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第5章 展開する物語の章
第57話 シルザールの街でジョシュアに再会した
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「姿を見せても驚かないでくれるか?」
「どうかなされたのですか?お怪我をされたとか」
「いや、実は若返りの魔法というものを掛けて貰ったら若い別人になってしまったんだよ」
「若い別人ですか?」
「そう。今から姿を見せるから、大声を上げないでね」
俺はそおっと、といってもゆっくりなんて無理なので気持ちだけゆっくりと姿を現した。
「あっ」
セリスはやはり驚いたが話をきいていたので騒ぎはしなかった。
「本当に別人なのですね。でも中身はコータロー様だと」
「そういうことになる。ルスカナの屋敷で別れてから色々とあったんだよ」
俺は今までの経緯を簡単に話した。
「大変だったのですね。でも私も大変だったのです」
「判ってる。それで俺はこの城に忍び込んできたんだ。なんとかジョシュアは助け出したいんだが」
「それは本当にお願いします。彼は誘拐犯ではありません」
「それは俺が一番判っているよ。でも、君はどうするんだ?ベルドアの第二夫人は受け入れたのか?」
セリスは少し悲しそうな顔をした。俺も酷なことを聞いたと反省した。ジョシュアと一緒に逃げたいが、また捕まってしまうだけだ。ジョシュア一人なら追ってもそれほどかからないだろうがセリスが一緒だとまたエル・ドアンが出てくるかも知れない。会ったことは無いがあの天才少年は手に負えないと思う。
「私は、私はジョシュアが助かればそれだけでいいのです。コータロー様、ジョシュアを助けてください」
切実な願いだった。多分ジョシュアの処刑は近い。裁判何て行われる訳もなく、有無を言わせずに処刑だろう。
ただジョシュアを助けるにも問題が山積している。俺の壁抜けは俺一人しか出来ない。ジョシュアを同時に壁抜けさせることが出来ないのだ。
あとジョシュア本人の問題もある。助けに行ってもセリスのために処刑を受け入れてしまうかも知れない。ジョシュアのセリスに対する思いはそれほどのものだと思えた。迷惑を掛けたくない、とか言い出すのだ。
セリスと一緒に逃げよう、と言っても追っ手にまた捕まって連れ戻されるだけだと拒否られそうだ。子供の魔法士に捕まったことがトラウマになっているかも知れない。
「俺もそのつもりで来ているから。まあジョシュア次第というところもあるんだが」
「ジョシュア次第ですか?」
「あいつが君を気遣って逃げない選択をする可能性がある、という意味だよ」
「そんな。冤罪は間違いありませんのに。私は彼が助かるのであれば、それだけでいいのです」
「君の気持は伝えるよ。もしジョシュアが一緒に逃げたいと言えばどうする?」
セリスは少し考えていたが、決意を固めたようだ。
「私は逃げません。ただジョシュアが逃げてくれないのでしたら私が説得します。ここに連れて来ていただけますか?」
それはジョシュアを逃がすにしても一目会いたい、ということなのだろう。精一杯の我が儘、というところか。
「判った。いずれにしても見つけたらここに連れて来よう」
俺は全てを判った上でそう約束した。どう結論付けるかは二人で決めればいい。
そしてもう一つ、というか最大の問題もある。ダンテ・ノルンだ。あいつが俺の存在を見逃してくれるかどうか、だ。既に城内に入ったことは把握されている可能性が高い。シンシアの部屋で時間を浪費してしまったこともあって、余計高くなった。
ダンテの考えはよく判らないが、今のところ俺には協力的と見ていい。セリスの幸せをただ願っている、というダンテだとすると見逃してくれる可能性もあるが自らの失態となってしまうのであれば別の可能性もある。
