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第5章 展開する物語の章
第60話 シルザールの街を後にした
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ボワール家に着くと直ぐにキサラが出てきた。
「コータロー様、と、えっ?」
ダンテの顔を見付けてキサラの顔が曇った。自分の主人の敵だとでも思って居る様だ。
「キサラ、大丈夫だ。それよりワリスさんに会いたいんだが。ダンテはもう城に戻ると思うよ」
ダンテは一言も喋らず乗って来た馬車で戻って行った。なんか、本当にいい奴だ。
「おお、コータロー様、ご無事でしたか」
「ええ、それで少しお願いがあってきました。こちらの二人は」
「ああ、大丈夫です。多分そんなことになるのではないかと準備しておりました。直ぐに立たれますか?」
一流の商人と話をするのは楽だ。全てを事前に理解して手配してくれている。
「悪いね、出来れば少しだけ荷物を積んで直ぐに出たい」
「判りました。それで行先は」
「聞かないで欲しい、というか言わないでおこう。あなたたから情報が洩れるとは思っていないんだが、知らないことは喋れないだろう」
実際には馬車を借りるのだ、戻って来た御者から行先は伝わるだろう。
「それでは数日分の食料などで大丈夫ですか?」
「それでお願いするよ、ありがとう」
ワリスは直ぐにルアーノに指示してくれた。
「ご用意が整いました。御者は私か務めましょうか?」
ルアーノの提案は却下だ。
「いや、ルアーノさんは伯爵の元を離れなれないだろう?馬車を戻さないといけないので誰か来てもらえると助かるんだが」
「それなら私が」
キサラだった。いや、魔法士としてお前も伯爵に付いていなけれはならないだろうに。
「いいでしょう、キサラ、お願いしますね」
「えっ、ワリスさんいいのですか?屋敷でたった一人の魔法士ですよ?」
「いいのです。本当なら全員解雇しなければならない所を行くあてのないキサラだけはできなかったのです。連れて行っていただけると逆に助かります。そのままコータロー様の元に置いていただいても結構ですよ」
俺がキサラに魔法を教える、とか言っていたのを知っているのだろうか。抜け目ない、というかどこかで盗聴でもされているのか。
「馬車はそのままや使いください。キサラはうちの商会の支部も知っております。何かお困りなことがございましたら何なりと申しつけください」
「ありがとうございます。でも、どうして俺なんかをそれほど信じたり気に掛けたりしていただけるんですか?」
「あたなは特別な方だと思っております。いつか私どもに大きな利益を齎していただけるのではないかと。それまでの先行投資です、あまりお気になさらないでください」
何か裏があるのか、本当に先行投資なのか、よく判らないが頼れる物があるのは心強い。
「判りました、ありがとうございます。何かの時は頼らせていただきます。ではご迷惑が掛からないうちに早々に出ることとします」
セリス嬢とジョシュアはワリスさんとは接触させなかった。顔も併せていない、という事実を作ったのだ。ボワール家としては唯一の魔法使いに馬車を付けて暇を出した、ということだ。
「さて、行くか」
御者席に居るキサラに声を掛けた。
「何処に向かうのですか?」
当然の疑問だ。俺は行先を言っていなかった。
「北だ、北西に向かってくれ」
そう、俺の目的地はロングウッドの森だった。クマさんの元に戻るつもりだったのだ。
そこには若返りの魔法を準備中の師匠が居るかも知れないと思っていた。もしかしたら既に別人になっている可能性もある。
ロングウッドの森は様々な魔法使いが生息しており、それぞれに結界を張っていて他者と干渉しないようになっている。ほとぼりが冷めるまで隠れるには都合がいいのではないかと俺は考えたのだ。
セリス嬢もジョシュアも魔法が使えない。その二人が逃げる先の選択肢としてロングウッドの森を選ぶとは誰も想像しないはずだ。多分、想像しないだろう。もしかしたら、想像する奴が居るのか?居るとしたら、エル・ドアンくらいのものだろう。
