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第6章 魔法学校の章
第79話 王都で色々と聞いてみた
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「日本語上手いね、流石は日本語教師だ」
「完全にバレていますね。まあ日本語を使ったんだから当たり前ですか」
「ジョン・ドウって名乗っていたんだろ?」
「そうですね。あなたはちゃんと本名を名乗っておられるのに僕は少し躊躇ってしまいました」
まあその気持ちは判らなくもない。異世界に放り出されて何も判らなかったのだ、自分の名前がどう影響を与えるのか、それが有利に働くのか不利になってしまうのか全く持って判らないのだ。
「本当に名は何て言うんだ?」
「本当の名前ですか。もう忘れてしまいましたよ。ここではもう僕はエル・ドアンです。それ以外ではありません」
何かがあったのだろう。それが何かは判らないが彼をこんな風にしてしまうほどの何かがあったのだ。
「それならそれでいいさ。で、俺があんたの正体を探っていることに気か付いていたんだろ?それなのに今日の誘いに乗ったのは、そろそろバレる頃だと思ったからか?」
「まあ、そんなところです。別にバレてもいい、とは常々思っていましたから。ただ僕がジョン・ドウだと知っているのは今のところ養父と君だけです」
養父とはドアン商会会頭トール・ドアンのことか。やはりトールは全てを知った上で彼を王都魔法学校に送り込んだのだ。その目的は知れないが。
「それで知ってしまった俺を殺すかい?」
「まさか。知られて拙いことは何もありませんよ。態々話していないだけです」
それは無いだろう。若返りの魔法なんて公言する様なものではなく、ほぼ反則のようなものだ。
「よかった、殺されないのなら、飯を食おう」
それから俺たちは普通に食事を勧めた。エル・ドアンは店員が部屋を出てから少しだけ酒を飲んだ。
「ここの酒はあまり美味くないですね、向こうの世界の方が随分良質です。特に日本酒はいい」
「確かに日本酒は美味いな。こういった料理も合う」
「ええ、素晴らしいと思います」
「で?」
「で、と言いますと?」
「なんで若返りの魔法を自分に掛けたんだ?」
「ああ、そこまで判ってらっしゃるんですね。そうです、僕はロングウッドに立ち寄った時にナーザレスから若返りの魔法を教えてもらいました」
「どんでもなくマナがいったろ?」
「まあ、そこはなんとか」
「チートを色々と貰ったのか?」
「そうです。僕はこの世界に来た時、すでに伝説級魔法士並の魔法が使え、それに十分なマナの量を有していました」
「なんで、お前はそんなに優遇されてんだ?」
「僕は優遇されていたんですか?」
俺は今までの俺の実情を話した。俺には全くチート能力のギフトは無かったのだ。
「なるほど、死なないのは元の寿命の所為で、それ以外には何一つギフトも無かったんですか、それは大変でしたね」
「大変も、大変。なんでお前は何でもアリなんだよ」
「日頃の行いの所為ですかね?」
「おい」
「冗談ですよ。で、僕がジョン・ドウだと知ってあなたはとうするつもりですか?」
俺は本当の目的を正直に包み隠さず話した。同じ転生者同士通じ合うものがあるはずだ。
「なるほど、確かに少し前に依頼を受けて人探しをしましたね。校長からの達ての頼みだったので少し断り難かったのです。あの件にあなたが絡んでいたのですね」
「まあな。俺の友達の命が掛かっているんだ」
「それなら安心してください。アレはあの時一度限りという約束でしたから再度依頼されても僕が従うことは有りません」
案ずるより産むが易し、とは正にこのことか。色々と考えなくてもドアンはもう二度とジョシュア探索には協力しない、と言うのであれば元々俺は何もする必要が無かったのだ。
俺はラム・シーリンのことも含めて心から謝罪した。
「ああ、アレはあなたの仕業だったんですね。まあ少しは気晴らしになりましたから気にしないでください」
「悪かったな。そうだ、それでお前は元居た世界では何歳だったんだ?」
「僕は、そうですね、前居た世界では34歳でした。ここに来てから6年になりますから本当なら40歳ですね」
「なるほど。俺は元居た世界では60歳くらいだから、まあ、俺が年上ってことでいいな」
「この世界では僕の方が先輩ですがね」
なんだ、早く来た方が先輩で先輩風でも吹かせたいのか?