第二夫人としてではあるが近くに居るだけで満足とかダンテが考えたりすると見逃してもらえないのか。
「じゃあジョシュアを探してくるよ、待っていてくれ」
俺はそう告げるとジョシュアを探し始めた。拘束されているのなら地下だろう。当然牢屋のような所もある。俺は隠蔽魔法のまま地下へと降りて行った。
看守か衛兵のような数人をやり過ごし、いかにも牢屋という場所を見つけた。多分俺も入る予定だった場所だ。
衛生的には多分それほど悪くない。城の主人の正確だろうか、割と清潔に保たれている。
いくつかの無人の部屋を過ぎると、やっと人が居る部屋を見つけた。中に居るのは間違いなくジョシュアだ。ここにはジョシュア一人しか収監されていないらしい。一般の犯罪者ではなく城の牢屋に入れられる特殊な者は少ないのだろう。
「騒ぐなよ」
俺はジョシュアの近くで、辛うじて聞き取れる程度の小声でつぶやいた。驚いて声を出されるのが一番拙い。
「俺だ、幸太郎だ」
「コータローだと?本当か?」
ジョシュアも小声で応える。
「俺だよ、本人だ」
「声が違う。本当は誰だ?」
うむ、このやり取りには飽きてきたが説明しなければ話が進まないので仕方なく俺は事情を説明した。そして看守からは死角になる場所で姿を現す。
「本当に別人だな。でもコータローで間違いないのだな」
「間違い無い無い。俺じゃなかったらこんな所までお前を探して来るはずがないじゃないか」
「コータロー本人だったとしても、こんなところまで来ないと思うぞ」
「まあ、それはそれとしてだな。どうするんだ?」
「何がだ」
「逃げる気が有るのか、ってことだ」
「逃げない」
ジョシュアは即答した。
「何でだよ」
「セリス様に迷惑がかかる」
そう言うと思った。こいつは恋愛には純な奴なんだ。今は面倒なだけだが。
「セリスからは自分が説得するから部屋に連れてきてほしい、と言われているんだが」
「行かない」
頑なな奴だ。気絶でもさせて連れて行くかな。説得するのも面倒臭い。さてどうしたものか。
「どうかなされたのですか?お怪我をされたとか」
「いや、実は若返りの魔法というものを掛けて貰ったら若い別人になってしまったんだよ」
「若い別人ですか?」
「そう。今から姿を見せるから、大声を上げないでね」
俺はそおっと、といってもゆっくりなんて無理なので気持ちだけゆっくりと姿を現した。
「あっ」
セリスはやはり驚いたが話をきいていたので騒ぎはしなかった。
「本当に別人なのですね。でも中身はコータロー様だと」
「そういうことになる。ルスカナの屋敷で別れてから色々とあったんだよ」
俺は今までの経緯を簡単に話した。
「大変だったのですね。でも私も大変だったのです」
「判ってる。それで俺はこの城に忍び込んできたんだ。なんとかジョシュアは助け出したいんだが」
「それは本当にお願いします。彼は誘拐犯ではありません」
「それは俺が一番判っているよ。でも、君はどうするんだ?ベルドアの第二夫人は受け入れたのか?」
セリスは少し悲しそうな顔をした。俺も酷なことを聞いたと反省した。ジョシュアと一緒に逃げたいが、また捕まってしまうだけだ。ジョシュア一人なら追ってもそれほどかからないだろうがセリスが一緒だとまたエル・ドアンが出てくるかも知れない。会ったことは無いがあの天才少年は手に負えないと思う。
「私は、私はジョシュアが助かればそれだけでいいのです。コータロー様、ジョシュアを助けてください」
切実な願いだった。多分ジョシュアの処刑は近い。裁判何て行われる訳もなく、有無を言わせずに処刑だろう。
ただジョシュアを助けるにも問題が山積している。俺の壁抜けは俺一人しか出来ない。ジョシュアを同時に壁抜けさせることが出来ないのだ。
