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第7章 王立図書館の章
第83話 王立図書館への道
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王都に戻った俺はすぐさま自室にサーリールを連れて行った。そこにはキサラが居た。
「コータロー様、お戻りになられたんですね。あ、その方は」
「ああ、ロングウッドで会ったサーリール・ランドだ」
キサラはサーリールのことを憶えているようだったがサーリールの方はどうだか判らない。
「そうでしたね。それでロングウッドの森で何か収穫は有りましたか?」
キサラは突然消えてしまったサーリールに良い感情を持っていない様だった。役に立つのか不安だとでも言いそうな顔だ。それは俺にも判らない。
「途中でサーリールに会って、王立図書館に行くって言うんで一緒に戻って来たんだ。校長も知り合いみたいだったし」
サーリールの知っているは当てにならないとも思う。ただナーザレスやルナの件は何か絡繰りがあるのではないかと見ている。
「本当なのですか?」
「なんだ失礼な女だな。私が嘘を吐いているとでもいうのか?」
「今まで本当の事を仰ったことがあるのですか?」
キサラは俺以外には辛辣だ。
「ほほう、そこまで言うのは逆に面白い。少し気に入った」
少し、なのだな。
「いいよ、キサラ。校長に会えば判ることだ。明日にでも魔法学校に連れて行こうと思っている」
「大丈夫ですか?」
「まあ何とかなるだろう。出来ればエル・ドアンには知られたくないんだが」
「では明日は魔法学校に行く、でいいな。私は出かけて来る」
「おい、どこに行くんだ?」
「知り合いも居る、と言っていただろう。ちょっと訪ねて来る」
そう言うとサーリールは止める二人を無視して出て行ってしまった。
「なんだか掴みどころのない奴だな」
「信用しない方がいいのではありませんか?」
「信用なんてしてないさ。利用できるかどうかを見極めるつもりではあるがな」
「判っておられるのであれば何も言いませんが。それにしてもサーリール本人の目的は何なのでしょうか。こちらの目的は?」
「言ってない。ただ閲覧不可能な希覯書を見たいから方法がないか?と聞いただけだ。サーリールも同じようなことを考えていた、と言うのは少し出来過ぎの様にも思えるが」
王立図書館で稀覯書を閲覧するには図書館長の許可が必要だった。ただこの許可か滅多なことでは降りない。
王族の申請でも許可されないことがほとんどらしい。ただ王族からの申請は本人ではなく金で頼まれた第三者のための申請が多かったので却下されているのだ。その辺りは厳しく運用されている。
そしてもう一つ、物理的に保管所に入り込もうとする者への対処もある。壁抜けで簡単に入られてしまっては意味がないのだ。
保管所の壁には壁抜けを拒絶する魔法が掛けられており、その魔法は常に更新されている。そうしないと徐々に効力が落ちて来るからだ。
毎日常に新しい魔法が掛けられ続けている。それを行っているのは専門の魔法使いだ。特級ではないが専門の上級魔法士が毎日代わる代わるに魔法が掛け続けている。
これを破るには特級魔法士では不可能だと言われている。実際破った魔法使いは今まで居ない。ただ伝説級魔法使いに襲撃されたこともなかった。
「色々と調べてくれたんだな、ありがとうキサラ」
「はい、でも結局解決策は何一つ見つけられませんでした」
「いいよ、それは俺に任せておいてくれ」
俺にいい算段が有る訳ではなかった。サーリールが役に立たなければ自分でなんとかしなければならないのだ。なんとしてもエル・ドアンより先に希覯書を見付けなければならない。
ただ、どんな名前の書物に元の世界に戻る方法の記述が書かれているのかも判らない。そもそも希覯書保管所に保管されている書物に必ず記述がある確証も無いのだ。
「でもコータロー様、本当にそんなことが書かれている書物はあるのでしょうか?」
キサラの思いも一緒だった。もし無ければ無駄な努力をしていることになる。
「エル・ドアンの動向をみると有るんだろう。もしかしたらあいつも判ってないのかも知れないが」
「ドアン先生はどのような方法で見つけるおつもりなのでしょうか」
「それが判ったら苦労してないよ」
「それはそうなのですが、ドアン先生でさえ見つけられないとすると、やはり元々無いのかも知れません」
「いや、俺は有ると踏んでいる」
「それはどうして?」
「勘だ」
「勘とは?」
どうもこの世界では勘というものは働かないらしい。俺には説明する術がなかった。
「いや、まあ、いい。忘れてくれ」
