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第6章 魔法学校の章
第75話 王都でラブロマンス花盛りだ
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エル・ドアンとラム・シーリンは順調に親しくなっていった。特別なことをしなくてもいい感じに恋が芽生えそうだった。
俺は最初のうちは隠蔽魔法を使って姿を隠して見守っていたが、そのうちあまりにも順調なのでラムに任せて特に関わらないようにしていた。その方が俺が変に指示を出すより上手く行くような気がしたからだ。
授業の方も順調だったがノート・クリストは俺のマナの量を大まかではあるが探知することに成功しエル・ドアンから上級魔法士の資格を与えられることに成功していた。
他の生徒は誰も居れのマナの量に気が付けない。当然ノートも言わないので他には上級試験を免除される者は出なかった。やはり王都魔法学校の中でもエリートのエル・ドアン教室の生徒であっても探知魔法に長けた者は少ないのだ。
これであればエル・ドアンを足止めさえできればジョシュア達を見付けることは出来ないと思えた。特にロングウッドの森は複数の魔法士の結界が重複して張られているのだ、特に難しいだろう。
「当初の目的は達したな」
「これで大丈夫でしょうか」
「まあ、エル・ドアン以上に探知魔法に長けた魔法士が出張ってくなければ大丈夫だろう」
その時俺の脳裏にはふとある男の顔が浮かんだが直ぐに消えた。あいつはセリスの為にならないことをやるはずがない。自分の思いを押し殺しても絶対に在り得ない、そんな男だ。
「最近ドアン先生の授業は休みがちだけど、何かあったんだろうか?」
生徒の中でも真面目な18歳のマックレーン・ソーズが心配して言う。
「春だからなぁ」
俺は意味不明なことを言って煙に巻いた。
「授業はいつも適当だからいいけど、試験対策はちゃんとやって欲しいんだけどな」
エル・ドアン教室の最年長18歳3名は全員上級試験に落ちている。次は半年先だが準備や対策は必須だろう。
「キサラに聞いてみたらどうだ?」
俺は一応真面なことを言ってみた。キサラの手を煩わせることになるが生徒同士仲良くなるのも悪くない。
「そうだな、経験者の意見は貴重だ。君は特例だから参考にならないけど」
「うん、俺は何の役にも立たない」
「そこまでは言ってないが。それにしても本当にノートは上級に合格したんだから、そう言う意味では君も一役買っていることになる」
「まあ、そう言う見方もあるか」
マックレーンは生真面目すぎる。家が子爵家でそれほど大きな貴族ではないのでマックレーンが上級になって王属魔法士にでもなれば、と期待されているのだ。その期待に応えようとしているのは痛いほど見ていて判る。
なんとかしてやりたいが、ノートが気づいたことを教える訳にもいかない。ノートはあれからエル・ドアンに直接探知魔法を教えてもらっているらしい。
一度ちゃんと俺のマナ量も含めて隠蔽魔法が有効なのかどうかをノートで試してみよう、と思っている。
「コータロー様、なんだかマックレーンが執拗いんですけど」
「ああ、悪いな、俺がキサラに聞いたら、って言ったんだ」
「そうなんですね。上級試験の合格法とか言われても単に様々な魔法を磨くしかありませんから私から教えられることなんてありません」
「そうなんだな。なにかコツとかないのか?」
「ありませんよ、日々の鍛錬あるのみです」
そういえばキサラも真面目な奴だった。案外マックレーンと気が合うんじゃないか?
「日々の鍛錬か、割と俺はやってる方だがな」
俺は今でもマナの量を増やす薬を飲み続けている。上限は無いのだ。だが一度に増える量はどんどん少なくなってきている。それでも習慣になっているので辞められないのだ。
次の日もエル・ドアの授業は休みだった。ラムとお出かけのようだ。ラムが作ったお弁当持参で花見の名所に出かけているらしい。
俺はその日の夜にラムから進捗状況について報告を受けることになっていた。娼館『黒蝶の館』へと向かう。
「ラム、ご苦労様だな」
「コータロー様、はい、今日も二人でお出かけしていました」
「うん、聞いている。でどんな感じだ?」
「それが」
ラムの話を総合するとエル・ドアンはとても楽しんでいたらしい。だがもっと深く付き合いを進めようとすると上手く逃げられているようだ。日中に外や喫茶店などの健全なお店で会う事は大丈夫なのだが、夜に会う事は頑なに断られているらしい。
エル・ドアンは15歳なので当然お酒を出す店などには一緒に行くことは出来ない。だがこの世界では例えば自宅で飲酒することは大目に見られている。
王都魔法学校の寮でも生徒は駄目だが教師の飲酒は咎められない。
正式に何歳からなら飲酒は大丈夫、という決まりはないのだが大体18歳からは大人と同じとして飲酒も喫煙も許容されるのだ。
エル・ドアンは15歳ではあるが教師でもあるので本人が飲酒をしたければ誰も咎めない。だからこそラムはエル・ドアンの部屋でお酒でも飲んで、より親しくなろうとするのだが今のところ成功していない。
「どんどん親しくはなっているんですが、一線が超えられていない、というところです」
「なるほどな、結構手強いな」
「まあ、あと一押しかも知れませんから、任せてください。私にも意地がありますから」
ラムは元々依頼を受けてエル・ドアンを篭絡するつもりだったのだが、すでに自分の尊厳を掛けて、と言う感じに変わってきている。俺からするとどちらでもいいからエル・ドアンが王都を離れなければ助かるだけだ。