現代最強の魔法使いとロングウッドの森魔法使い連合軍、なんてワクワクするじゃないか。出来れば、そんな事態は避けるべきなんだが、ちょっと俺は期待している。セリス嬢とジョシュアには悪いが二人は餌だ。エル・ドアンが来なければそれでもいいんだが、こういった予想は悪い方で当たるものだ。
「コータロー、何か悪いことを考えていないか?」
どうも、ものすごく悪い顔で笑っていたらしい。実は俺はこんなに悪い奴だったのか。自分でも少し驚いた。
「何も考えていないさ。俺が考えないのは知っているだろう?」
行き当たりばったりは俺の専売特許だ。
「そうだな。お前はいつも考え無しだな」
なんだか勝手に納得してくれたようだ。
「コータロー様、森が見えてきました」
ロングウッドの森に戻って来た。さて、ここからが問題だ。クマさんやルナ、それと師匠に出会えるといいんだが。
「どうしますか?」
「とりあえず中に入って落ち着いて待つしかないな。師匠かルナさんでも見つかればいいんだが」
いきなりクマさんに出会ったら皆驚くだろうから事前に説明しておかないとな。
「それとクマが居るけど大丈夫だから」
「クマが出るんですか?」
「いや、クマさんが居るんだ。ロングウッドの主という感じかな。501歳の魔法使いなんだ」
「501歳って、ああ、若返りの魔法なんですね」
「いや違う。クマさんは若返りの魔法を掛ける方だよ」
「なんだかよく判らないな。お前はそのクマに若返らしてもらったのか」
「そうだよ。師匠も若返りの魔法を掛けてもらっていたんだ」
「えっ、師匠ってヴァルドア・サンザールのことだろ?あれで若返っていたのか?」
「ああ、あれは失敗したんだよ」
「失敗することもあるのか、怖いな。それで年寄りになってしまうのか」
「消費するマナの量が半端ないからな。そうそうは掛けられない魔法なんだ」
そんな話をしているうちに俺たちは前回俺が居た場所に偶然辿り着いた。俺が目印にしていた大木があった。上手く行けばここからロングウッドの森の中心ア・レウラ・ムーロに辿り着けるかもしれない。そこにはナーザレス・ロングウッド、クマさんが居る筈だった。
「コータロー様、と、えっ?」
ダンテの顔を見付けてキサラの顔が曇った。自分の主人の敵だとでも思って居る様だ。
「キサラ、大丈夫だ。それよりワリスさんに会いたいんだが。ダンテはもう城に戻ると思うよ」
ダンテは一言も喋らず乗って来た馬車で戻って行った。なんか、本当にいい奴だ。
「おお、コータロー様、ご無事でしたか」
「ええ、それで少しお願いがあってきました。こちらの二人は」
「ああ、大丈夫です。多分そんなことになるのではないかと準備しておりました。直ぐに立たれますか?」
一流の商人と話をするのは楽だ。全てを事前に理解して手配してくれている。
「悪いね、出来れば少しだけ荷物を積んで直ぐに出たい」
「判りました。それで行先は」
「聞かないで欲しい、というか言わないでおこう。あなたたから情報が洩れるとは思っていないんだが、知らないことは喋れないだろう」
実際には馬車を借りるのだ、戻って来た御者から行先は伝わるだろう。
「それでは数日分の食料などで大丈夫ですか?」
「それでお願いするよ、ありがとう」
ワリスは直ぐにルアーノに指示してくれた。
「ご用意が整いました。御者は私か務めましょうか?」
ルアーノの提案は却下だ。
「いや、ルアーノさんは伯爵の元を離れなれないだろう?馬車を戻さないといけないので誰か来てもらえると助かるんだが」
「それなら私が」
キサラだった。いや、魔法士としてお前も伯爵に付いていなけれはならないだろうに。
「いいでしょう、キサラ、お願いしますね」
「えっ、ワリスさんいいのですか?屋敷でたった一人の魔法士ですよ?」
「いいのです。本当なら全員解雇しなければならない所を行くあてのないキサラだけはできなかったのです。連れて行っていただけると逆に助かります。そのままコータロー様の元に置いていただいても結構ですよ」
俺がキサラに魔法を教える、とか言っていたのを知っているのだろうか。抜け目ない、というかどこかで盗聴でもされているのか。