キサラはそれ以上聞かなかった。そして深夜になってサーリールが戻って来た。何処に行っていたのかは聞いても答えなかった。
「コータロー様、お戻りになられたんですね。あ、その方は」
「ああ、ロングウッドで会ったサーリール・ランドだ」
キサラはサーリールのことを憶えているようだったがサーリールの方はどうだか判らない。
「そうでしたね。それでロングウッドの森で何か収穫は有りましたか?」
キサラは突然消えてしまったサーリールに良い感情を持っていない様だった。役に立つのか不安だとでも言いそうな顔だ。それは俺にも判らない。
「途中でサーリールに会って、王立図書館に行くって言うんで一緒に戻って来たんだ。校長も知り合いみたいだったし」
サーリールの知っているは当てにならないとも思う。ただナーザレスやルナの件は何か絡繰りがあるのではないかと見ている。
「本当なのですか?」
「なんだ失礼な女だな。私が嘘を吐いているとでもいうのか?」
「今まで本当の事を仰ったことがあるのですか?」
キサラは俺以外には辛辣だ。
「ほほう、そこまで言うのは逆に面白い。少し気に入った」
少し、なのだな。
「いいよ、キサラ。校長に会えば判ることだ。明日にでも魔法学校に連れて行こうと思っている」
「大丈夫ですか?」
「まあ何とかなるだろう。出来ればエル・ドアンには知られたくないんだが」
「では明日は魔法学校に行く、でいいな。私は出かけて来る」
「おい、どこに行くんだ?」
「知り合いも居る、と言っていただろう。ちょっと訪ねて来る」
そう言うとサーリールは止める二人を無視して出て行ってしまった。
「なんだか掴みどころのない奴だな」
「信用しない方がいいのではありませんか?」
「信用なんてしてないさ。利用できるかどうかを見極めるつもりではあるがな」
「判っておられるのであれば何も言いませんが。それにしてもサーリール本人の目的は何なのでしょうか。こちらの目的は?」
「言ってない。ただ閲覧不可能な希覯書を見たいから方法がないか?と聞いただけだ。サーリールも同じようなことを考えていた、と言うのは少し出来過ぎの様にも思えるが」
王立図書館で稀覯書を閲覧するには図書館長の許可が必要だった。ただこの許可か滅多なことでは降りない。
王族の申請でも許可されないことがほとんどらしい。ただ王族からの申請は本人ではなく金で頼まれた第三者のための申請が多かったので却下されているのだ。その辺りは厳しく運用されている。
そしてもう一つ、物理的に保管所に入り込もうとする者への対処もある。壁抜けで簡単に入られてしまっては意味がないのだ。
保管所の壁には壁抜けを拒絶する魔法が掛けられており、その魔法は常に更新されている。そうしないと徐々に効力が落ちて来るからだ。
毎日常に新しい魔法が掛けられ続けている。それを行っているのは専門の魔法使いだ。特級ではないが専門の上級魔法士が毎日代わる代わるに魔法が掛け続けている。
これを破るには特級魔法士では不可能だと言われている。実際破った魔法使いは今まで居ない。ただ伝説級魔法使いに襲撃されたこともなかった。
「色々と調べてくれたんだな、ありがとうキサラ」
「はい、でも結局解決策は何一つ見つけられませんでした」
「いいよ、それは俺に任せておいてくれ」
俺にいい算段が有る訳ではなかった。サーリールが役に立たなければ自分でなんとかしなければならないのだ。なんとしてもエル・ドアンより先に希覯書を見付けなければならない。
ただ、どんな名前の書物に元の世界に戻る方法の記述が書かれているのかも判らない。そもそも希覯書保管所に保管されている書物に必ず記述がある確証も無いのだ。
「でもコータロー様、本当にそんなことが書かれている書物はあるのでしょうか?」
キサラの思いも一緒だった。もし無ければ無駄な努力をしていることになる。
「エル・ドアンの動向をみると有るんだろう。もしかしたらあいつも判ってないのかも知れないが」
「ドアン先生はどのような方法で見つけるおつもりなのでしょうか」
「それが判ったら苦労してないよ」
「それはそうなのですが、ドアン先生でさえ見つけられないとすると、やはり元々無いのかも知れません」
「いや、俺は有ると踏んでいる」
「それはどうして?」
「勘だ」
「勘とは?」
どうもこの世界では勘というものは働かないらしい。俺には説明する術がなかった。
「いや、まあ、いい。忘れてくれ」
キサラはそれ以上聞かなかった。そして深夜になってサーリールが戻って来た。何処に行っていたのかは聞いても答えなかった。
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