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第6章 魔法学校の章
第71話 王都で魔法学校入学だ
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「本当にいいんでしょうか?」
何回目かの問いに俺は同じ答えを繰り返すだけだ。
「いいんだろうよ。エル・ドアンの力の一旦だ。敵なら脅威、ってことだな」
ジョシュアとセリスを守るにはエル・ドアンを捜索隊の中に入れない必要がある。エル・ドアンさえ居なければロングウッドの森に守られて二人は当分は無事なはずだった。
但し、もしエル・ドアンが捜索隊に加わってしまったら、またすぐに見つかってしまう可能性が高い。
なんとかエル・ドアンを王都に釘付けにしたい。その方法を探すための魔法学校への入学と、それに伴う上級(俺は初級だが)試験だった。
「中途入学でいじめられなければいいんだが」
「いじめ、ってなんですか?」
「いや、いい、忘れてくれ」
どうもこの世界には「いじめ」という言葉が無いらしい。それが単純にいいことであればいいんだが。
「明日から学校ですが、準備の方は大丈夫ですか?」
制服(ローブ)や魔法使いに必須の杖なんかは用意済みだ。魔法学校では魔法をより明確にイメージするため魔法の発動に杖を使うらしい。
学校を卒業した魔法士たちは杖は使わない者がほとんどだ。
いままで杖なんて使わなかったので少し勝手方が違うが魔法は発動しやすいという事なので、それと新規入学者なので杖は必要なのだ。
キサラはロスドルの魔法学校時代のローブや杖があったのだがローブは使えなかった。王都魔法学校指定の物があるのだ。杖は使えたので問題なかった。
俺はボワール商会の手配で二人分のローブと俺の杖を揃えた。ローブは特殊な糸を使って特殊な方法で編まれており、簡単な魔法なら撥ね返すことができた。師匠ヴァルドアのローブはある程度の魔法が撥ね返せるらしい。
王都魔法学校は春に入学し四年間で卒業する。単位制で単位を四年間で取れれば学年は関係がない。それでエル・ドアンの様に一年も経たずに卒業してしまった。
魔法学、魔法史、実技など単位を重ねる度に難易度は上がっていく。攻撃魔法、防御魔法、移動魔法や探知魔法、それぞれに講師が実践、詠唱などを教えて行く。
自らのマナの量を効率よく魔法詠唱に乗せないと強い魔法は放てない。
そして、詠唱で強い魔法が放てるようになると、今度は詠唱を短くしたり無詠唱で魔法を放ったりできるように訓練するのだ。
ちなみに俺はある程度は無詠唱で魔法を放てるようになっている。ただ俺でも無詠唱と詠唱では詠唱した方がより強い魔法になることは間違いない。
詠唱は少しでも短く、かつ効率よく唱えるための訓練も重要だった。
翌日、俺とキサラは王都魔法学校へと向かった。同時にエル・ドアンの生徒となるのだ。
「おはようございます、ドアン先生」
年下であってもエル・ドアンは先生だ。
「先生は要らない。ドアンでいいよ、君たちの方が年上だし。君は、えっとなんだっけ?」
エル・ドアンは俺の名前もキサラの名前も覚えていなかった。手続きは大丈夫か?
