行きませんね」
素直にエル・ドアンは応じた。とりあえず三人で外に出る算段を付けなければならない。
「この部屋には結界が張られている、ということでいいんですかね」
エル・ドアンはシータ王女と話が付かなかったようで、仕方なしに部屋を出る方法の探究にシフトし始めた。
「結界といえば結界でしょうね。それも特別強力な。私の魔法では解除できないくらいにはね」
「そんな。あんたに解除できないのなら誰にも出来ないだろうよ」
「もしかしたら、そこかも知れませんね」
「そこ?」
エル・ドアンは考えこんでしまった。何か見つけたのか?
「これとこれと、あとはこれか」
「ん?どうした?」
「持ち出すとすれば、この3冊、という意味だ」
サーリールか選んだ3冊は異世界関連のものばかりだった。異世界からの召喚方法、異世界召喚者の歴史、そして異世界に戻す方法。
そこには魔法の掛け方なども当然記載されていたが、読み進めていくと色々と障害があることが書かれていた。
そもそも異世界関係の魔法は誰にでも修行すれば使えるようになるものではない、ということだ。結局一子相伝ではないがストラトス家の者にしか使えない魔法、ということになる。あとは俺の場合のような超特殊なケースだ。
ただ、ストラトス家以外にも使える家系があるのだという。具体的に名前は記されていなかったが、ストラトス家だけの専売特許ではないようだ。
しかし名前が判らないのであれは探しようもない。
「探せばもっとあるのかも知れんが」
「俺はこれを持って出ることにする」
俺が持っていたのは日本語で書かれたあの日記だった。特に重要なことが書かれていた訳ではなかったのだが、やはり日本語が懐かしかったからだ。
「持ち出すものはそれで大丈夫ですか?」
考えが纏《まと》まったエル・ドアンか割り込んできた。エル・ドアンの目的は元の世界に戻る方法だけだ、今サーリールが持ち出そうとしている本で事足りる。
「それは大丈夫だが、出る方法が見つかったのか?」
「見つかる、というか、結界なので結界を解除する魔法を使う、という事だけです」
「おいおい、それはさっきもサーリールが言っていたけれど無理なんだぞ?」
「サーリールさん単独では、ね」
「どういう意味だ?」
「ここに居る三人で一気に結界を解除する、ということですよ」
なるほど、単純に三人で三倍の魔法を掛けることによって強制解除してしまう、ということか。強引ではあるが試してみる価値はある。
「そういうことか。やってみる価値はありそうだな」
「駄目で元々です」
「よし、サーリール、準備はいいか?」
サーリールの唱える結界解除の魔法を俺とエル・ドアンで重ねる。
「結界解除!」
本来は必要ないのだが俺が最後に叫んだ。やりたかっただけだ。
「どうだ?」
さっきまでは内側からは全く明かなかった扉が、簡単に開いた。
「やった、成功だ」
三人で一気に外に出る。そこは俺が入った場所だった。
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