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第5章 展開する物語の章
第59話 シルザールの街で城から出た
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「ダンテか。お前こそ、セリス嬢の部屋のベランダで何をしている?」
そう切り返されるとは思っていなかったのか、ダンテは一瞬言葉を失った。
「すまん、意地の悪いことを言ったな。で、どうするつもりだ?」
どうする?とはセリス嬢を逃がす脱獄したジョシュアを見逃すのか?という意味だ。
「私は何も見ていない。お前はここに居ない。それだけだ」
こいつは本気で言っている。何よりもセリス嬢が不幸にならない様に案じているのだ。それとベルドアの第二夫人として城に居ることに耐えられないのだろう。自分に物にならないのであれば、遠くで幸せになった欲しい、ということか。
「お前自身は大丈夫なのか?」
「どういう意味だ?」
ダンテは答える気が無いらしい。
「いや、いい。彼女たちがここを出るのに一番いいタイミングを教えてくれ」
「いや、それは流石に」
「流石に、何だ?」
見逃すのだ、見つからないに越したことはない。
「判った、外に出るまでの道案内もやろう。但し姿は消したままでだ」
「ありがとう、助かる。お前本当にいい奴だな」
「褒めているのか馬鹿にしているのか」
「褒めているに決まっているじゃないか。俺には出来ないことだ」
本気でそう思っていた。好きな人の幸せだけを願って、なんて物語の中でしかないものだと思っていたのだ。もっとも、セリスはダンテのことなんて全く知らないと思うので確実に片思いなんだが。
部屋に中でジョシュアがセリスを説得しているところだったが、善は急げだ、ダンテに偵察をしてもらって早速逃げるとしよう。
「おい、説得できたか?」
ベランダから声を掛けた。いちゃいちゃしていたら殴ってやろうかと思ったが、ちゃんと説得していたみたいだ。
「コータロー様、本当に大丈夫でしょうか」
「ああ、まあ、何とかなるだろうさ」
俺が不安気な顔をすると心配するだろうから平気な顔で通した。実はあまり自信は無い。
「今なら行けるぞ」
姿を消したままダンテが戻った。
「えっ、他にも誰か居るのか?」
ジョシュアが身構える。
「大丈夫、この件に関しては味方だ。外に出る案内をしてくれる。信用していい。姿を隠したままなのは、そうだな、ただの愛嬌だ」
「愛嬌って。まあいい、お前を信用するしかないからな」
「ああ、俺もそいつも信用してくれ。でないとジョシュアは処刑でセリスは第二夫人だ」
俺が明るく言うので悲壮感はない。
「判った、セリス、行こう」
「最後に一つ、シンシアのことはいいんだな?」
俺は一応確認した。本当の所、仲がいいのか悪いのかは知らないが実の姉妹だ、一緒に逃げたいとかは
ないのだろうか。
「姉には姉の人生があります。特に今の状況を悲観していない、というのが姉の実情だと思います。そういう人ですから。私が逃げたことで姉に迷惑を掛けてしまったのなら、出来れば姉のことも気に掛けていたけると有難いと思います」
特に仲が悪い訳ではないのかも知れないが一緒に逃げると言う選択肢は無いらしい。
「判った、こいつにも頼んでおくよ、セリスの頼みは断らない筈だ。なあ、いいだろ?」
「勝手にしろ」
ダンテは姿をけしたままぶっきら棒に答えた。ジョシュアもセリスもちょっと鈍い所があるので気が付いていない。
「こっちだ。早くしろ」
ダンテは手早く案内して行く。確かに誰にも会わないで通れている。直ぐに建物からは出られた。
建物の周囲は衛兵が巡回している。ダンテはその時間も把握しているので巡回も回避できた。
但し、城の門を出るには門番の居る前を通らないと出られない。ダンテは馬車を用意していた。ダンテがいつも使っている馬車だ。御者は断って自分で手綱を取った。
「ダンテさん、またお出かけですか」
門番に声を掛けられる。ダンテ、という名前をセリスが聞いてしまったが、直ぐに忘れるだろう。ジョシュアはそもそも覚える気が無い。
「ああ、もう一度ボワール家に行ってくる」
最近何回もボワール家を訪問していたので違和感は無い筈だ。
特に咎められることもなく城の外に出られた。
「本当にボワール家に行くのか?」
「どちらでもいいが、どうする?このまま街を出るか?」
「いや、馬車を戻さないといけないだろう。ボワール伯爵に馬車を借りたいからボワール家に行ってもらえると都合がいいな」