「判った、方法も任せるから。ただくれぐれも無理はしないでくれよ、こっちの思惑がバレだら元も子もないんでな」
「判っています。慎重に大胆に行きますよ」
なんだかラムが頼もしくなってきている。
俺は最初のうちは隠蔽魔法を使って姿を隠して見守っていたが、そのうちあまりにも順調なのでラムに任せて特に関わらないようにしていた。その方が俺が変に指示を出すより上手く行くような気がしたからだ。
授業の方も順調だったがノート・クリストは俺のマナの量を大まかではあるが探知することに成功しエル・ドアンから上級魔法士の資格を与えられることに成功していた。
他の生徒は誰も居れのマナの量に気が付けない。当然ノートも言わないので他には上級試験を免除される者は出なかった。やはり王都魔法学校の中でもエリートのエル・ドアン教室の生徒であっても探知魔法に長けた者は少ないのだ。
これであればエル・ドアンを足止めさえできればジョシュア達を見付けることは出来ないと思えた。特にロングウッドの森は複数の魔法士の結界が重複して張られているのだ、特に難しいだろう。
「当初の目的は達したな」
「これで大丈夫でしょうか」
「まあ、エル・ドアン以上に探知魔法に長けた魔法士が出張ってくなければ大丈夫だろう」
その時俺の脳裏にはふとある男の顔が浮かんだが直ぐに消えた。あいつはセリスの為にならないことをやるはずがない。自分の思いを押し殺しても絶対に在り得ない、そんな男だ。
「最近ドアン先生の授業は休みがちだけど、何かあったんだろうか?」
生徒の中でも真面目な18歳のマックレーン・ソーズが心配して言う。
「春だからなぁ」
俺は意味不明なことを言って煙に巻いた。
「授業はいつも適当だからいいけど、試験対策はちゃんとやって欲しいんだけどな」
エル・ドアン教室の最年長18歳3名は全員上級試験に落ちている。次は半年先だが準備や対策は必須だろう。
「キサラに聞いてみたらどうだ?」
俺は一応真面なことを言ってみた。キサラの手を煩わせることになるが生徒同士仲良くなるのも悪くない。
「そうだな、経験者の意見は貴重だ。君は特例だから参考にならないけど」
「うん、俺は何の役にも立たない」
「そこまでは言ってないが。それにしても本当にノートは上級に合格したんだから、そう言う意味では君も一役買っていることになる」
「まあ、そう言う見方もあるか」
マックレーンは生真面目すぎる。家が子爵家でそれほど大きな貴族ではないのでマックレーンが上級になって王属魔法士にでもなれば、と期待されているのだ。その期待に応えようとしているのは痛いほど見ていて判る。
なんとかしてやりたいが、ノートが気づいたことを教える訳にもいかない。ノートはあれからエル・ドアンに直接探知魔法を教えてもらっているらしい。
一度ちゃんと俺のマナ量も含めて隠蔽魔法が有効なのかどうかをノートで試してみよう、と思っている。
「コータロー様、なんだかマックレーンが執拗いんですけど」
「ああ、悪いな、俺がキサラに聞いたら、って言ったんだ」
「そうなんですね。上級試験の合格法とか言われても単に様々な魔法を磨くしかありませんから私から教えられることなんてありません」
「そうなんだな。なにかコツとかないのか?」
「ありませんよ、日々の鍛錬あるのみです」
そういえばキサラも真面目な奴だった。案外マックレーンと気が合うんじゃないか?
「日々の鍛錬か、割と俺はやってる方だがな」
俺は今でもマナの量を増やす薬を飲み続けている。上限は無いのだ。だが一度に増える量はどんどん少なくなってきている。それでも習慣になっているので辞められないのだ。
次の日もエル・ドアの授業は休みだった。ラムとお出かけのようだ。ラムが作ったお弁当持参で花見の名所に出かけているらしい。
俺はその日の夜にラムから進捗状況について報告を受けることになっていた。娼館『黒蝶の館』へと向かう。
「ラム、ご苦労様だな」
「コータロー様、はい、今日も二人でお出かけしていました」
「うん、聞いている。でどんな感じだ?」
「それが」
ラムの話を総合するとエル・ドアンはとても楽しんでいたらしい。だがもっと深く付き合いを進めようとすると上手く逃げられているようだ。日中に外や喫茶店などの健全なお店で会う事は大丈夫なのだが、夜に会う事は頑なに断られているらしい。
エル・ドアンは15歳なので当然お酒を出す店などには一緒に行くことは出来ない。だがこの世界では例えば自宅で飲酒することは大目に見られている。
王都魔法学校の寮でも生徒は駄目だが教師の飲酒は咎められない。
正式に何歳からなら飲酒は大丈夫、という決まりはないのだが大体18歳からは大人と同じとして飲酒も喫煙も許容されるのだ。
エル・ドアンは15歳ではあるが教師でもあるので本人が飲酒をしたければ誰も咎めない。だからこそラムはエル・ドアンの部屋でお酒でも飲んで、より親しくなろうとするのだが今のところ成功していない。
「どんどん親しくはなっているんですが、一線が超えられていない、というところです」
「なるほどな、結構手強いな」
「まあ、あと一押しかも知れませんから、任せてください。私にも意地がありますから」
ラムは元々依頼を受けてエル・ドアンを篭絡するつもりだったのだが、すでに自分の尊厳を掛けて、と言う感じに変わってきている。俺からするとどちらでもいいからエル・ドアンが王都を離れなければ助かるだけだ。
「判った、方法も任せるから。ただくれぐれも無理はしないでくれよ、こっちの思惑がバレだら元も子もないんでな」
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