『絶対防御が結局最強』異世界転生って若い奴らの話じゃなかったのかよ、定年間近にはキツイぜ!

綾野祐介

文字の大きさ
上 下
84 / 105
第7章 王立図書館の章

第84話 王立図書館への道②

しおりを挟む
 翌日、俺とサーリールは朝から王都魔法学校に向った。授業がある日なのでキサラも一緒だ。

 問題はエル・ドアンに会わないように、ということだった。

「キサラ、今日の授業はどうなっている?」

「朝からドアン先生は古代魔法学の授業で忙しくしておられると思います。私はその講義は取っていませんので動けます」

「そうか。では俺とサーリールは校長に会って来るからドアンを見張っていてくれ」

「判りました」

 こうして俺はサーリールと連れだってゾルダン校長を訪ねた。

「すいません、今少しよろしいでしょうか?」

「なんだ、確かドアン先生のところのコータローとか言ったか。私に何の用かね?」

 校長は突然訪ねて来た俺を警戒しているようだ。特にドアンの生徒はあまりいいように思われてはいない。

「校長先生を知っている、と言う方をお連れしたのですが」

「私を知っている?誰だね、それは」

 そこで校長室にサーリールを招き入れた。

「私ですよ、ゾルダン家の末っ子」

「ん?あなたは誰です?どうも見ても見覚えはない」

 またか。サーリールが知っている、というのは本当に当てにならない。

「私に見覚えが無いと?あなたの父親にはとても世話を焼いてあげたものですが」

「父のことをご存知ですか?」

「ドムール・ゾルタンがあなたの父親であればな」

「ドムールは確かに父の名です」

「であるのなら、その末っ子も私は知っていますよ、当然幼子の頃のことですが」

 サーリールは校長が覚えていない幼子の時に父親の世話をした、と確認が取れないことを言っているのだ。当時の事を憶えている人がいれば確認されてしまうが、そうでなければ確認のし様がない。

「そうですか、それはお世話になりました。亡くなった父もサーリールさんに感謝していることと思います。実家の者に聞いてみましょう。それで今日はどのような御用で来られたのですか?」

 校長は言葉を選んで答えた。とても信用している風には見えないが相手の目的を確認しようとしているようだ。

「実は王立図書館に用があってね。それで口添えを頼めないかと」

 校長は閲覧不可の希覯書を見れるようにならないか、ということだと直ぐに察したようだ。

「なるほど。失礼ですが私が覚えていない以上サーリールさん、あなたのことを実家の者が覚えているかどうかを確認した上でないと、そのご依頼にはお応えできないと思います。確認している間、お待ちいただくことは可能でしょうか?」

 校長は本当に昔世話になっていたら、という一抹の不安もあるのだろう。ただ確認して本当だと判ったらどうするつもりなのだろうか。

「いいでしょう。時間は有ります、お待ちしていますので、よろしく」

 そういうとサーリールは俺を放置して出て行ってしまった。

「コータロー君、今の人は一体何者なんだ?」

「ゾルタン校長、申し訳ありません。僕も頼まれただけでよくは知らないのです。ただ出会ったのはロングウッドの森でした」

 俺は自分の目的のことは棚に上げておいて、ロングウッドの件は正直に話した。校長が身元確認のような事をするのであれば直ぐにバレることだと思ったからだ。

「なんとロングウッドの魔法使いなのか。ロングウッドには多くの特級や伝説級魔法士たちがそれぞれの結界の中で暮らしているとは聞いているが、私には知り合いはいないな。ロングウッドに出入りしている魔法士で知り合いと言えばヴァルドア・サンザールくらいのものだ」

「ヴァルドア師匠をご存知でしたか」

「なんだ、君はヴァルドアの弟子だったのか。道理で初級を受けに来ていた者を上級合格にさせてくれとドアン先生が言い出す訳だ」

「いや、弟子と言ってもほとんど修行は付けてもらっていませんが、一時期少し行動を共にしていました。シルザールで別れてそれキリですが」

 それから暫らくは師匠の話で盛り上がってしまった。入学してから校長とは殆ど話をしたことが無かったのだが、結構親しく成れたんじゃないか。サーリールでなくても俺が頼めばもしかしたら、とも思ったがそれは保険として残しておくことにした。

 それよりも校長の推挙があったとしても本当に見たい希覯書が閲覧可能かどうかは別の話になる。そしてやはり問題になるのは元の世界に戻る方法が記載されているかどうかだ。

「それと、これはオフレコでお願いしたいのですが」

「オフレコ?」

「ああ。申し訳ありません。他言無用でお願いしたいのですが」

「うむ。それはいいのですが、一体何の話ですが?」

「ドアン先生の件です。ドアン先生からさっきの話と同じように王立図書館の希覯書を見れるよう頼まれたことはありませんか?」

 校長は少し考えてから応えた。

「そういえば少し前に頼まれたことがありましたね。結局彼の希望には添えませんでしたが」

「添えなかったのですか?」

「ええ。彼が探しているという希覯書は私がお願いして許された保管所には無かったようです。私には全ての保管所への立ち入り許可を得られる権限はありません」

 そうか、校長でも駄目だったのか。ドアンが見つけられなかったのだ、校長の手配で入室が許可される保管所には無いのだ。

「そうでしたか。ではドアン先生は目的を達せられなかったということですね」

 それはそうだろう。もし彼の目的が達成していたとしたら既にこの世界には居ない筈だ。

「彼はそう言って落胆していましたね。ただまだ可能性はあるとも言っていました。私の権限では無理だったことを彼が何らかの方法で成し得るとしたら、彼の目的は達することが出来るでしょう」

 校長は何処まで知っているのだろうか。ドアンや俺たちが何をするために希覯書を探しているのか、全部理解した上で言っているのだろうか。

「ドアン先生の希望が叶うといいですね。では僕はこれで失礼します」

 俺は心にも無いことを言って校長室を辞した。サーリールの目的は判らないが俺にとっては校長の力を借りても無駄なことが判った。

 サーリールがどうするのか、確認しなければならない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...