あとジョシュア本人の問題もある。助けに行ってもセリスのために処刑を受け入れてしまうかも知れない。ジョシュアのセリスに対する思いはそれほどのものだと思えた。迷惑を掛けたくない、とか言い出すのだ。
セリスと一緒に逃げよう、と言っても追っ手にまた捕まって連れ戻されるだけだと拒否られそうだ。子供の魔法士に捕まったことがトラウマになっているかも知れない。
「俺もそのつもりで来ているから。まあジョシュア次第というところもあるんだが」
「ジョシュア次第ですか?」
「あいつが君を気遣って逃げない選択をする可能性がある、という意味だよ」
「そんな。冤罪は間違いありませんのに。私は彼が助かるのであれば、それだけでいいのです」
「君の気持は伝えるよ。もしジョシュアが一緒に逃げたいと言えばどうする?」
セリスは少し考えていたが、決意を固めたようだ。
「私は逃げません。ただジョシュアが逃げてくれないのでしたら私が説得します。ここに連れて来ていただけますか?」
それはジョシュアを逃がすにしても一目会いたい、ということなのだろう。精一杯の我が儘、というところか。
「判った。いずれにしても見つけたらここに連れて来よう」
俺は全てを判った上でそう約束した。どう結論付けるかは二人で決めればいい。
そしてもう一つ、というか最大の問題もある。ダンテ・ノルンだ。あいつが俺の存在を見逃してくれるかどうか、だ。既に城内に入ったことは把握されている可能性が高い。シンシアの部屋で時間を浪費してしまったこともあって、余計高くなった。
ダンテの考えはよく判らないが、今のところ俺には協力的と見ていい。セリスの幸せをただ願っている、というダンテだとすると見逃してくれる可能性もあるが自らの失態となってしまうのであれば別の可能性もある。
第二夫人としてではあるが近くに居るだけで満足とかダンテが考えたりすると見逃してもらえないのか。
「じゃあジョシュアを探してくるよ、待っていてくれ」
俺はそう告げるとジョシュアを探し始めた。拘束されているのなら地下だろう。当然牢屋のような所もある。俺は隠蔽魔法のまま地下へと降りて行った。
看守か衛兵のような数人をやり過ごし、いかにも牢屋という場所を見つけた。多分俺も入る予定だった場所だ。
衛生的には多分それほど悪くない。城の主人の正確だろうか、割と清潔に保たれている。
いくつかの無人の部屋を過ぎると、やっと人が居る部屋を見つけた。中に居るのは間違いなくジョシュアだ。ここにはジョシュア一人しか収監されていないらしい。一般の犯罪者ではなく城の牢屋に入れられる特殊な者は少ないのだろう。
「騒ぐなよ」
俺はジョシュアの近くで、辛うじて聞き取れる程度の小声でつぶやいた。驚いて声を出されるのが一番拙い。
「俺だ、幸太郎だ」
「コータローだと?本当か?」
ジョシュアも小声で応える。
「俺だよ、本人だ」
「声が違う。本当は誰だ?」
うむ、このやり取りには飽きてきたが説明しなければ話が進まないので仕方なく俺は事情を説明した。そして看守からは死角になる場所で姿を現す。
「本当に別人だな。でもコータローで間違いないのだな」
「間違い無い無い。俺じゃなかったらこんな所までお前を探して来るはずがないじゃないか」
「コータロー本人だったとしても、こんなところまで来ないと思うぞ」
「まあ、それはそれとしてだな。どうするんだ?」
「何がだ」
「逃げる気が有るのか、ってことだ」
「逃げない」
ジョシュアは即答した。
「何でだよ」
「セリス様に迷惑がかかる」
そう言うと思った。こいつは恋愛には純な奴なんだ。今は面倒なだけだが。
「セリスからは自分が説得するから部屋に連れてきてほしい、と言われているんだが」
「行かない」
頑なな奴だ。気絶でもさせて連れて行くかな。説得するのも面倒臭い。さてどうしたものか。
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