「じゃあ、先輩って呼ぼうか?」
「いいえ、ドアンと呼び捨てで結構ですよ」
「そんなわけにも行かないだろう。お前は教師、俺は生徒なんだからな。でもそう言えは何で魔法学校の教師なんてやっているんだ?」
教師になってまでしなければならないことでも有るのか。生活に困っていた訳でも無い筈だし、よく判らない。
「探したい魔法があるんですよ」
「探したい魔法?」
「そうです。あなたは無いのですか?」
「特にないな。ここに来て世話になって人達に恩返しをしたい、ってことがとりあえずの目的かな。お前のこともその一環だし」
「そうなんですね」
「で、その魔法って?」
「ああ、勿論元の世界に戻る魔法ですよ」
当り前のようにエル・ドアンは言った。
「完全にバレていますね。まあ日本語を使ったんだから当たり前ですか」
「ジョン・ドウって名乗っていたんだろ?」
「そうですね。あなたはちゃんと本名を名乗っておられるのに僕は少し躊躇ってしまいました」
まあその気持ちは判らなくもない。異世界に放り出されて何も判らなかったのだ、自分の名前がどう影響を与えるのか、それが有利に働くのか不利になってしまうのか全く持って判らないのだ。
「本当に名は何て言うんだ?」
「本当の名前ですか。もう忘れてしまいましたよ。ここではもう僕はエル・ドアンです。それ以外ではありません」
何かがあったのだろう。それが何かは判らないが彼をこんな風にしてしまうほどの何かがあったのだ。
「それならそれでいいさ。で、俺があんたの正体を探っていることに気か付いていたんだろ?それなのに今日の誘いに乗ったのは、そろそろバレる頃だと思ったからか?」
「まあ、そんなところです。別にバレてもいい、とは常々思っていましたから。ただ僕がジョン・ドウだと知っているのは今のところ養父と君だけです」
養父とはドアン商会会頭トール・ドアンのことか。やはりトールは全てを知った上で彼を王都魔法学校に送り込んだのだ。その目的は知れないが。
「それで知ってしまった俺を殺すかい?」
「まさか。知られて拙いことは何もありませんよ。態々話していないだけです」
それは無いだろう。若返りの魔法なんて公言する様なものではなく、ほぼ反則のようなものだ。
「よかった、殺されないのなら、飯を食おう」
それから俺たちは普通に食事を勧めた。エル・ドアンは店員が部屋を出てから少しだけ酒を飲んだ。
「ここの酒はあまり美味くないですね、向こうの世界の方が随分良質です。特に日本酒はいい」
「確かに日本酒は美味いな。こういった料理も合う」
「ええ、素晴らしいと思います」
「で?」
「で、と言いますと?」
「なんで若返りの魔法を自分に掛けたんだ?」
「ああ、そこまで判ってらっしゃるんですね。そうです、僕はロングウッドに立ち寄った時にナーザレスから若返りの魔法を教えてもらいました」
「どんでもなくマナがいったろ?」
「まあ、そこはなんとか」
「チートを色々と貰ったのか?」
「そうです。僕はこの世界に来た時、すでに伝説級魔法士並の魔法が使え、それに十分なマナの量を有していました」
「なんで、お前はそんなに優遇されてんだ?」
「僕は優遇されていたんですか?」
俺は今までの俺の実情を話した。俺には全くチート能力のギフトは無かったのだ。
「なるほど、死なないのは元の寿命の所為で、それ以外には何一つギフトも無かったんですか、それは大変でしたね」
「大変も、大変。なんでお前は何でもアリなんだよ」
「日頃の行いの所為ですかね?」
「おい」
「冗談ですよ。で、僕がジョン・ドウだと知ってあなたはとうするつもりですか?」
俺は本当の目的を正直に包み隠さず話した。同じ転生者同士通じ合うものがあるはずだ。
「なるほど、確かに少し前に依頼を受けて人探しをしましたね。校長からの達ての頼みだったので少し断り難かったのです。あの件にあなたが絡んでいたのですね」
「まあな。俺の友達の命が掛かっているんだ」
「それなら安心してください。アレはあの時一度限りという約束でしたから再度依頼されても僕が従うことは有りません」
案ずるより産むが易し、とは正にこのことか。色々と考えなくてもドアンはもう二度とジョシュア探索には協力しない、と言うのであれば元々俺は何もする必要が無かったのだ。
俺はラム・シーリンのことも含めて心から謝罪した。
「ああ、アレはあなたの仕業だったんですね。まあ少しは気晴らしになりましたから気にしないでください」
「悪かったな。そうだ、それでお前は元居た世界では何歳だったんだ?」
「僕は、そうですね、前居た世界では34歳でした。ここに来てから6年になりますから本当なら40歳ですね」
「なるほど。俺は元居た世界では60歳くらいだから、まあ、俺が年上ってことでいいな」
「この世界では僕の方が先輩ですがね」
なんだ、早く来た方が先輩で先輩風でも吹かせたいのか?
「じゃあ、先輩って呼ぼうか?」
「いいえ、ドアンと呼び捨てで結構ですよ」
「そんなわけにも行かないだろう。お前は教師、俺は生徒なんだからな。でもそう言えは何で魔法学校の教師なんてやっているんだ?」
教師になってまでしなければならないことでも有るのか。生活に困っていた訳でも無い筈だし、よく判らない。
「探したい魔法があるんですよ」
「探したい魔法?」
「そうです。あなたは無いのですか?」
「特にないな。ここに来て世話になって人達に恩返しをしたい、ってことがとりあえずの目的かな。お前のこともその一環だし」
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「で、その魔法って?」
「ああ、勿論元の世界に戻る魔法ですよ」
当り前のようにエル・ドアンは言った。
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