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第4章 雌伏の章

第50話 ロングウッドの森でどうなった?

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「これで十分利用できるマナが貯まった。それでは若返りの魔法を掛けるとするかの」

「クマさん、大丈夫なんですか?」

「任せておけ。今まで二十回以上行って全て成功しておる」

「二十回以上?」

「そうじゃ。ヴァルドアとルナジェールに各々十数回づつじゃな」

 そうか、それで五百歳が十六歳や七十歳にまで若返ったのか。というか、なぜ師匠はもっと若返らずに七十歳なのだろう?

「もしかして掛ける回数や一度掛けてから次に掛ける間に制限があるとか?」

「回数制限があることは知らんな。今のところ二人とも大丈夫なので、まあ大丈夫なんじゃろ。間は念のため五十年は空けるようにしておる。支障ははなさそうじゃ」

 なんか不安は募るが、まあ死なないので大丈夫だろう。変な副作用は無いのかな?

「ではいくぞ」

「えっ、もう?」

「なんだ、駄目か?」

「いや、何歳くらいまでとか聞いてくれないんですか?」

 クマさんの都合で決められてもな。

「そんな微調整ができる筈なかろう。全ては運次第じゃ。過去の文献には失敗して逆に歳を取ってしまった例も」

「あったんですか?」

「さて、知らんな。そんな文献見たことが無いわ」

 クマさん、お茶目が過ぎないか?

「ナーザレス、そのくらいにしてあげたら?先は長いんだし」

 え、先は長いのか?

「そうだな、では早速」

 俺はクマさんたちが作った祭壇に自ら乗り込んだ。自分から進んで生贄になるみたいで、ちょっと嫌だったがしょうがない。

 板で作られた祭壇に仰向けに横たわったが、ごつごつして痛い。

「クマさん、なんか痛いです」

「贅沢言うでない。ヴァルドアもルナジェールでさえ、この状態で一日耐えたんだ」

「えっ、このまま一日ですか?」

 マジで身体が痛い。還暦手前には辛いぞ。

 それから丸一日、ずっとクマさんの詠唱を痛さに耐えながら聞いていた。身体は痛いしクマさんの詠唱は煩いが途中で俺は眠りに落ちた。どうも詠唱に催眠魔法が含まれているようだ。

 目を覚ますと詠唱が終わっていた。

「えっ、終わった?」

 自分の声に驚く。さっきまでの乾いた声とは違う。

「成功じゃな」

「本当に?若返ったのか?」

 ルナが少し笑ってこっちを見ている。なんだ、どうなった?何か変なのか?

「おいクマさん、何か失敗していないか?」

 クマさんの表情はクマなので判らないがルナは明らかに笑っている。

「ちょっと、おい、鏡か何かないのか?自分の顔を確認したい」

 するとルナがすかさず鏡を出してくれた。そこに映った俺の顔は

「おい、なんだこれ」

 そこには確かに若くは成った、そう二十歳くらいには見える俺ではない誰かの顔があった。

「若返ったのはいいが、原形が全く残ってないじゃないか。どこから見ても別人だぞ」

 若くなったのはいいが別人にまでなってしまった。これは有りなのか?

「私の時も別人になりましたよ」

「知ってたのか」

「もちろん、何回も経験してますからね」

 若返りの魔法の副作用は別人になる、ってことらしい。若返って顔も変わって別の人生を生きることになるのだ。

「他に副作用は無いんだろうな」

「私の時は一度も無かったわ。ヴァルドは一回ちょっと失敗して逆に歳を取ってしまって今あの見た目なのよ」

 失敗したことが直近であったじゃないか。

「まあ、あれだ。あの時は少し薬草に変なものが混じっていたのかも知れん」

「クマさん、今回は大丈夫だったんだな?」

「ちゃんと若返っただろう。顔は変わったり変わらなかったりするのだ。何故かは判らない。もっと検証と実証が必要だ」

 俺たちはクマさんの実験台らしい。

「使える魔法やマナの量に変化はない筈だ」

「火球!」

 俺はノーアクションで火球を打ってみた。

「おいおい、何をする」

 クマさんは余裕で防御した。

「流石だな。それに確かに魔法もマナもそのままだ」

 とりあえず若返りの魔法は成功のようだった。 








 



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