「馬車はそのままや使いください。キサラはうちの商会の支部も知っております。何かお困りなことがございましたら何なりと申しつけください」
「ありがとうございます。でも、どうして俺なんかをそれほど信じたり気に掛けたりしていただけるんですか?」
「あたなは特別な方だと思っております。いつか私どもに大きな利益を齎していただけるのではないかと。それまでの先行投資です、あまりお気になさらないでください」
何か裏があるのか、本当に先行投資なのか、よく判らないが頼れる物があるのは心強い。
「判りました、ありがとうございます。何かの時は頼らせていただきます。ではご迷惑が掛からないうちに早々に出ることとします」
セリス嬢とジョシュアはワリスさんとは接触させなかった。顔も併せていない、という事実を作ったのだ。ボワール家としては唯一の魔法使いに馬車を付けて暇を出した、ということだ。
「さて、行くか」
御者席に居るキサラに声を掛けた。
「何処に向かうのですか?」
当然の疑問だ。俺は行先を言っていなかった。
「北だ、北西に向かってくれ」
そう、俺の目的地はロングウッドの森だった。クマさんの元に戻るつもりだったのだ。
そこには若返りの魔法を準備中の師匠が居るかも知れないと思っていた。もしかしたら既に別人になっている可能性もある。
ロングウッドの森は様々な魔法使いが生息しており、それぞれに結界を張っていて他者と干渉しないようになっている。ほとぼりが冷めるまで隠れるには都合がいいのではないかと俺は考えたのだ。
セリス嬢もジョシュアも魔法が使えない。その二人が逃げる先の選択肢としてロングウッドの森を選ぶとは誰も想像しないはずだ。多分、想像しないだろう。もしかしたら、想像する奴が居るのか?居るとしたら、エル・ドアンくらいのものだろう。
現代最強の魔法使いとロングウッドの森魔法使い連合軍、なんてワクワクするじゃないか。出来れば、そんな事態は避けるべきなんだが、ちょっと俺は期待している。セリス嬢とジョシュアには悪いが二人は餌だ。エル・ドアンが来なければそれでもいいんだが、こういった予想は悪い方で当たるものだ。
「コータロー、何か悪いことを考えていないか?」
どうも、ものすごく悪い顔で笑っていたらしい。実は俺はこんなに悪い奴だったのか。自分でも少し驚いた。
「何も考えていないさ。俺が考えないのは知っているだろう?」
行き当たりばったりは俺の専売特許だ。
「そうだな。お前はいつも考え無しだな」
なんだか勝手に納得してくれたようだ。
「コータロー様、森が見えてきました」
ロングウッドの森に戻って来た。さて、ここからが問題だ。クマさんやルナ、それと師匠に出会えるといいんだが。
「どうしますか?」
「とりあえず中に入って落ち着いて待つしかないな。師匠かルナさんでも見つかればいいんだが」
いきなりクマさんに出会ったら皆驚くだろうから事前に説明しておかないとな。
「それとクマが居るけど大丈夫だから」
「クマが出るんですか?」
「いや、クマさんが居るんだ。ロングウッドの主という感じかな。501歳の魔法使いなんだ」
「501歳って、ああ、若返りの魔法なんですね」
「いや違う。クマさんは若返りの魔法を掛ける方だよ」
「なんだかよく判らないな。お前はそのクマに若返らしてもらったのか」
「そうだよ。師匠も若返りの魔法を掛けてもらっていたんだ」
「えっ、師匠ってヴァルドア・サンザールのことだろ?あれで若返っていたのか?」
「ああ、あれは失敗したんだよ」
「失敗することもあるのか、怖いな。それで年寄りになってしまうのか」
「消費するマナの量が半端ないからな。そうそうは掛けられない魔法なんだ」
そんな話をしているうちに俺たちは前回俺が居た場所に偶然辿り着いた。俺が目印にしていた大木があった。上手く行けばここからロングウッドの森の中心ア・レウラ・ムーロに辿り着けるかもしれない。そこにはナーザレス・ロングウッド、クマさんが居る筈だった。
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