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第7章 王立図書館の章

第82話 サーリール・ランド

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 そこからはサーリールと王都に向かっての二人旅だった。途中、色々と話をするが、話せば話すほど常識的な普通のおっさんだった。

 見た目は四十代半ばくらいか。ただロングウッドの魔法使いは見た目では判断できない所があるので何とも言えない。

「でも本当はナーザレスもルナも知っているんだろ?」

「そうだな、知っていると言えば知っている。こちらは知っているがあちらは知らない、とも言うか」

 それは知らない、ってことじゃないのか?

「よく判らないがそれはやっぱり知り合いではない、ということじゃないのか?」

「そう言うものか。まあいいではないか、それよりも王立図書館が大事ではないのか?」

「それはそうなんだが。正体は明かしてくれないんだな」

 変に探っても仕方ないので直接本人の口から聞けないかと思ったのだが、話す気はないらしい。

「お前も自分の話はしないではないか」

 そう言えば俺もちゃんとした自己紹介が出来ていなかったか。俺は腹を割って異世界から来たことや若返ったことを話した。

 サーリールは魔力量探知にも長けていたので俺のマナの量の絡繰りもだ。そして本来の寿命でなければ死なないこともだ。それを織り込んでの希覯書を読む作戦が立てられれば、と思ったからだ。

「なるほど色々とあるものだな」

「俺が話したんだ、お前のことも話してくれないのか?それにロングウットで俺と別れた後はどうしていたんだ?」

「ああ、あの後か。お前の連れに家を明け渡してしまったんで別の棲家に移っただけだ」

「別の棲家ね。でもあの家はナーザレスの別荘だと言ってたが?」

「そうとも言うかな」

 サーリールの話は結果意味が判らない。

「で、結局あんたは何者なんだ?」

「最初に言っただろう、ロングウッドの魔法使いだ」

 確かに最初に言ってはいたが、それでは何も判らない。

「それ以上は話す気が無い、ってことか。お互いを信頼するにはもう少し話をして欲しいものなんだがな。まあいい、王立図書館で活躍してくれればそれでいい。期待しているからな」

「あまり私を信用しない方がいいかも知れないぞ。自分でも信用していないのだからな」

 何処まで行っても理解できない変な奴だ。結局それ以上サーリールは自分のことを話すことはなかった。

「明日にはもう王都に着くけど、着いたらどうするんだ?」

「そうだな、とりあえずは知り合いを訪ねてみるとするか」

「王都に知り合いなんているんだな」

 ロングウッドの魔法使いたちはほとんど森を出ないと思っていたので少し意外だった。

「昔からの知り合いは結構いるぞ。最近の友たちも居ないことはない」

 なんだか友好関係は広いらしい。

「その中に役に立ちそうなやつはいるのか?」

「そうだな、直接王立図書館の関係者は居なかったかも知れん。王都魔法学校なら確か居たはずだが」

「魔法学校?俺は今一応そこに通っているんだが、誰だろうか」

「確か名はローワンとか言ったか」

「スージール・ローワンか。それは役には立たない知り合いだな」

「なんだ、あの男は役には立たないのか」

「そうだな、公士ではあるがそれほど王立図書館に顔が効くとも思えない。せめて校長あたりならよかったんだが」

「校長?今の校長は誰なんだ?」

「ワルク・ゾルダン特級魔法士が今の校長だが知っているのか?」

「ワルク?ワルク・ゾルダンだと?ゾルダン家の末っ子か」

「末っ子かどうかは知らないが、末っ子だったら知っているのか?」

「うむ、多分父親ならよく知っているのだがな。私を憶えているかどうか、一度王都に着いたら訪ねてみるのもいいかも知れない」

「それなら案内するが。校長の権限で閲覧不可の希覯書が読める可能性はあるのだろうか?」

 それが問題だった。校長ですら無理、となるとやはり荒事が必要になるかも知れない。ジョシュアを連れてきた方がよかったか?

「そこまでは校長本人に聞いてみないと判らないな。協力してくれるかどうかも判らない。もしかしたら私のことを親の仇だと思っているかも知れない」

「なんだ、どうした?校長の父親と何があったんだ?」

 親の仇だと?よくそんな相手に協力を求めようと思ったものだ。

「いや、特に何もないが?もしかしたら、と言っただろう」

 やはりサーリールは何かが可笑しい。少し何かが足りないのか少し何かが多いのか。通常の思考からは辿り着けない言葉を紡ぐのは才能なのか天然なのか。

「判った、判った。王都では泊る所も無いのだろう。俺が使っている宿に泊まるといい」

「それは有難い、何も考えていなかったからな。お前、実はいいやつだな」

「悪い奴だと思っていたのか、俺は普通にいい奴だぞ?」

「お前の知り合いにとっては良い奴かも知れないが、お前の敵にとっては飛んでもない奴だろう」

「褒め言葉だと聞いておこう」

 こうして俺たちは王都に戻って来たのだった。




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