「俺はサワタリ・コータロー、こっちはキサラ・ショーノです」
「ああ、そうだった、コータローにキサラね。あれ、姓がコータロー?」
この世界に来て初めて指摘された。ここでの姓名表記は名が先で姓は後だ。だが俺は当然沢渡幸太郎なので姓が先になる。
「いえ、名がコータローで姓がサワタリです。コータローで大丈夫です、そう呼んでください」
「判った、コータローとキサラ、覚えた。じゃ皆に紹介するよ」
そう言うとエル・ドアンは二人を教室の中に招いた。
「みんな、今日から入ったコータロー君とキサラ君です。仲良くする必要はありませんが、喧嘩はしないでくれると助かります」
エル・ドアンは変な紹介をする。仲良くするように、じゃないんだ。
「サワタリ・コータローです、よろしく」
「キサラ・ショーんです、よろしくお願いします」
俺たちが挨拶したが生徒は誰一人反応しない。関心がないようだ。
「二人は先日上級魔法士の試験に合格しました。特にコータロー君は僕の推薦で試験は免除で上級魔法士になっていただきました」
そこで初めて生徒たちに反応があった。エル・ドアンの教室に居る者たちだ、魔法士としてはエリート中のエリートで間違いない。その中にはエル・ドアン推薦で魔法士試験を免除された者は一人も居なかった。異例中の異例なのだ。
エル・ドアンの教室には生徒は12名在籍しており、その全てが中級魔法士だった。上級試験を目指して全員が勉強しているのだ。
その中に上級魔法士試験に合格したキサラと試験免除の俺が入った、となると今まで居た生徒たちは心中穏やかではないはずだ。嫉妬・妬みもあるだろう。やはり新参者に対してのいじめが心配だった。俺はいいがキサラが問題だ。
生徒たちの年齢は様々だった。キサラと俺(の見た目)は二十歳だったが、十二名の生徒たちは一番若くて十五歳、一番年上で十八歳だ。俺たち新入生が一番年上ということになる。エル・ドアンは十五歳なので生徒も含めて一番年下になる。
「ドアン先生、推薦で試験免除ってどういうことですか?」
生徒の一人十五歳のイーデル・リーンが問う。当り前だ、そんな話は今まで聞いたことが無かったからだ。
「彼が初級試験を受けると言うので、僕が彼を推薦して試験なしで上級試験合格にしてもらったんです」
教室がざわざわする。過去例がない合格のやり方だ。ただエル・ドアンが言い出せば校長でも反対できないことは皆理解している。
「そんな合格、アリなんですか?」
「まあ、僕が決めたことだから」
「なぜ、その人が推薦なんて受けられたんですか?」
様々な質問が飛ぶ。
「彼が僕の推薦を受けられた理由は、君たちには判らないかな?」
エル・ドアンが逆に問う。生徒たちはそれぞれ顔を見合わせるが誰も返事が出来なかった。
「君たちが彼について、僕が何故推薦したかを、ちゃんと理解出来た者が居るとしたら、その子もすぐに僕が推薦して上級魔法士合格にしてあげよう」
生徒たちの目の色が変わった。
「コータロー君は理由を彼らには言わないように。内緒で言っても判るからね」
エル・ドアンならそんなことも可能かもしれない。こうして俺とキサラの魔法学校生活が始まった。
何回目かの問いに俺は同じ答えを繰り返すだけだ。
「いいんだろうよ。エル・ドアンの力の一旦だ。敵なら脅威、ってことだな」
ジョシュアとセリスを守るにはエル・ドアンを捜索隊の中に入れない必要がある。エル・ドアンさえ居なければロングウッドの森に守られて二人は当分は無事なはずだった。
但し、もしエル・ドアンが捜索隊に加わってしまったら、またすぐに見つかってしまう可能性が高い。
なんとかエル・ドアンを王都に釘付けにしたい。その方法を探すための魔法学校への入学と、それに伴う上級(俺は初級だが)試験だった。
「中途入学でいじめられなければいいんだが」
「いじめ、ってなんですか?」
「いや、いい、忘れてくれ」
どうもこの世界には「いじめ」という言葉が無いらしい。それが単純にいいことであればいいんだが。
「明日から学校ですが、準備の方は大丈夫ですか?」
制服(ローブ)や魔法使いに必須の杖なんかは用意済みだ。魔法学校では魔法をより明確にイメージするため魔法の発動に杖を使うらしい。
学校を卒業した魔法士たちは杖は使わない者がほとんどだ。
いままで杖なんて使わなかったので少し勝手方が違うが魔法は発動しやすいという事なので、それと新規入学者なので杖は必要なのだ。
キサラはロスドルの魔法学校時代のローブや杖があったのだがローブは使えなかった。王都魔法学校指定の物があるのだ。杖は使えたので問題なかった。
俺はボワール商会の手配で二人分のローブと俺の杖を揃えた。ローブは特殊な糸を使って特殊な方法で編まれており、簡単な魔法なら撥ね返すことができた。師匠ヴァルドアのローブはある程度の魔法が撥ね返せるらしい。
王都魔法学校は春に入学し四年間で卒業する。単位制で単位を四年間で取れれば学年は関係がない。それでエル・ドアンの様に一年も経たずに卒業してしまった。
魔法学、魔法史、実技など単位を重ねる度に難易度は上がっていく。攻撃魔法、防御魔法、移動魔法や探知魔法、それぞれに講師が実践、詠唱などを教えて行く。
自らのマナの量を効率よく魔法詠唱に乗せないと強い魔法は放てない。
そして、詠唱で強い魔法が放てるようになると、今度は詠唱を短くしたり無詠唱で魔法を放ったりできるように訓練するのだ。
ちなみに俺はある程度は無詠唱で魔法を放てるようになっている。ただ俺でも無詠唱と詠唱では詠唱した方がより強い魔法になることは間違いない。
詠唱は少しでも短く、かつ効率よく唱えるための訓練も重要だった。
翌日、俺とキサラは王都魔法学校へと向かった。同時にエル・ドアンの生徒となるのだ。
「おはようございます、ドアン先生」
年下であってもエル・ドアンは先生だ。
「先生は要らない。ドアンでいいよ、君たちの方が年上だし。君は、えっとなんだっけ?」
エル・ドアンは俺の名前もキサラの名前も覚えていなかった。手続きは大丈夫か?