ダンテはそのまま馬車をボワール家に向かって走らせるのだった。
そう切り返されるとは思っていなかったのか、ダンテは一瞬言葉を失った。
「すまん、意地の悪いことを言ったな。で、どうするつもりだ?」
どうする?とはセリス嬢を逃がす脱獄したジョシュアを見逃すのか?という意味だ。
「私は何も見ていない。お前はここに居ない。それだけだ」
こいつは本気で言っている。何よりもセリス嬢が不幸にならない様に案じているのだ。それとベルドアの第二夫人として城に居ることに耐えられないのだろう。自分に物にならないのであれば、遠くで幸せになった欲しい、ということか。
「お前自身は大丈夫なのか?」
「どういう意味だ?」
ダンテは答える気が無いらしい。
「いや、いい。彼女たちがここを出るのに一番いいタイミングを教えてくれ」
「いや、それは流石に」
「流石に、何だ?」
見逃すのだ、見つからないに越したことはない。
「判った、外に出るまでの道案内もやろう。但し姿は消したままでだ」
「ありがとう、助かる。お前本当にいい奴だな」
「褒めているのか馬鹿にしているのか」
「褒めているに決まっているじゃないか。俺には出来ないことだ」
本気でそう思っていた。好きな人の幸せだけを願って、なんて物語の中でしかないものだと思っていたのだ。もっとも、セリスはダンテのことなんて全く知らないと思うので確実に片思いなんだが。
部屋に中でジョシュアがセリスを説得しているところだったが、善は急げだ、ダンテに偵察をしてもらって早速逃げるとしよう。
「おい、説得できたか?」
ベランダから声を掛けた。いちゃいちゃしていたら殴ってやろうかと思ったが、ちゃんと説得していたみたいだ。
「コータロー様、本当に大丈夫でしょうか」
「ああ、まあ、何とかなるだろうさ」
俺が不安気な顔をすると心配するだろうから平気な顔で通した。実はあまり自信は無い。
「今なら行けるぞ」
姿を消したままダンテが戻った。
「えっ、他にも誰か居るのか?」
ジョシュアが身構える。
「大丈夫、この件に関しては味方だ。外に出る案内をしてくれる。信用していい。姿を隠したままなのは、そうだな、ただの愛嬌だ」
「愛嬌って。まあいい、お前を信用するしかないからな」
「ああ、俺もそいつも信用してくれ。でないとジョシュアは処刑でセリスは第二夫人だ」
俺が明るく言うので悲壮感はない。
「判った、セリス、行こう」
「最後に一つ、シンシアのことはいいんだな?」
俺は一応確認した。本当の所、仲がいいのか悪いのかは知らないが実の姉妹だ、一緒に逃げたいとかは
ないのだろうか。
「姉には姉の人生があります。特に今の状況を悲観していない、というのが姉の実情だと思います。そういう人ですから。私が逃げたことで姉に迷惑を掛けてしまったのなら、出来れば姉のことも気に掛けていたけると有難いと思います」
特に仲が悪い訳ではないのかも知れないが一緒に逃げると言う選択肢は無いらしい。
「判った、こいつにも頼んでおくよ、セリスの頼みは断らない筈だ。なあ、いいだろ?」
「勝手にしろ」
ダンテは姿をけしたままぶっきら棒に答えた。ジョシュアもセリスもちょっと鈍い所があるので気が付いていない。
「こっちだ。早くしろ」
ダンテは手早く案内して行く。確かに誰にも会わないで通れている。直ぐに建物からは出られた。
建物の周囲は衛兵が巡回している。ダンテはその時間も把握しているので巡回も回避できた。
但し、城の門を出るには門番の居る前を通らないと出られない。ダンテは馬車を用意していた。ダンテがいつも使っている馬車だ。御者は断って自分で手綱を取った。
「ダンテさん、またお出かけですか」
門番に声を掛けられる。ダンテ、という名前をセリスが聞いてしまったが、直ぐに忘れるだろう。ジョシュアはそもそも覚える気が無い。
「ああ、もう一度ボワール家に行ってくる」
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「本当にボワール家に行くのか?」
「どちらでもいいが、どうする?このまま街を出るか?」
「いや、馬車を戻さないといけないだろう。ボワール伯爵に馬車を借りたいからボワール家に行ってもらえると都合がいいな」
ダンテはそのまま馬車をボワール家に向かって走らせるのだった。
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