上 下
61 / 105
第5章 展開する物語の章

第61話 ロングウッドの森でサーリールに出会った

しおりを挟む
「少しここで落ち着こうか」

 俺たちは前に俺が居た場所辺りに馬車を停めて腰を据えることにした。俺一人やジョシュアと二人なら何日でもなんとかなるのだが今回はセリスとキサラがいる。

 ここでルナにでも見つけて貰えると助かるのだが、師匠なら早めに見つけてくれないかな。

「ここで待つんですか?」

「ここをベースにして俺とジョシュアが色々と回ってみるよ。君とセリスは待っていてくれるか」

 二組に分けるのなら魔法使いを一人づつ、ということも考えられたがセリスの元に魔法使いを置いて行きたい、という考えもある。俺は後者を選んだ。

「もし誰かが接触してきたら、俺の名前を出してみてくれ。俺のマナを感じてルナか師匠かクマさんが来てくれると退化るんだが」

「それ以外の人が来たらどうすればいいですか?」

 ロングウッドの森に居るのはほぼ全員魔法使いだ。俺が知らない魔法使いは対処方法が判らない。

「それ以外の人が来たら、直ぐに俺を呼んでくれ。瞬足で戻るから」

「判りました、私はコータロー様が戻られるまでセリスさんをお守りすればいいんですね」

 キサラも話が早くていいな。

「助かるよ。ジョシュア、手分けして行くよ」

「おい、俺はそのルナとかクマさんとかは知らないぞ」

 そうか、顔も知らないのに探せないか。そう言えば師匠も若返ったりしていたら俺にも判らない可能性もあるな。ダンテみたいにマナで相手を見分けることはできないしな。

「そうか。では俺だけで行ってくるから、三人で待っていてくれ」

 俺は三人を残して前にたどった道を進んでみた。全員で行っても良かったのだが目印とかが変わってしまっていて全員で迷うのは避けたかったのだ。

「おーい、ルナか師匠はいませんかぁ」

 叫んでみたが反応は無い。クマさんでもまた出て来てくれないもんか。もしかしたら師匠の若返り魔法の準備で忙しいのかも知れない。

「何をそんなに叫んでいるんだ?」

 突然声を掛けられた。姿はみえない。

「誰だ?」

「ルナを呼んでいたのなら、ルナの知り合いか?」

 俺の問いには答えずに自分の話を進めるタイプのようだ。

「そうだ、ルナジェール・ミスティアの知り合いにも違いない。ついでに言うならヴァルドア・サンザールやナーザレス・ロングウッドとも知り合いだ」

「ほほう、それはそれは、有名人と知り合いなのだな。それでそんな奴がここで何故ルナを探して叫んでいのだ」

「色々と事情があってね。それであんたはルナの居場所を知っているのか?」

「私の名前はサーリール・ランド、ここロングウッドの魔法使いだ」

 なんでこのタイミングで自己紹介なんだ、こいつは。

「サーリール、それでルナの居場所は?」

「勿論知っているさ」

 やっと会話がかみ合った。

「案内してくれるか?」

「どうしてだ?」

「いや、俺はルナを探しているんだ、居場所を知っているなら案内してくれないのか?」

「居場所を知っていることと、そこに案内できることは同意じゃない」

「どういう意味だ?」

 ルナの棲家は知っているが、そこに辿り着けるのかどうかはルナ次第、ということらしい。

 互いに結界を張っているからそうなるのだ。いくつもの結界が重なり合っている場所もあるらしい。

「じゃあア・レウラ・ムーロは知っているか?」

「この森の中心なら知っている」

「案内は?」

「う~ん。行ったことは無いな」

「ナーザレス・ロングウッドは?」

「クマの魔法使いなら知っている」
 
 やっぱり誰が見てもクマなんだ。

「役に立たない奴だな」

「おい」

「なんだ」

「失礼な奴だな」

 確かに失礼なのは間違いない。自覚しているが相手が悪い。悪いか?

「俺が役立たずだというのか?」

「だってどこにも案内出来ないじゃないか」

「案内は出来ないが探すことは出来るぞ」

「えっ」

「だからア・レウラ・ムーロを探すことは出来ると言っているのだ」

 どうもア・レウラ・ムーロは特殊な霊木で探索に長けた魔法使いなら探せるらしい。

「飛翔魔法とかで上空から見つけたりはしないのか?」

「それは無理だ。上から見てもア・レウラ・ムーロを見付けることはできないだろう」

「そうなのか。判った、頼むからア・レウラ・ムーロを探してくれないか。役立たずだ呼ばわりしたことは謝る。

「頭を下げて頼まれれば探さないことはない」

 サーリールは本質的には人のいい魔法使いのようだ。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。 メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。 しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

ひだまりを求めて

空野セピ
ファンタジー
惑星「フォルン」 星の誕生と共に精霊が宿り、精霊が世界を創り上げたと言い伝えられている。 精霊達は、世界中の万物に宿り、人間を見守っていると言われている。 しかし、その人間達が長年争い、精霊達は傷付いていき、世界は天変地異と異常気象に包まれていく──。 平凡で長閑な村でいつも通りの生活をするマッドとティミー。 ある日、謎の男「レン」により村が襲撃され、村は甚大な被害が出てしまう。 その男は、ティミーの持つ「あるもの」を狙っていた。 このままだと再びレンが村を襲ってくると考えたマッドとティミーは、レンを追う為に旅に出る決意をする。 世界が天変地異によって、崩壊していく事を知らずに───。

D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。 その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。 更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。 果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!? この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~

櫻木零
ファンタジー
20XX年。特にこれといった長所もない主人公『朝比奈陽翔』は二人の幼なじみと充実した毎日をおくっていた。しかしある日、朝起きてみるとそこは異世界だった!?異世界アリストタパスでは陽翔はグランと名付けられ、生活をおくっていた。陽翔として住んでいた日本より生活水準が低く、人々は充実した生活をおくっていたが元の日本の暮らしを知っている陽翔は耐えられなかった。「生活水準が低いなら前世の知識で発展させよう!」グランは異世界にはなかったものをチートともいえる能力をつかい世に送り出していく。そんなこの物語はまあまあ地頭のいい少年グランの異世界建国?冒険譚である。小説家になろう様、カクヨム様、ノベマ様、ツギクル様でも掲載させていただいております。そちらもよろしくお願いします。

処理中です...