「俺はサワタリ・コータロー、こっちはキサラ・ショーノです」
「ああ、そうだった、コータローにキサラね。あれ、姓がコータロー?」
この世界に来て初めて指摘された。ここでの姓名表記は名が先で姓は後だ。だが俺は当然沢渡幸太郎なので姓が先になる。
「いえ、名がコータローで姓がサワタリです。コータローで大丈夫です、そう呼んでください」
「判った、コータローとキサラ、覚えた。じゃ皆に紹介するよ」
そう言うとエル・ドアンは二人を教室の中に招いた。
「みんな、今日から入ったコータロー君とキサラ君です。仲良くする必要はありませんが、喧嘩はしないでくれると助かります」
エル・ドアンは変な紹介をする。仲良くするように、じゃないんだ。
「サワタリ・コータローです、よろしく」
「キサラ・ショーんです、よろしくお願いします」
俺たちが挨拶したが生徒は誰一人反応しない。関心がないようだ。
「二人は先日上級魔法士の試験に合格しました。特にコータロー君は僕の推薦で試験は免除で上級魔法士になっていただきました」
そこで初めて生徒たちに反応があった。エル・ドアンの教室に居る者たちだ、魔法士としてはエリート中のエリートで間違いない。その中にはエル・ドアン推薦で魔法士試験を免除された者は一人も居なかった。異例中の異例なのだ。
エル・ドアンの教室には生徒は12名在籍しており、その全てが中級魔法士だった。上級試験を目指して全員が勉強しているのだ。
その中に上級魔法士試験に合格したキサラと試験免除の俺が入った、となると今まで居た生徒たちは心中穏やかではないはずだ。嫉妬・妬みもあるだろう。やはり新参者に対してのいじめが心配だった。俺はいいがキサラが問題だ。
生徒たちの年齢は様々だった。キサラと俺(の見た目)は二十歳だったが、十二名の生徒たちは一番若くて十五歳、一番年上で十八歳だ。俺たち新入生が一番年上ということになる。エル・ドアンは十五歳なので生徒も含めて一番年下になる。
「ドアン先生、推薦で試験免除ってどういうことですか?」
生徒の一人十五歳のイーデル・リーンが問う。当り前だ、そんな話は今まで聞いたことが無かったからだ。
「彼が初級試験を受けると言うので、僕が彼を推薦して試験なしで上級試験合格にしてもらったんです」
教室がざわざわする。過去例がない合格のやり方だ。ただエル・ドアンが言い出せば校長でも反対できないことは皆理解している。
「そんな合格、アリなんですか?」
「まあ、僕が決めたことだから」
「なぜ、その人が推薦なんて受けられたんですか?」
様々な質問が飛ぶ。
「彼が僕の推薦を受けられた理由は、君たちには判らないかな?」
エル・ドアンが逆に問う。生徒たちはそれぞれ顔を見合わせるが誰も返事が出来なかった。
「君たちが彼について、僕が何故推薦したかを、ちゃんと理解出来た者が居るとしたら、その子もすぐに僕が推薦して上級魔法士合格にしてあげよう」
生徒たちの目の色が変わった。
「コータロー君は理由を彼らには言わないように。内緒で言っても判るからね」
エル・ドアンならそんなことも可能かもしれない。こうして俺とキサラの魔法学校生活が始まった。
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