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第5章 展開する物語の章

第65話 ロングウッドの森で驚いた

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「だから師匠かルナを探すためにクマさんをここで待っていたんだよ」

「どうして我かここに来ることが判った?」

「それはこの家の主、サーリールから聞いたからからだよ」

 クマさんは不思議そうな顔をする。なんだ、どうした?

「サーリールとは誰だ?この家の主だと?」

「そうだよ。そこに居るじゃないか」

 さっきまで確かに居たはずのサーリールの姿は無かった。

「あれ、今までそこに居たのに」

 全員がクマさんに気を取られている間にサーリールの姿は消えていたのだ。

「サーリールなどと言う者は知らんし、ここは我の別荘だぞ?」

「クマさんの別荘なのか?そんな話初めて聞いたけど」

「ただ一つ、若返りの魔法を使うと少し記憶があいまいになってしまうことが有る。お前のことも実はよく覚えてはおらんのだ。だがここが我の別荘であることは間違いない。普段は二日に一回程度はここで過ごしておるのだ」

 どういうことだ?クマさんの別荘に間違いなければ、ここはサーリールの家ではないことになる。クマさんとも寝名とも知り合いだと言っていたことも嘘なのか?

「サーリールはクマさんに事もルナに事も知っていると言っていたんだが。そうだ師匠のことも知っていると言っていた。見た目は小さいおっさんなんだが、心当たりはないか?」

「無いな。サーリールなどと言う名は聞いたことが無い。ルナにでも聞いてみるがいい」

 クマさんがそこまで言うのだ、間違いではないだろう。とするとサーリールとは一体何者なんだ?

「判った、ルナのところに案内してくれるか?それと」

 俺はこの家に来た目的を二人の素性も含めてクマさんに説明した。

「そんなことか。よいぞ、ここを貸してやろう」

「いいのか?」

「よいと言っておるだろう。ここに来ていたのは暇つぶしだけであったからな。たまに我の話し相手にでもなってくれれば、それでよいわ」

「そんなことでいいのですか?それならいつでもいらっしゃってください」

「あんたはいい娘だな。お前、この娘を大切するのだぞ」

「判っています。本当にありがとうございます」

「なんだ、ジョシュア、俺に対する時とは全然態度が違うじゃないか」

「当り前だ、クマさんには感謝しても仕切れない。というか、クマさんでいいのですか?」

「我の名はナーザレス・ロングウッドと言う。クマさんなどと呼ぶのはその者だけだな。そのことだけは何故か記憶に残っておるわ」

「お前、誰にでも失礼な奴だな。ナーザレス様、申し訳ありません、私から言い聞かせておきます」

「なんだよ、俺が全部手配してやったのに」

 俺は少し拗ねてみせたが、勿論本気ではない。

「いずれにしても、ルナには会いたいんで、クマさん案内を頼めるか?」

「良かろう、ここからそう遠くない、直ぐに立とう」

 サーリールは瞬間移動のような魔法を使ったがクマさんは使えない。サーリールの方が上位の魔法使いなのか?得意、不得意がある、ということかも知れない。

 ルナの居所には1日で着いた。

「ルナジェール、居るか?」

「あら、ナーザレス、どうしたの?」

 ルナは後ろの俺に気づいた。

「コータローじゃない、どうしたの?ヴァルドアとは会えた?」

「いえ、師匠とは会えてません。シルザールに戻ったと聞きました」

「ああ、返しに行ったのね。若返ったらもう必要ないか、ちょっと勿体なかったかも」

「いやいや、俺が持って逃げたってことになってたんで、そのままじゃ俺はずっと濡れ衣着せられたままですから」

「それならそれでいいじゃない、箔が付くわ」

 ルナもちょっと変な人だな。

「それで、どうしたの?」

 俺はそれまでの事情を説明した。

「サーリールかぁ、聞いたことは無いわね。少なくとも知り合いには居ないと思うわ」

 やはりそうか。狐にでも騙されたか。

「我が言った通りだろう。間違いなくそんな奴は知らん。森に居たかどうかは判らんがな。我が森の住人を全て把握している訳ではない。もしかしたらルナの方が知っておるかも知れん」

「そうね、あなたは出不精で方向音痴だものね。いつも迷ってア・レウラ・ムーロに戻れなくなっているし」

「それはこの際どうでもよいだろうに。いずれにしても我やルナの知り合いではない、ということじゃな。そのサーリールとやらは、我らの知り合いを騙っておったのじゃから悪い奴に違いない」

 良いか悪いかと言えば、良い奴だった気がするが。少なくとも悪い奴には見えなかったんだがなぁ。

「居なくなってしまったんで、もう追及のし様も無いがな。でも本当に何者だったんだろう」

 今のところそれについては誰も応えを出せなかった。
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